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森の学校2022 森と木の生活塾

 2022年7月30日(土)、「森の学校2022 森と木の生活塾」が、秋田県森林学習交流館プラザクリプトンを会場に開催された。一般参加者、森の案内人等69名が参加。森のクラフト、木工体験、森の散策、森のどうぶつ、昆虫観察、森の恵み実演、ネイチャーゲーム、モルックゲーム体験、森の紙芝居、アウトドア用品展示、林業機械展示デモなど多彩な催しが行われた。今回は、クリプトンの森で採集された昆虫についても詳述する。
  • 共催/秋田県森の案内人協議会、森林インストラクター会、秋田県森林学習交流館プラザクリプトン
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会、(公社)秋田県緑化推進委員会
  • 新型コロナウイルス感染症対策・・・マスク着用、手指消毒、体温・健康・個別情報を把握した後、受付、入場。  
  • 第1話:紙芝居「森はみんなのたからもの」・・・小学生の主人公が森の妖精エココと出会い、森林整備から木材利用の大切さ、山と海の関係などを楽しく学ぶことができるストーリー。 
  • 第2話:もりのレストラン・・・樹液に集まる昆虫のお話。
  • 第3話:からすのくろいほし・・・この絵本は、アイヌ伝承に基づく作品で、主人公のカラスはハシボソガラス。アイヌ語で「カララク」、「カララクカムイ」という。カララクは鳴き声、カムイは神を表す。カララクは、道に迷った人間に進む方向を教えたり、鳴き声で「何かある」ことを知らせてくれたという言い伝えがたくさんある。このお話は、「カラスが黒くなったわけ」を話の中心に、日食とかかわる言い伝えを元に展開する。 
  • 森の恵み・・・ナワシロイチゴ(草イチゴ)、マタタビ、クルミ、クロモジ、ブナの実
  • 松ぼっくりと紙コップでつくった手作りけん玉
  • 色々な木の実が入ったペットボトル。それを両手に持って振ると、思わず踊りたくなるような音を奏でる。その音の違いを観察。
  • 木工体験・・・各種木工体験、竹とんぼ、マイペンダントづくり
  • ウイスキーとミズナラスティック・・・ミズナラは、ウイスキーやブランデーを熟成する樽の素材に使われている。ミズナラスティックは、ミズナラを棒状に裁断し、焼きごてなどで表面に模様を焼き付ける。焼酎やウイスキーの瓶に入れておくと、1日ほどで香りが移り、まろやかな味わいになるという。
  • 竹とんぼを飛ばして遊ぶ
  • ネイチャーゲーム「カモフラージュ」・・・生きものたちは、敵から身を守るために、まわりに同化する色(保護色)になったり、色や形を周囲の他のものに似せたりして、カモフラージュしている。それを見つけることのできる観察力を養うゲーム。
  • ロープを張り、その内側に自然の中では絶対にない人工物を目立たないようにセットしてある。参加者は、お互いに話をせずに人工物を探し、その数を数え、終点にいる指導者にこっそり耳打ちをする。間違うと、もう一度、スタート地点に戻って再挑戦する。  
  • モルックゲーム体験・・・フィンランドの伝統的なゲームを元に、1996年にフィンランドで開発されたスポーツ。木製の投げる棒をモルックという。3〜4m離れたところに12本のスキットルを並べる。チームが交互にモルックを投げてスキットルを倒すゲーム。 
  • 森の散策
  • コロナ禍で人気を集めるアウトドア用品展示・・・暑い日差しを遮る屋根型のタープの中で、心地よい風と緑の森を借景に本格的なドリップコーヒーを飲めば、至福の時を味わうことができる。 
  • 林業機械展示デモ 
  • チェーンソーで丸太を輪切りにする実演・・・森の案内人・奥山勝栄さんがプロの腕前を披露。 
  • 輪切りにした丸太の年輪を数える
  • 残った丸太は、参加した家族にプレゼントされた。 
  • 森のクラフト・リースづくり 
  • 森の美術館展示・・・「身近な昆虫の不思議」(イラスト:進藤武インストラクター)
  • 森のどうぶつ・昆虫観察
  • オニグルミとリス、アカネズミ・・・リスは、クルミの縫合線に沿って歯を差し込み、時間をかけてパカッと二つに割ってから、中の美味しいクルミを食べる。アカネズミは、リスのように綺麗に割ることができない。あの硬いクルミのど真ん中に円形の穴を開けて食べる。 
  • リスのエビフライ・・・リスがアカマツの松ぼっくりの中にある種を食べた後は、まるでエビフライにそっくり。
  • 北米原産のリキダマツ・・・松ぼっくりを手で握ると痛い。何とリスに食べられないように鋭いトゲを持っているのが特徴。松の実は、動物たちにとって美味しくて栄養満点。だからそれを狙う動物たちに食べられないようにトゲトゲの松ぼっくりをつくるようになったと考えられている。 
  • アオダモ蛍光実験・・・アオダモの枝を切って水に入れると、殺菌性の強いクロマリン配糖体のエスクリンなどが水に溶け出す。紫外線のライトを当てると、美しい青色の蛍光を発する。これが名前の由来。  
  • スズメバチの毒針・・・スズメバチの毒針を顕微鏡で拡大すると2分割構造になっている。「刺針(ししん)」という硬くて細い管と、ノコギリ状の刃を持つ一対の「尖針(せんしん)」が背中合わせに並んで収まっている。刺針の先端が触れた瞬間に尖針が飛び出し、交互に相手の皮膚を切り裂きながら奥へ進み、深く突き刺して刺針から毒を大量に注入する。年間20人前後が刺されて死亡している。だから「クマより怖いスズメバチ」とも呼ばれている。 
  • 昆虫観察その①オニヤンマ・・・日本最大のトンボで、子どもたちに人気のオニヤンマは、クリプトンの森にたくさん飛んでいる。二組の親子が、見事オニヤンマをゲットした。
  • オニヤンマの見分け方・・・サナエトンボの仲間などに似ているが、左右の複眼が♂♀とも緑色で1点だけで接する点で区別できる。名前の由来は、怖い顔つきと腹部背面の黄色と黒の斑模様が鬼の形相(あるいは歌舞伎役者の顔)に見えるから。  
  • 昆虫観察その②ヒグラシ・・・セミを捕まえた家族が、セミの名前を教えて、と見せてくれたのがヒグラシだった。強い陽射しの時には鳴かず、朝早くと、夕暮れ時に、「カナカナ」と寂しそうな声で鳴く。曇りの日や深い森の中では、一日中鳴く。名前の由来は、夕方の日暮れ時に鳴くことから「日を暮れさせるもの」の意味から。
  • クリプトン・野鳥の森にトラップを設置・・・狙ったのは、飛べない昆虫の代表オサムシの仲間である。夜行性で、地上を歩いてエサを探し回る。だから地面すれすれの高さにコップの口が来るように埋めた「落とし穴式ピットフォールトラップ」を設置。その中に昆虫ゼリーなどのエサを入れる。このトラップで採集された代表的な昆虫は、美麗種のアオオサムシ、オサムシの仲間・キタマイマイカブリ、ニワハンミョウの3種。
  • 昆虫観察その③アオオサムシ・・・オサムシの仲間は、飛ぶことができないので、他の地域との交流がない。だから地域的な変異が大きく、「歩く宝石」と呼ばれる美麗種も意外に多い。アオオサムシの背面は、金属光沢があり、緑色、赤銅色、黄褐色など色彩に変異があり美しい。森林に生息し、夜行性で夜に出歩きミミズなどを捕らえて食べる。 
  • 昆虫観察その④ニワハンミョウ・・・体は暗銅色~暗緑色、前ハネに白い小さな紋がある。平地の人家周辺、農道などの地表でよく見られる。
  • 昆虫観察その⑤キタマイマイカブリ・・・オサムシの仲間・マイマイカブリの中でも、北東北に生息する美麗種。金属光沢を放ち、頭部と首は色鮮やかな赤紫色、胴体は深緑色をしている。人気が高く、マニアの間では「キタカブリ」と呼ばれている。 
  • 参考:漫画家・手塚治虫とオサムシ
     中学時代から同級生だった林久男さんの「手塚治虫とオサムシ」によれば・・・
     北野中学には、校庭の一角に農園があった。手塚君は珍しい昆虫を見つけると、作業服のポケットに忍ばせた毒瓶に片っ端から放り込んでいた。それを見て、級友たちは手塚君が昆虫採集をしていることを知った。夏休み最初の日曜日に宝塚の手塚君宅を訪問。彼の部屋の真ん中には、木で作った立派な標本箱が置かれ、その中央に見たこともない変わった形をした虫が鎮座していた。「これ何や」と聞くと、「マイマイカブリというオサムシの仲間で、マイマイ(カタツムリ)に首を突っ込んで食べるからマイマイカブリ言うんや。首がひょろ長くて、目玉がギョロッとしていて、僕に似ているやろ。それやから大好きなんや」と。これが本名「手塚治」に「虫」を一つ追加して、ペンネーム「手塚治虫」になった。「治虫」の読み方は、「オサムシ」だが、その後本名と同じく「オサム」と読ませるようになった。  
参 考 文 献
  • 「琵琶湖博物館ポピュラーサイエンスシリーズ オサムシ」(八尋克郎、八坂書房)