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鳥海山にブナを植え、ブナに学ぼう!

 2018年10月27日(土)、森の学校「フォレスターに学ぶ 鳥海山にブナを植え、ブナに学ぼう!」が、にかほ市小滝町鳥海山麓「霊峰公園」で開催された。「鳥海山にブナを植える会」恒例の植樹会は、毎年10月第4土曜日。今回の参加者は122名、植樹本数600本。うち第6班として参加した森の学校参加者は20名、植樹本数100本。横殴りの雨が降り続く悪天候の中、皆で力を合わせてブナの植樹に汗を流した。お昼は、手づくりの「つみれ汁」をご馳走になった後、ブナの生育状況等について学んだ。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/鳥海山にブナを植える会
  • にかほ市象潟庁舎駐車場で開会式。森の学校参加者は第6班。
  • 太古の昔から、鳥海山麓の生態系と命を支えてきたブナは、戦中戦後、受難の時代を迎える。軍需物資や戦後の復興資材としてブナ林が大量に伐採され、大規模なスギの植林が行われた。1993年、世界最大級のブナ原生林が広がる白神山地が世界自然遺産に登録されると、ブナに対する関心が一気に高まった。(写真:二ッ森から世界自然遺産を望む)
  • 鳥海山の山腹には、今でも美しいブナの森「中島台の森」が広がっている。それを見れば、多雨多雪地帯の鳥海山麓には、ブナが最も似合う森であることが分かる。そのブナの森の再生をめざして、1994年、「鳥海山にブナを植える会」が発足。(写真:中島台レクレーションの森「あがりこ大王」)
  • 2014年10月25日、「鳥海山にブナを植える会」設立20周年記念碑建立・・・今年は会結成24年目、植樹は23回目を迎える。一般会員243名、個人賛助会員182名、団体賛助会員19団体。
  • ブナの植樹は、秋田県水と緑の森づくり税(森林ボランティア活動支援事業)を活用して実施・・・2018年度植樹本数1,575本、累計植樹本数42,701本
  • ブナの実と野生鳥獣・・・ブナの実は、ツキノワグマやニホンザル、ムササビ、リス、ネズミ、ヤマネ、ヤマガラ、ホシガラスなどブナの森に棲む野生鳥獣たちにとって欠かすことのできない貴重な食料である。 
  • 鳥海山とブナの恵み・・・ブナの森は、渓流魚や山菜、キノコ、木の実、薬草などの恵みが豊かであるほか、命の源である水が豊富であることから、「緑のダム」とも呼ばれている。その水は田んぼを潤し、海に注いで、魚類や海藻類にも滋養分を与える。象潟の岩ガキが美味いのは、鳥海山の伏流水にあると言われている。季節になると、大量のサケやハタハタなど「食べ物」の方からやってくるほど豊かである。これも鳥海山とブナの森の恵みがあればこそであろう。(写真:中島台のブナの森から湧き出す獅子ヶ鼻湿原)
  • 植樹場所・・・にかほ市小滝町鳥海山麓「霊峰公園」のスギ伐採跡地(標高約600m)。 
  • 標識用の杭とハンマー・・・下刈り作業時に誤って苗木を伐らないよう標識を立てる。 
  • ブナの苗木・・・中島台のブナの森から種子を採集し、会員が家々で発芽させ、翌年の春に苗畑に移植して育てた苗木を使用。葉は、黄色から茶褐色に黄葉している。 
  • 第6班・森の学校参加者の植樹作業風景・・・風雨が吹き荒れる中、悪戦格闘しつつも、仲間と力を合わせて作業は順調に進む。
  • 6班に割り当てられた区画で、唐鍬とスコップで植えた穴を掘る。唐鍬は、荒地の開墾や根切りに使う道具で、伐採跡地の堅い土や木の根が邪魔をする場合に活躍する。
  • 穴を掘った後、苗木を植え、穴の隙間に土を入れる。ブナがしっかりと根付くように、根の周りをよく踏み固める。 
  • 標識を立てると完成。 
  • 恒例の植樹会に参加した1班~5班の植樹風景 
  • 第6班森の学校参加者植樹記念撮影 
  • 手づくりの「つみれ汁」調理風景・・・作業後、参加者にふるまうため、会員たちが奮闘。 
  • 昼食・・・雨天のため、管理棟内でいただく。手づくりの「つみれ汁」に、持参したオニギリ、弁当を食べる。風雨で冷え切った参加者は、身も心も温まる「つみれ汁」をありがたくいただく。お代わりする人も多く、あっという間に完売。
  • 「鳥海山にブナを植える会」副会長によるブナ植樹講座・・・林業技術もなく、森づくりのイロハも知らない素人集団がブナを植えてきた苦労話や、生育状況などについて学んだ。
  • 3月下旬、種子から芽が出た1年目の苗木を苗畑に移す作業を行う。毎月の最終土曜日は、苗畑の草取りを行うなど、会員たちが真心こめて育てた苗木が、毎年秋の植樹に使われる。
  • 植えっぱなしでは森にならない・・・毎年6月には、前の年に植栽した苗木の追肥と、雑草やツルに負けそうな植栽地の下刈り作業を行う。植えた後は、手を加えることが最も大切な作業。
  • 1996年に植栽したブナの生育状況・・・22年前に植栽したブナは、黄葉が美しく、立派に成長しているのが分かる。木の間隔が狭いのは、競わせて成長を促すためだという。
  • ブナは成長、結実ともに遅い・・・幹の直径が40cmほどになるまで100年を要すると言われる。ブナの実が結実する年齢も遅く、樹齢が約50~70年頃から始まるといわれている。
  • 参考:伐採後、約80年経過したブナの二次林(乳頭高原)・・・乳頭高原のブナ林は、約80年ほど前に大部分のブナの木が伐採されたが、その際、ある程度の割合で残されたマザーツリーから自然に種が落ちて一斉に成長し、ブナの二次林が再生された森である。今では、新緑、黄葉ともに美しいブナの森が見事に再生し、林床には落下した実から成長した稚樹が驚くほど多く生えている。霊峰公園に植えられたブナは、手を加えた分、自然再生より成長が速いことが期待される。恐らく50年後には、美しいブナの森に再生されていることだろう。