山野の花シリーズ40 コマクサ |
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コマクサは、数ある高山植物の中でも人気ナンバーワン・・・花を愛でる登山者にとって、憧れの花である。その花は、秋田駒ヶ岳の大焼砂や焼森の火山砂礫地にタカネスミレと棲み分けをしながら、少し遅れてピンクの花をつける。生育地は、全国でも20座ほどしかなく、東北では岩手山、蔵王山、秋田駒ケ岳の三座だけで生育する貴重種。見頃は7月下旬頃である。![]() |
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![]() コマクサは、足を踏み入れると崩れるような不安定な砂礫地に、長く根を伸ばし単独の大群落をつくる。「高山植物の女王」と讃えられるのは、他の植物が生育できないような過酷な環境をものともせず、崇高な気品漂う花を咲かせるゆえだと言われている。葉はパセリに似ており、白く粉を帯びる。花茎の先端に淡紅色の花を2~7個やや下向きにつける。4個の花弁は、内外各2個づつに分かれ、外弁は袋状で先は反り返る。内弁は、剣の先のように外へ突き出る。 |
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![]() コマクサは、地上の小さな花からは想像もできないほど、長くて丈夫な根が地中深くに入っている。こうすることで、乏しい水分や養分を確保し、凍結融解を繰り返すことによって砂礫が動くような過酷な場所でも生育できる。短い夏が終わり実が熟すと、花茎は枯れる。やがて強い寒風が吹き始めると、花茎は根元から折れ、風に吹かれるままに砂礫地を転がり、種子がばらまかれていく。 |
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![]() コマクサの花が長さ2cmほど咲くと、微かに甘い香りを放つ。その甘い香りと美しいピンク色が昆虫をひきつける。下向きの花の形は、花粉を食べてしまうコマクサの敵・チョウやアブがとまりにくい形だという。写真のように、マルハナバチがこの蜜を吸い始めると、ハチのお腹に雄しべと雌しべが触れ、受粉が行われる。短い高山の夏・・・コマクサ特有の戦略で、過酷な環境を生き抜いているのである。 |
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![]() 馬を総称して「駒」という。花の形が、その馬の顔「駒」に似ていることから、「駒草」と書く。 |
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![]() コマクサは、強酸性で、かつ風が強く礫の移動が激しい砂礫地に生育する。この花は、そうした砂礫地を長い年月をかけて中性化させている。砂礫地が安定すれば、他の高山植物が進出してくるだろう。また表土が中性化すれば、コマクサは消滅してしまう運命にある。コマクサのように、何も生育していない土地に最初に根づく植物は、「先駆植物」と言われている。 |
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![]() ![]() 校章考案者は、梁田謙一郎さん。「駒草は雲を吸い雲を吐く花ならむ」(伊藤東一郎作)の句に触発されてこの校章を草案したという。また、簗田一兎子さんは素晴らしい詩を寄せている 「朔風すさぶ 駒ヶ嶺の/四季折りおりの 山の気に/耐えぬき やわ根深うして/かの灼熱の 焼け砂を/永久のすみかと 定めしか/可憐な花よ 駒草よ/これぞ 生小の 精神(スピリット)」・・・(「生保内小学校百周年記念誌」の「校章に寄せて」より) 過酷な環境に生き抜く美しき花・コマクサから学び、生きる元気をもらう。そんな素晴らしい花だからこそ、数ある高山植物の中で人気ナンバーワンに君臨しているのであろう。 |
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![]() 全草が毒草で、中毒症状として、嘔吐、体温の低下、呼吸麻痺、心臓麻痺がみられる。明治時代には、薬草として盛んに採集されたため、絶滅してしまった山もあるという。右上写真の黄色い花は、タカネスミレ。 |
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![]() 昭和53年、秋田駒ヶ岳の「駒草」が記念切手(自然保護シリーズ)に採用されている。また昭和61年、「こまくさ」は、雪国にたくましく生きる象徴として田沢湖町の花に制定されている。 |
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![]() 貴重なコマクサの生育地は、厳しく保護され、登山道の両サイドに柵が設けられている。そうしないと登山者の踏み荒らしでたちまち花が姿を消してしまうからである。しかし、写真を撮るには、まことに邪魔である。花が小さいから、ズーム倍率の高い望遠レンズあるいはマクロレンズでないと絵にならない。さらに、小さな花が強風で揺れ、低速シャッターでは花そのものがブレてしまう。 そのブレ防止対策として、土谷氏は、F2.8の明るいレンズを使い、シャッタースピードを1/1000秒で撮影しているという。孤高の女王「コマクサ」を美しく撮るには、簡単なことではない。まして朝露にしっとり濡れた女王を撮るには、誰よりも朝早く山を登り、かつ何度も通わないと撮れないことが分かる。写真は、実に奥が深い。 |
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参 考 文 献 | |
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