山野の花シリーズ95 オオウバユリ、ヤブカラシ
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- オオウバユリ(大姥百合、ユリ科)
本州中部付近を境に、西にはウバユリが生え、北にはウバユリよりも大型のオオウバユリが生える。両種には、個体サイズ以外に形態的な差異が認められないという。本種は、高さが1.5m以上で、茎も太く、花つきも密である。花は、平均15個前後つくが、北海道ではその倍以上の32個もつくものもあるという。花色は地味だが、良い香りがする。花を咲かせて一生を終える一回繁殖型植物だが、株元に次の世代の小さな苗が育っている。
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- 名前の由来・・・大型のウバユリの意味で、「大姥百合」と書く。ウバユリは、花盛りの頃には葉が枯れてなくなることから、葉のないのを「歯のない姥」に例えて、「姥百合」と書く。
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- 葉・・・大きなハート形で、葉脈が網目状に走るのは、ユリ科の中で例外的。
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- 若葉・・・若いうちは根生葉だけで花は咲かない。鱗茎が大きくなると、花茎を伸ばし開花する。
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- 花・・・緑白色のスピーカーのような花を四方八方に向けて咲かせる。
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- 蒴果・・・花の後、楕円形の蒴果がたくさんでき、熟すと上部が裂けて種子が飛び出す。一生に一度開花し、実をつけると死んでしまう一回繁殖型植物である。
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- 鱗茎は食用・・・春、新芽が育った頃、あるいは花が咲く前の秋頃に充実した球根を掘り取る。鱗茎は天ぷら、フライ、煮物など。アイヌの人々は、鱗茎を採集してデンプンを採取し、代表的な保存食として蓄えていた。冬になると、保存したデンプンを削って水に戻し、鍋で煮たり、おかゆに混ぜて食べていた。
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- ヤブカラシ(藪枯、ブドウ科)
人の住む場所ならどこにでも生え、地下で伸びる根も地上のツルも凄い勢いで繁茂する。あちこちから四角い茎の赤褐色の新芽が伸び、艶のある5つの小葉と対になって巻きひげを伸ばし、相手に絡みつく。花は小さくテーブル状に多数つき、朝開いて午前中には花弁と雄しべが落下し、赤色の花盤が残る。ここには蜜がたまっているので、多種多様な昆虫が集まってくる。昆虫を観察するには、見逃してはならない植物の代表である。
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- 名前の由来・・・藪を覆い尽くし、枯らしてしまうほどはびこることから、「藪枯」と書く。また、ツルで覆い隠して貧乏くさい雰囲気を醸し出すことから、別名ビンボウカズラとも呼ばれている。
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- 花・・・花弁は4個で緑色。朝に開花して、午前中に花弁と雄しべが落ち、雌しべを囲む黄赤色の花盤がよく目立つ。
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- 花のアップ・・・橙色の花盤には蜜がたっぷり。緑色の花びらは4枚だが、早々と脱落してしまう。
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- ヤブカラシと昆虫・・・よほど多くの蜜を出すのか、覆い尽くすヤブカラシの花には、大型のチョウから恐ろしいスズメバチ、コガネムシ、アリなど多種多様な昆虫たちが群がる。
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- 若い茎は食用・・・葉や巻きひげは取り去り、茎だけ使う。茹で汁が茶色になるまで十分に茹で、一晩水にさらしてアクを抜く。酢の物によく合い、ワサビ醤油と和えたり、大根おろしと一緒に食べたりする。
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参 考 文 献 |
- 「食草・薬草・毒草が分かる野草図鑑」(金田洋一郎、朝日新聞出版)
- 「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
- 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
- 「夏の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
- 「山渓名前図鑑 野草の名前/夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
- 「身近な野の花のふしぎ」(森昭彦、サイエンス・アイ新書)
- 「うまい雑草、ヤバイ野草」(森昭彦、サイエンス・アイ新書)
- 「山菜ガイド」(今井國勝・万岐子、永岡書店)
- 「江戸草花図鑑」(岩槻秀明、エクスナレッジ)
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