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森の学校 森の素材でつくる「ミニ門松」

 2018年12月22日(土)、「クリプトンの森の素材でつくるミニ門松」が秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンで開催された。参加者は30名。門松は、新年に歳神様を迎える目印(依代)として玄関前や門に立てる。ミニ門松は、業務用の大きな缶を使い、松竹梅の三点セットと、ナンテン、ユズリハを使った本格的なものである。門松に使う樹木がなぜ新春にふさわしいのか、その理由について、植物学の父・牧野富太郎博士が記した「植物記」を参考に記す。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • 協力/秋田県森の案内人協議会
  • ミニ門松づくりの講師は、門松づくりの名人・黒崎講師  
  • 協力・・・秋田県森の案内人協議会
歳神様とナマハゲと門松
  • 歳神様は祖霊来訪の神・・・人が亡くなると、その霊魂は村に近い山に上り、やがて「祖霊」となり、「山の神」になると考えられてきた。「山の神」は、春になると田に降りてきて「田の神」になり、秋の収穫が終わると山へ帰って「山の神」になるという循環を繰り返す。また正月には、再び「歳神様」として戻ってくる。これらの神様は、全てふるさとの山からやってくる共通点をもち、いずれも祖霊的神格を有すると言われている。
  • 祖霊来訪とナマハゲ・・・宗教民俗学者・五来重「宗教歳時記」によると、「ナマハゲが特に男鹿半島に盛んであり、現在も残っているのは、男鹿の本山と真山の山伏集団を除いては考えられない。ということは、鬼の面を付けて家々を訪れるナマハゲは、ここの山伏集団が大晦日の宗教行事として演出し、これを民衆が祖霊来訪として受け容れたのである」とし、大晦日の民俗行事と修験道儀礼が結合したもの、すなわち祖霊来訪・歳神様=ナマハゲと解釈している。
  • 来訪神行事「男鹿のナマハゲ」ユネスコ無形文化遺産に登録!・・・第13回ユネスコ無形文化遺産保護条約政府間委員会において、「男鹿のナマハゲ」を含む全国の来訪神行事10件が「来訪神:仮面・仮装の神々」としてユネスコ無形文化遺産に登録された。
  • 男鹿のナマハゲは、大晦日の晩、真山、本山のお山からやってくる。それは野蛮な鬼ではなく、神様(祖霊来訪の神様)。里の人々は、その祖霊来訪の神様=歳神様を迎えるための目印・依代として門松を玄関前や門に立てるのである。古くは、神が宿る木として松を一本立てたのが始まりとされる。やがて長寿を招く縁起物として、真っ直ぐに節を伸ばす竹が添えられるようになった。
ミニ門松に使用する縁起木
  • 松竹梅・・・植物学の父・牧野富太郎博士「植物記」によると

     松竹梅のめでたい事は誰でも知らん人はありません。これは誠にこの上もない好い取り組みを昔の人がしてくれたもので、それは誰でも意義のない所でしょう。それゆえこれが歌に謡われるのも無理はありません・・・「梅や松とや若竹の手に手引かれてしめ飾り」 
  • お正月は年のはじめで何もかも芽出度くなければならない。人々が気を新たにしてこれからまた踏み出そうというところで軍でいえば出陣という場合である。ゆえに万事縁起を祝ってその門出を賑やかにせねばならぬ。そこでお正月のお飾りの植物は芽出度ずくめのものが取り揃えてあるわけだ。
  • ・・・松、それは「百木の長」といわれます。松は千代も変わらぬ常磐木でして新春にまずその色を愛でたものです。古人も「常磐なる松の翠も春来れば今一しほの色まさりけり」と詠みました。
  • 景色の王様・・・幸いに優れた赤松と黒松があるので我が日本の景色がとても優れて見えるのです。もしもこの二つの大関が無かったならば非常に物足りない景色となるのは必然です。すなわち景色から言っても疑いなくこれは王様なんです。この二つの松を昔から門松にする事は誠に意義深いもので、この美風は何時までも続かねばならんと私は思っています。
  • ・・・竹は松と同じくその色を換えぬ葉と稈とが芽出度いものとなっています。松は千歳を契るもの、竹は万代を契るものといわれています・・・竹の稈には節がある上に中が空洞で筒になっています。それゆえ風に抵抗してもとても強く容易に折れません・・・昔は地震が起きると竹藪に逃げ込んだといいます。それは竹の鞭根が縦横に交錯して地割れがせず避難処として安全だといわれています・・・まずこんな事でも竹を新春の芽出度いものとする価値は充分に認められます。 
  • ・・・梅の花は天下の尤物(ゆうぶつ、多くの中で優れたもの)だといわれます。これをただ翠の松、緑の竹に比べますと色があってこの二つに取り添う何となく軟らかい一脈の趣が生じます。殊に梅の花は百花にさきがけてひらき・・・鴬宿梅のように・・・鴬は梅の寵児、梅は鴬に懐かしがられて何となくその情景がしおらしいのです。これもまた確かに新春の景物であります。昔、日本で花と言ったのは梅だそうです。 
  • ユズリハ・・・牧野富太郎博士「植物一日一題」には、常緑でツヤのある葉に、冬には珍しい赤色の長い葉柄という美しさが注目され、新旧交替の妙が愛でられた故の命名であるとし、「正月にユズリハを飾るのは、譲るの意で、親は子に譲り、子は孫に譲り、子々孫々相襲いで一家を絶えさせんようにと祈ったものである。この点からみるとユズリハは芽出度い木である。松竹梅に伴わさしてもよかろう」と述べている。
  • ナンテン(南天)・・・「難を転じて福となす」、あるいは火災避け、悪魔除けの効果もある縁起木として、門口や戸口、鬼門に植えたほか、不浄を清めるとしてお手洗いの側に植えた。また、縁起物として門松や南天の床柱、南天箸などに使われている。 
  • 梅の代わりに使用した十月桜・・・初冬と春の二回咲く。
  • 竹の切り口は二種類・・・斜めに切った「そぎ」(左上写真)と真横に切った「寸胴」(右上写真)がある。元々は「寸胴」であったが、「そぎ」は、徳川家康が始めたもの。徳川家康の生涯唯一の敗北として知られる「三方ヶ原の戦い」(1572年)の後、対戦相手の武田信玄に対して、次は斬るぞという念を込めたのが始まりという説がある。  
ミニ門松づくり
  • 門松の切り口は、「笑顔の口の形」・・・竹の切り口を笑った口のように斜めに切るのは、「笑う門には福来る」を意味している。
  • 縄でミルク缶の外側をきっちり巻く。 
  • 縄の結び目がある側が隠れるように裏側にして3本の竹を立て、缶に5cmほど砂を入れる。入れ過ぎに注意! 
  • アカマツは、運が右肩上がりになるように、右側が高く、左側が低くなるように挿し込む。  
  • 次にユズリハ、まだツボミの梅を挿しポップコーンを白い梅の花に見立てて飾りつける。さらに梅に見立てた十月桜を挿し込む。
  • 最後に赤い実のナンテンを挿し込み完成。 
参加者の作品
  • 俳句・・・門松(松飾、飾松、飾竹)
    大いなる門のみ残り松飾り 高浜虚子
    門松の笹のふれ合ひ隣り合ひ 下田実花
    門松やおもへば一夜三十年 芭蕉
    松立てて空ほのぼのと明くる門 夏目漱石
  • 門松の設置時期・・・スス払いや松迎えなど、お正月の準備を始める12月13日(正月事始め)以降ならいつでも良いとされている。ただし、クリスマスは避ける場合が多く、12月29日は「苦立て」、31日のギリギリに立てるのは「一夜飾り」といって嫌われるので注意!。門松を飾ってから取り外すまでの期間を「松の内」と言い、その期間は、1月7日(関東)~15日(関西)までが一般的である。