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山野の花シリーズ56 コスモス、ツユクサ・・・

INDEX コスモス、ツユクサヌスビトハギイヌタデオオケダテ
コスモス(キク科)

 メキシコの標高1600m以上の地域に自生し、日本には、明治の初めに渡来した。今では、季語になるほど日本の秋にとけこんだ花の一つ。大きく美しい花に似合わず、細かく切れ込んだ葉と細長い茎は、か弱く見える。しかし、茎は意外に丈夫で簡単には折れない。風に倒れても地面についた茎から根が伸び始めるほど粘り強さがある。こぼれた種からもよく芽を出す。
花 期 6月~11月
名前の由来

 美しく調和のとれた花の形から、ギリシャ語で「宇宙、秩序」を表す言葉、コスモスと名付けられた。日本では、この花をサクラに見立てて、「秋桜(アキザクラ)」という和名がある。
 コスモスの花は、ピンクや白に加えて濃赤、黄やオレンジ色、複色、八重咲きなど、年々カラフルになっている。
▲遊休農地対策展示圃のコスモス(潟上市) ▲秋田市草生津川のコスモスロード

 日当たりと水はけが良ければ、やせた土地でもよく育つ。景観植物としてよく利用され、河川や休耕田、スキー場、観光スポットなどに植えられる。秋田では、南由利原や秋田市の草生津川(開花時期:9月上旬~10月下旬)などで、毎年「コスモスまつり」が開催されている。
花言葉 調和、美麗、愛情
俳 句

コスモスの押しよせてゐる厨口(くりやぐち) 清崎敏郎
ひとりでに家壊れつつあきざくら 坂戸淳夫
汲置の水に青空秋ざくら 佐藤和枝
ツユクサ
ツユクサ(露草、ツユクサ科)

 花は午前中に開く半日花で、花弁は3枚、うち2枚は大きく透き通るような紺碧の空色をしている。田畑や道端など人家周辺の至る所に生える。早いものは6月頃から花を咲かせる。他家受粉だけでなく、自家受粉も行う。茎の下部は地面を這い、節からも根を出し分身をつくりながら大きな群落をつくる。上部は立ち上がり、高さ50cmほどになる。全草に艶があり葉は互生する。 
花 期 6~9月
名前の由来

 夜明けとともに、早朝、露を帯びて咲くことから、「露草」と書く。また、朝開いて午後にはしぼむため、そのはかなさから名付けられたとも言われている。
染物の原料・・・花びらに含まれる成分のフラボコンメリニンは青色色素の素で、昔から染物の原料として使われた。  
ツユクサ料理・・・料理は若葉を摘む。クセがなく食べやすい。味噌汁、おひたし、ごま和えなど。
薬 草

 生の茎葉は、下痢止め、むくみなどに。虫刺され、腫れ物には、生の茎葉を良くもんだ絞り汁を塗布。眼病には、ツユクサの花の絞り汁で目を洗浄する。開花期に全草を採取して、水洗いして天日で乾燥させる。鴨跖草(おうせきそう)は、解熱、利尿、解毒、風邪、熱性下痢、水腫、心臓病などに用いる。
万葉集や枕草子にもツキクサ(月草)の名で詠まれている。

「朝露に咲きすさびたる月草の日くたつなへに消ぬべく思ほゆ」
「朝咲き夕は消ぬる月草の消ぬべき恋も我れはするかも」
俳 句

露草の露ひかりいづまことかな 石田波郷
人影にさへ露草は露こぼし 古賀まり子
花言葉 尊敬、変わらぬ思い
ヌスビトハギ
ヌスビトハギ(盗人萩、マメ科)

 山野の日当たりの良い林縁や草やぶなどに生える。高さは90cmほどで、葉の脇から花序を出し、淡い紅色の蝶形の花をまばらにつける。花の長さは4mmほどと小さい。葉は3小葉でやや厚く、細かな毛が多いのが特徴。より日陰に生えるヤブハギとの間に様々な雑種があり、判別が難しい個体もあるという。奇妙な名前は、花ではなく実の形からきている。
花 期 7~9月
名前の由来

 果実の形が盗人の忍び足の足跡に似ていることから、「盗人萩」と書く。また、熟した実が知らぬ間に衣服に付着してくるので、この名がついたとする説もある。
半月形で二つにくびれた豆のような果実の形を見れば、マメ科植物であることが分かる。
花言葉 略奪愛
イヌタデ
イヌタデ(犬蓼、タデ科)

 道端や野原に群生することが多い。高さは20~30cm。花穂の長さは1~5cmで枝先につく。開花すると淡いピンク色に見える。晩秋に群生した満開の花に出会うと、花の色が濃いだけに目立つ。花びらのように見える部分はガクで、花の後も鮮やかな色を残したまま果実を包む。葉は広披針形で両端がとがり、表面の縁の近くや裏面の脈上に毛がある。
花 期 6~10月
名前の由来

 ピリッとした辛みがあり、和食の薬味に使うヤナギタデに比べ、風味が劣るので、「犬蓼(イヌダテ)」と呼ばれている。また、穂状に咲く細かな花を赤飯に見立てて「アカマンマ」とも呼ばれている。秋の季語にもなっている。  
花言葉 あなたのお役に立ちたい
オオケダテ
オオケダテ(大毛蓼、タデ科)

 アジア原産で、江戸時代から観賞用として栽培されていた。現在は、各地の道端や荒地、河原に野生化している。高さは1~2mにもなり、茎が太く、全体に毛が多い。葉は卵形で先はとがり、基部は心形となり、長い柄がある。花穂は、淡い紅色で長さ5~12cm、先が垂れ下がる。マムシの解毒剤や毒虫、化膿性の腫れ物などの、民間薬として利用された。
花 期 7~10月
名前の由来

 草姿が大きく、茎が太く、全体的に毛が多いタデから、「大毛蓼」と書く。
花言葉 申し分のない愛らしさ
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
「野草の名前 夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「夏の野草」「秋の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
「花ごよみ花だより」(八坂書房)
「俳句歳時記」(角川学芸出版、角川ソフィア文庫)