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山野の花シリーズ53 ナツズイセン、キキョウ・・・

INDEX ナツズイセン、ワルナスビキキョウコアカソカタバミ
ナツズイセン(夏水仙、ヒガンバナ科)

 農山村の人家近くに野生化しているが、中国からの渡来と推定されている。地方によってはドクズイセンなどと呼んで忌み嫌われているが、淡紅紫色の花が美しいので農家の庭などに植えられている。太い花茎を60cmほど伸ばし、ユリのような花を咲かせる。1本の花茎に数個の花をつける。ラッパのような形で開花し、花びらはそり返る。花期には葉がなく、花と茎だけのすっきりした姿が美しい。アルカロイドを多量に含む有毒植物で、薬用に使われる。
花 期 8~9月
名前の由来・・・葉と球根とがスイセンに似て、夏に淡紅紫色の花が咲くので、「夏水仙」と書く。
花言葉 快楽
 薬 草

 鱗茎をすりつぶして患部に塗布する。効用は、小児マヒ、腫物、乳房の腫れ。有毒植物なので使用には十分注意。家庭では外用に限るべきと言われている。
ワルナスビ
ワルナスビ(悪茄子、ナス科)

 昭和初期に牧草の種子に混じって入ってきた北アメリカ原産の帰化植物。地中に白色の地下茎を伸ばして繁殖するので、根絶は困難。葉にも茎にも鋭いトゲがあり、刺さるとかなり痛いので近寄りたくない植物の一つ。花の色は、白と紫がある。花弁は星形になって広がり、黄色いヤクがバナナみたいに太る。実は熟すると黄色になり、毒があるので食べられない。
花 期 6~10月 草丈30~50cm
名前の由来

 繁殖力が強く、トゲがあって始末に困る害草で、花がナスに似ていることから、「悪茄子」と書く。嫌われものの外来植物の中でも最悪と言われ、海外では「悪魔のトマト」と呼ばれている。
花言葉 悪戯
キキョウ
キキョウ(桔梗、キキョウ科)

 秋の七草のひとつ。俳句でも秋の季語だが、花の最盛期は夏である。山地のススキ草原に生え、高さは50cmほどになる。よく農家の庭などで栽培されているが、自然には稀にしか見られなくなった。花の色は濃い青紫で、先が5つに裂けた鐘形。柱頭も5裂する。

 生薬名は、「桔梗根」と呼び、水洗いして天日乾燥したものを煎じて服用する。効用は、去痰、咳止め、気管支炎、扁桃腺炎、排膿、ぜんそく、にきび、おでき。
花 期 7~8月
名前の由来

 日本古来の和名は、「アサガオ」であったが、その後、漢名の「桔梗(キチコウ)」が急速に広がり、「キッキョウ」、「キキョウ」と変化した。方言では、ヨメドリバナ、ボンバナ、ホドゲバナと呼ばれている。
花言葉 変わらぬ愛、誠実、熱心

俳 句

かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ 久保田万太郎
桔梗や水のごとくに雲流れ 岸 風三樓
コアカソ
コアカソ(小赤麻、イラクサ科)

 山地の湿り気のある場所に生え、茎や葉柄が赤い。茎の下部は木質化して白っぽくなる半低木。よく枝分かれして高さが1~2mになる。葉は菱形状卵形で先は尾状にとがる。雌花穂は赤く垂れさがる。よく似ている植物にアカソがあるが、山地に生えることが多く、葉が大きく先端が3裂するので区別できる。
花 期 8~10月
 
名前の由来・・・茎や葉柄が赤く、葉が小形であることから、「小赤麻(こあかそ)」と書く。
カタバミ
カタバミ(傍食、カタバミ科)

 花期は、春から秋までと長く咲き続け、暖地では一年中花が見られる。花は黄色一色。道端や庭、田畑、海岸など、至る所に生える。繁殖力が旺盛なのでしばしば厄介な雑草とされている。葉はハート形で、夜は葉を真ん中からたたんで眠る。葉や茎にはシュウ酸を含み、噛むと酸味がある。
花 期 5~9月
名前の由来

 日が陰ったり、夜になるとカタバミの葉が折り畳んだようになる。片側が食まれたようになることから、「傍食(かたばみ)」という名前がついた。
花言葉 喜び、輝く心、母のやさしさ 
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
「野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「秋田薬草図鑑」(畠山陽一、無明舎出版)
「俳句歳時記」(角川学芸出版、角川ソフィア文庫)