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森の学校2022 炭焼き体験

 2023年2月4日(土)、森の学校2022「炭焼き体験」が由利本荘市赤田地内で開催された。参加者は23名。昨年は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止となったが、今年はコロナも落ち着き、計画どおり実施された。ただし、野外での炭焼き体験のみのシンプルな形で行われた。当日は、これ以上ない好天に恵まれ、白炭の窯出し体験と炭火焼の試食を楽しみ、久々に満面の笑みが広がった。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/ロッカ森保全ボランティア、秋田県森の案内人協議会
  • 阿仁マタギと炭焼き
     阿仁銅山は、18世紀初め、年間の出銅額が、コメに換算すると約70万石、日本一の銅山になっている。阿仁は、全国から鉱夫が集まる大都会であったから、肉や毛皮、熊の胆、川魚、薬草の需要が発生し、狩猟先進地域へと発展したと考えられる。また1トンの銅を生産するためには、4トンもの木炭が必要であった。だから阿仁のマタギは、主に銅山用の炭焼きと狩猟を生業としていた。(絵図出典:「阿仁銅山働方之図」秋田大学鉱山絵図絵巻デジタルギャラリー)
  • 旅マタギが発生した理由
     天明・天保の飢饉で物価が高騰していた時代・・・秋田藩阿仁銅山の記録によれば、天保10年(1839)10月、阿仁の請負人7人は、連名で炭焼きの請負値段引き上げを願い出ている。「従来の値段では、安くて妻子も養えない。だから他国へマタギ商売に赴いたりする者が後を絶たない。その旅マタギに出る者は、特に打当村と中村の山子に多かった。他にも追々マタギ商売に出る者がいたようである。」と、旅マタギが発生した理由が記されている。(絵図出典:「阿仁銅山働方之図」秋田大学鉱山絵図絵巻デジタルギャラリー)
  • かつては粗悪な木炭
     秋田県では、院内銀山や阿仁銅山など、県内の鉱山が盛んな時代は、木炭の需要が大きかった。幕末には、藩の直営銅山の精錬用に7万7千俵が使われていた。しかし、品質は粗悪な木炭であった。 
  • 吉田式白炭窯(吉田頼秋氏)
     粗悪な木炭の品質改良に大きく貢献したのが、吉田式白炭窯の考案者である吉田頼秋氏である。彼は、福島県箕輪村の出身だが、昭和2年、秋田県の要請を受けて技師として就任し、県内木炭改良技術講習を重ねた結果、吉田窯が著しい勢いで普及し、秋田のナラ白炭は県外にも評価を高めた。後に岸本定吉博士によって秋・備(アキ・ビン、秋田備長炭)」と称されるように、全国的評価を得るに至った。炭焼き体験が行われたのは、その技術を継承する「吉田式白炭窯」である。 
  • 黒炭と白炭
     木炭には、黒炭と白炭がある。黒炭は値段が安く、一般にキャンプのバーベキューなどに使われている。白炭は値段が高く、蒲焼きや焼き鳥など炭火焼にこだわる飲食店で使われている。 
  • 窯出し体験
     白炭は焼き上がる頃、口を開けて約1,200度の高熱で焼く。だから、窯出しの作業は極めて熱く、大変な作業である。窯出し体験をする場合、ナイロン製の衣類や樹脂製のメガネなどは解けてしまうので特に注意が必要である。
  • 窯出しの道具・・・先がL字型のカギのついた出し棒で引き出す。引き出した炭は、小屋全体がパッと赤くなるほど熱い光を放つ。 
  • 消し粉と白炭・・・引き出した炭は、速やかに素灰(土に窯の灰を混ぜたもの)をかぶせ、空気を遮断して火を消す。この素灰を「消し粉」と呼ぶ。消火した炭は、灰のついた白っぽい色をしていることから「白炭」と呼ばれている。 
  • 炭とは・・・炭焼きは、無酸素状態に近いから木材そのものは燃えない。木材の成分が熱によって分解され、ガスや煙となって取り除かれ、炭素成分だけが固体となって残る。これが炭である。体積は約1/3に減るが、木材そのものの組織構造は変わらない。 
  • 白炭の特徴・・・硬く、着火しずらいが、安定した温度を長時間保ち、新しい炭を途中補填しても、温度が下がらず焼きムラもできないため、蒲焼きや焼き鳥に適している。また、ガスがほとんど出ないので、室内のホリゴタツや火鉢に最適である。ただし、黒炭に比べ値段は高い。 
  • 窯出し体験作業風景
  • スズメバチ最大級の巣・・・炭焼き小屋の天井部分にキイロスズメバチの巨大な巣があった。キイロスズメバチは、人家に近い環境に多く、攻撃性はかなり強いので注意。ただし、秋に生まれた新女王バチは、朽ち木の中などで越冬する。だから炭焼きが行われる冬季は、巣の中はもぬけのから。さらにこの巣は、翌年使わないので廃棄された巣である。
  • これだけ巨大な巣を作るということは、働きバチが千匹を超えているだろう。それだけ小屋周辺は、昆虫の多様性が豊かな証左であろう。ちなみに、幼虫に与えるエサは、ハエやアブ、他種のハチなど小型の昆虫や小型のクモなど。
  • 炭火焼及び試食風景 
  • 炭火焼が美味しい理由
     炭火で焼くと美味しいのは、遠赤外線が表面のタンパク質を高温で焼き固めるので、肉汁は中に閉じ込められる。さらに、その熱がほどよく中に伝わるので、外側はパリッと焼き目がついて香ばしく、中はジューシ―に焼き上がり、うまみもキープされるからである。