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森の学校2022 秋田駒ヶ岳トレッキング

 2022年6月14日(火)、森の学校「秋田駒ヶ岳トレッキング 春の息吹を感じよう」が花の百名山・秋田駒ヶ岳で開催された。参加者は39名。今冬は大雪で、例年より雪解けのスピードが遅く、残雪が圧倒的に多かった。それだけ春一番に咲き誇る高山植物は、全体的に開花初期といった感じであったが、残雪に眩しいほどの新緑と草花が映え、一層輝いて見えた。さらに、一日快晴に恵まれ、眼下の田沢湖や乳頭山、遠くに鳥海山や森吉山、岩木山、八幡平、和賀山塊の山々まで雄大なパノラマを満喫した。
  • 主催/秋田県森の案内人協議会
  • 協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会 
  • 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • 秋田駒ヶ岳マップ・・・「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(編集/南八幡平地区パーク・ボランティア ホシガラスの会)より抜粋
  • コース・・・秋田駒ケ岳八合目(1,310m)片倉岳展望台(1,456m)阿弥陀池(1,530m)横岳(1,583m)焼森(1,551m)シャクナゲコース秋田駒ケ岳八合目(1,310m)   
  • 雲一つない青空に残雪と萌黄色の新緑が映える新道コースをゆく
  • 見晴らしの良い地点にくると、歓声があがるほど遠くの山々まではっきり見えた。
  • ミネザクラ(タカネザクラ) ・・・サクラの仲間では最も標高の高い所に生える。今年は雪解けが遅い分、ミネザクラの花は満開。高山にも春爛漫の季節がやってきたことを告げる花木の代表種。
  • ムラサキヤシオツツジ・・・一般に低山の沢沿いやブナ帯に咲くものよりも色が濃く、新緑によく映えて鮮やかな印象を与える。
  • オオカメノキ(ムシカリ)・・・純白の花が新緑に映え、良く目立つ。
  • ニワトコ・・・古くから若葉は山菜、葉や枝、花を薬用に利用されてきた。だから、庭に常に植えられていたことから、「庭常」と呼ばれるようになったとの説がある。
  • コヨウラクツツジ・・・ツツジ科の中では最も花が地味で、小さな赤いリンゴの形をした壺状の花を下向きにつける。一見、果実のように見える。
  • ナナカマド
  • ベニバナイチゴ・・・イチゴ類にはトゲがあるのが一般的だが、本種にはトゲがないのが特徴。
  • サンカヨウ・・・カニコウモリのような大小二枚の葉と清楚な白花を数個つける。朝露や雨に濡れると、花は徐々に半透明になり美しい。小さい範囲で群生し、うす暗い森では目立つ。
  • 今冬の雪の多さを象徴する大雪渓・・・一度足を滑らせると、一直線に谷底まで落ちるので極めて危険。油断や気の緩みが命取りになりかねない。一歩一歩足元を確認しながら慎重に進む。
  • 雪解けと同時に咲くバッケショウジョウバカマ
  • イワテハタザオ/オオバキスミレ/ミツバオウレン
  • ハクサンシャクナゲの新芽/マルバシモツケ
  • 展望の良い片倉展望台(赤土の広場)・・・八合目駐車場と阿弥陀池のほぼ中間地点で、ブルーに輝く田沢湖の展望が素晴らしい。
  • 眼下にブルーに輝く田沢湖を見ながら、お花畑が広がる阿弥陀池をめざす。 
  • クマ出没注意・・・ツキノワグマが大好物なタケノコやニョウサク(エゾニュウ)などが群生しているので、クマの目撃も少なくない。登山に際して、クマよけ鈴は必携である。
  • 参考:動画「秋田駒ヶ岳に現れたクマ」・・・2020年7月30日、秋田駒ヶ岳の新道コースで撮影(撮影者:森の案内人小木田隆雄氏)
  • ハイマツの松ぼっくり・・・2年型で、翌年の8~9月、ほぼ横向きになって緑褐色に熟す。この種子散布の主役は、ホシガラス。
  • 岩場に咲くイワウメ・・・まだ開花初期だが、美しい。草ではなく常緑小低木。和名は、岩場に生えて梅の花に似た花をつけることから。
  • ミネカエデとナンゴクミネカエデの見分け方・・・ミネカエデ(上左)の葉の先は、ナンゴクミネカエデ(上右)のように尾状に長く伸びない。ナンゴクミネカエデの雄花は、花弁とガク片の幅が広く、隙間がないのに対して、ミネカエデは細く隙間がある。ミネカエデは黄色に黄葉するが、ナンゴクミネカエデは紅色に紅葉する。
  • コメバツガザクラ・・・葉が針葉樹のツガに、花が白から紅白色でサクラの花色に似ていて、小さな葉を米粒に見立てて、コメバツガザクラと呼ばれている。
  • キバナノコマノツメ・・・和名のコマノツメは、葉の形が子馬の足のヒヅメに似ていることから。焼森や大焼砂の砂礫地に生えているタカネスミレに似ている。見分け方は、本種は葉が薄く光沢がないが、タカネスミレは葉が厚く光沢があり、さらに葉表が強く巻き込みロート状になるものが多いので区別できる。
  • ミヤマハンノキ・・・垂れ下がっているのが雄花。
  • コケモモ・・・ 常緑の小低木。花はツボミだが、赤みを帯びた白色。果実は真っ赤に熟す。
  • アカミノイヌツゲ・・・黒紫色の実をつけるイヌツゲに対して、実が赤いことが名前の由来。
  • コバイケイソウ・・・花は毎年咲かず、3~4年に1回程度しか咲かない。豊作の年に当たると、圧倒するほど見事である。
  • 「花」より「展望の良さ」に釘付けになるほど、素晴らしい展望に恵まれた。遠くに見える平らな山は八幡平
  • 森吉山(1454m)/白神山地の山並みの奥に聳える岩木山(1625m) 
  • 乳頭山(1478m)/鳥海山(2236m)・・・残雪に覆われた鳥海山が、これほどはっきり見えるのは珍しい。
  • お花畑(阿弥陀池)・・・阿弥陀池の手前・開けた草原から木道となる。一帯は、通称「お花畑」と呼ばれている。その名のとおり、秋田駒ヶ岳に自生する高山植物の8割がここで見られ、一番の見どころと言われている。「阿弥陀池」とは、極楽浄土の池のことだが、多種多様な花々が満開に咲き誇ると、まさに極楽浄土に迷い込んだような錯覚に陥る。
  • ミネズオウ(常緑小低木)・・・茎は細く地を這い、マット状に地面を覆い、枝先に赤みを帯びた白色の花を咲かせる。
  • ヒナザクラ・・・多雪地帯を代表する高山植物で、雪が解けた所から順に花を咲かせ、高山に遅い春の訪れを告げる。その雪解け後の草地を白く染め上げる大きな群落は、見惚れるほど美しい。
  • ミヤマキンバイ・・・花は鮮やかな黄金色で、大きな群落をつくる。 
  • 開花初期のチングルマ・・・チングルマは、晴れると白い花びらを目一杯広げ、太陽を追いかけるようにぐる~りと回転する。そのおわん型の花びらは、こうして光を集め、花の中を温める。その温もりを求めて、多くの昆虫たちが集まってくる。
  • 澄み切った青空と大雪渓、ミヤマキンバイの大群落を借景に昼食 
  • 岩手山(2038m)
  • 雪渓が残る男女岳(なめだけ、1,637m)を望む・・・駒ケ岳という名の山頂はなく、最も標高の高い男女岳、荒々しい山容が麓の人々に信仰を集めた男岳、今も火山活動を続ける女岳などからなる山全体をまとめて秋田駒ケ岳と呼んでいる。 
  • 横岳分岐から、活火山・女岳と雪渓が残るムーミン谷を望む。 
  • 女岳とその奥に田沢湖を望む 
  • 秋田駒ヶ岳が花の名峰として名高い理由・・・多くの旧火口やカルデラ、外輪山などの変化のある火山地形であること。そして多量の降雪により多くの残雪が遅くまで残っているので、乾生、湿生の両植物が共に豊富に繁殖できる自然環境が整っていること。乾生植物の代表は、コマクサとタカネスミレ、湿生(雪田)植物の代表はチングルマとヒナザクラである。 
  • 横岳(1,583m)に向かう。 
  • 奥からミヤマダイコンソウ、ミヤマキンバイ、チングルマの混生 
  • 焼森山頂(1,550m)に向かう・・・6月中下旬頃、黄色の花・タカネスミレが斜面一杯に咲き誇る。その後、少し遅れてコマクサがピンクの花をつける。 
  • 満開のタカネスミレ群落 
  • タカネスミレ・・・コマクサが咲く前に、火山砂礫地を一面黄色に染めるタカネスミレ。葉の表側が内側に強く巻き込み、ロート状になっているので、葉の形でキバナノコマノツメと区別できる。 
  • 焼森からシャクナゲコースを下る。
  • イワカガミ・・・全体が小型で花数も少ないものをコイワカガミとして区別する場合もあるが、明確に区別するのは困難。他に葉に角ばった大きい鋸歯があり、白色の花の数が少ないヒメイワカガミが見られる。
  • 人気のシラネアオイ・・・雪渓や雪田の傍らに生え、日本が世界に誇れる日本特産種。 
  • ミヤマスミレ・・・低木林の陰に隠れるように咲く。
  • 大雪渓をのぼる。
  • コミヤマカタバミ/マイヅルソウ
  • 春の息吹・・・新緑、白のミネザクラ、赤系統のムラサキヤシオツツジ
  • 萌黄色の新緑・・・これぞ「春の息吹を感じる」一コマである。

参考:秋田駒ケ岳で見られる花

  • 6月・・・ヒメイチゲ、シラネアオイ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンバイ、タカネザクラ、キバナノコマノツメ、ミツバオウレン、イワウメ、タカネスミレ、イワカガミ、ミネズオウ、ムラサキヤシオ、ヒナザクラ、ツバメオモト、ハクサンチドリ、コマクサ、チングルマ
  • 7月・・・コミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、コマクサ、ミヤマダイコンソウ、チングルマ、ミヤマキンバイ、マルバシモツケ、ハクサンフウロ、キバナノコマノツメ、タカネスミレ、イワカガミ、ミネズオウ、アオノツガザクラ、ウラジロヨウラク、ハクサンシャクナゲ、エゾツツジ、コケモモ、ヒナザクラ、イワイチョウ、エゾシオガマ、イワブクロ、ムシトリスミレ、ウサギギク、ミヤマウスユキソウ、トウゲブキ、ニッコウキスゲ、コバイケイソウ、ハクサンチドリ、オノエラン、ベニバナイチゴ、ヨツバシオガマ
  • 8月・・・オヤマソバ、オクトリカブト、コミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、コマクサ、ウメバチソウ、ハクサンフウロ、アオノツガザクラ、ミヤマリンドウ、エソオヤマリンドウハクサンシャジン、イワブクロ、ウサギギク、ウゴアザミ、ミヤマウスユキソウ、トウゲブキ、ニッコウキスゲ、オノエラン
  • 9月・・・ミヤマリンドウ、エゾオヤマリンドウ、ハクサンシャジン (「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」より抜粋)
参 考 文 献
  • 「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(編集/南八幡平地区パーク・ボランティア ホシガラスの会)
  • 「フラワートレッキング 秋田駒ヶ岳」(日野東・葛西英明、無明舎出版)
  • 「写真集 秋田駒ケ岳花紀行」(無明舎出版)
  • 「秋田県の山」(佐々木民秀、山と渓谷社)