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山野の花シリーズ64 オニユリ、ヒメサユリ

  • オニユリ(鬼百合、ユリ科)
     古い時代、球根を食用にするために中国から渡来したものが各地で野生化したと言われている。在来種のコオニユリに比べて大形で、葉腋につくムカゴで繁殖する点で区別できる。丘陵地から山地にかけて自生するが、庭に栽培されることも多い。花の直径は10cmほどで、一つの花茎に20個ほどの花がつく。北海道から九州に分布。 
  • 名前の由来・・・山野に自生するコオニユリに比べて大きいので、「鬼百合」という説や、橙赤色の花に黒い斑点がある花を赤鬼の顔に見立てた説、粗大な百合の意味説など諸説ある。 
  • 花期・・・7~8月 
  • 草丈・・・1~2m 
  • 特徴・・・葉の付け根にムカゴがつくのが特徴。花が終わるころに落下して繁殖する。 
  • ・・・柄がなく、先の尖った披針形で互生する。 
  • ・・・茎の上部に漏斗状の花が3~20個下向きにつき、花色は橙赤色で紫褐色の斑点がある。中ほどが強く反り返る。
  • 花とチョウ・・・オニユリは、花びらを反り返し、雄しべと雌しべを突き出し、やってきたチョウに暗赤紫色の花粉をつけるが、なぜか種子はできない。オニユリは、あくまでムカゴだけで繁殖する戦略らしい。
  • 飢饉の非常食料・・・昔、中国へ留学した僧の中で、飢饉に備える糧としてオニユリの球根やムカゴを日本に持ち帰った。ムカゴから2~3年で食用球根へと育てることができるので、農村で歓迎され、凶作時の非常食料として全国に広がったと言われている。 
  • 食用・・・オニユリ、コオニユリ共に、秋に地上部が枯れたら球根(鱗茎)を掘り取り食用にする。球根を1枚ずつ剥がして洗い、天ぷらやかき揚げなどにする。甘煮の場合は、洗った後、塩を一つまみ入れた熱湯で茹でて水にさらし、苦みを抜く。茶わん蒸しの具やきんとん、煮物、甘酢漬けなどにもできる。
  • ヒメサユリ(姫小百合、ユリ科)
     山形、福島、新潟の三県だけに分布する日本特産種。初夏に咲く花は、淡い紅色で美しく、香りも良い。5月頃から咲き始めるものもあり、野生のユリの中では最も早く咲く。山地のススキ草原から高山の雪崩草原まで垂直分布の幅は広いが、個体数は少ない。ササユリに似ているが、葉の幅は倍以上あり、花の形も本種の方が可憐で美しい。(写真:ヒメサユリ群生地・福島県南会津町高清水自然公園) 
  • 名前の由来・・・よく似た花のササユリに比べて、小さいので、「姫小百合」と書く。とは言うものの、淡いピンク色の花色と美しい花姿から、「姫」を連想するのは、ごく自然なことだと思う。 
  • 別名オトメユリ・・・可憐で美しい花の姿から、別名オトメユリとも呼ばれている。 
  • 花期・・・5~8月 
  • 草丈・・・30~40cm 
  • よく似たササユリとの相違点・・・草丈が低く、葉が短くて幅が広く、花が少ないという点で区別できる。
  • ・・・広披針形で、両端は急に狭くなり、短い柄がある。 
  • ・・・初夏、1~3個の漏斗状鐘形の花を横向きに咲かせる。淡い紅色の花は、可憐で美しく、香りも良い。
  • 花の先端は、わずかに反り返る。雄しべは6個で、花被よりもずっと短いので、横からでは見えない。花粉は黄色。 
参 考 文 献
  • 「食草・薬草・毒草が分かる野草図鑑」(金田洋一郎、朝日新聞出版)
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「夏の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
  • 「山渓名前図鑑 野草の名前/夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)