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山野の花シリーズ61 ススキ、ヒガンバナ・・・

INDEX ススキ、フユノハナワラビアメリカセンダカグサチカラシバヒガンバナ
ススキ(芒、イネ科)

 秋の七草の一つで、オバナの名で親しまれている。ススキの細い穂が一斉に伸びてくると、もう秋・・・中秋の名月には、供え物に添えてススキを活ける。詩歌や絵画、工芸品などに多くとりあげられている。日当たりの良い山野に生え、大きな株をつくり群生する。葉は線形で縁が鋭く、手が切れることもある。穂がでると、すぐに花が咲く。穂の先端には折れ曲がったノギがある。
花 期 8~10月 草丈1m~2m
名前の由来

 すくすくと良く育つので「スクキ」が「ススキ」になったと言われている。漢字は「薄」だが、漢名は「芒」。万葉集の秋の七草に歌われている「尾花」は、ススキの別名で、穂の姿が狐の尻尾に似ていることから名付けられた。
ススキと茅葺き屋根

 「ススキ」を「カヤ(茅)」とも呼び、これで葺いた屋根を茅葺きという。県内で茅葺き民家が最も多く残っている羽後町では、今でも職人による茅葺きの修理や材料になるススキを刈る作業が行われている。軒下には、材料となるススキが束になって立て掛けている光景を見ることができる。
ススキと民俗

 昔は、たくさん刈り取って屋根を葺いただけでなく、雪囲い用のスダレや炭俵、家畜用の飼料などにも利用された。また、茎で御幣をはさんだり、お札をはさんだりして田にたてた。12月24日には、小豆飯を炊き、三尺もある茅の長短の箸を供えた。この箸を田植えや草取りの時に腰にさすと、腰が痛まないといわれた。名月には、ゆで栗や団子、お神酒を供える時、ススキを切り取って飾る風習がある。

 花穂を切り取り、たくさん束ねて、ススキ人形や木兎などを作った。雄花の赤い年は、赤痢がはやるといった俗信もあった。子どもたちは、茎に葉をつけたまま切り取って矢の長さにして、空高く投げ合ったり、枯れたススキの先を三角形に折り曲げ、それに蜘蛛の巣を張り付け、セミやトンボ取りに使ったりして遊んだ。
花言葉 勢力、活力
俳 句

まん中を刈りてさみしき芒かな 永田耕衣
穂芒のうしろ姿でありにけり 河内静魚
花芒遠くがひかりみないそがし 巽 巨詠子   
フユノハナワラビ
フユノハナワラビ(冬の花蕨、ハナヤスリ科)

 夏の終わり頃に小さな葉を広げるシダ植物。秋から冬の間、十分な光合成をおこなうためには、草があまり生育していないか、刈り取られる場所であることが必要。だから主な生育地は人里で、ため池の堤防など時折刈り取られるものの、人があまり踏みつけないような場所に生える。

花 期 9~11月
名前の由来

 冬に葉を出し、花のような胞子葉をつけるワラビに似たシダの意味で、「冬の花蕨」と書く。
アメリカセンダカグサ
アメリカセンダカグサ(亜米利加栴檀草、キク科)

 北アメリカ原産の帰化植物。水田の土手や側溝周辺など、やや湿り気のある場所に生える。高さは1mほどになり、細かく枝を分ける。花は、中心にある黄色の筒状花だが、稀に花びら状の舌状花があることも。花の周りを囲むようにつく葉のような総苞片があるのが、この花の特徴。種子には、2個の刺があり、人の衣服や動物に刺さって分布を広げる。
花 期 9~10月
名前の由来

 北アメリカ(亜米利加)原産で、葉の形がセンダン(栴檀)に似ていることから、「亜米利加栴檀草」と書く。センダンとは、実が沢山ついた様子の千団子(せんだんご)から来たという説などがある。漢字の「栴檀」の由来は、実にややこしい。香木のビャクダン(現代中国名は檀香)の異名で、原産地のインドではチャンダナ、中国に渡ってチャンタンとなり、「栴檀」の文字があてられた。日本では、この香木の名を誤用して、栴檀の文字が当てられた。
チカラシバ
チカラシバ(力芝、イネ科)

 道端などに列をなして生える。20cmほどのブラシのような穂を出す。踏みつけに対する抵抗力は強く、車の轍の跡が残るような固い土でも平気で生育する。大きな株になることも多く、高さは60cmほどになる。
花 期 8~11月
名前の由来

 地面にしっかりと根を張り、力を入れても容易に引き抜けない芝のような植物であることから、「力芝」と書く。
花言葉 信念
ヒガンバナ
ヒガンバナ(彼岸花、ヒガンバナ科)

 真赤に咲く花は、妖艶な造形美が美しく、「曼珠沙華」など1000以上の別名や方言名がある。葉は、花のある頃にはなく、花が終わる頃から伸び出して冬に青々と茂る。田の畦や林のへり、土手などに群生する。日本全土に見られるが、北国には少ない。地下の大きな鱗茎は、リコリンを含み有毒だが、飢饉の時に長時間水にさらして食用とした記録が残っているという。日本のものは、結実しない3倍体。
花 期 9~10月
名前の由来

 秋の彼岸の頃に咲くことから、彼岸花と書く。俳句では、ヒガンバナが墓地にも多いことから暗いイメージの様々な別名を持つ・・・曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、幽霊花、死人(しびと)花、天蓋(てんがい)花、捨子(すてご)花、狐花、地獄花など。
花言葉・・・情熱/思うのはあなた一人/独立/再開/あきらめ/悲しい思い出など
 もともと中国原産の球根植物。中国産のヒガンバナには2倍体のものもあるので種子を形成するが、日本産は3倍体のみでほとんど種子を形成しない。だから繁殖は鱗茎を増殖するしかないという。日本では墓地に植えてあることも多く、庭に植えることを忌み嫌う人もいる。しかし、最近では様々な品種が販売され、庭や鉢植えを楽しむ人が多くなっているらしい。
俳 句

葉もなしに何をあわてゝ曼珠沙花 正岡子規
つきぬけて天上の紺曼珠沙華 山口誓子
曼珠沙華竹林に燃え移りをり 野見山朱鳥
このあたり同姓多し狐花 阿川燕城
むらがりていよいよ寂しひがんばな 日野草城
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
「野草の名前 夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「夏の野草」「秋の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
「俳句歳時記」(角川学芸出版、角川ソフィア文庫)
「別冊NHK俳句 季語100」(NHK出版)
「続゛読む゛植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「秋の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
「秋田農村歳時記」(ぬめひろし外、秋田文化出版社)