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鳥の目・虫の目・子どもの目 遊んで育つ里山入門講座

 2020年1月18日(土)、森の学校「鳥の目・虫の目・子どもの目~遊んで育つ里山入門講座」が秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンを会場に開催された。参加者は50名。講師は、森林インストラクター酒井浩さん。カンムリカイツブリの子育てや、モンゴルのたくましい子どもたち、森の子どもたち、子どもと一緒に楽しみたい自然10選、子の育ちにとって大切なことの5項目について、豊富な写真・動画と事例に基づいて丁寧に解説してもらった。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/秋田県森の案内人協議会
  • 講師・・・酒井 浩さん(森林インストラクター、秋田県森の案内人協議会副会長、元公立小学校長)
  1. カンムリカイツブリの子育て
  • 水辺に浮き巣をつくって卵を6個産む。抱卵期間は約1ヶ月。孵化近くになるとまるで声をかけるようにツンツンと卵をつつく。 
  • 孵化した雛を背に乗せて子育てをする。背中にのっている雛は2匹。後の4個の卵はどうなったのか。アオサギに食べられたのかもしれない。雌が子供を背負っている時は雄が餌の小魚を運んでくる。子どもが潜れるようになるまで、親から魚をもらい続ける。 
  • 空からダイサギが子どもを狙おうと、執拗に低空飛行すると、親は「ギャ~」と激しい声で威嚇し追い払った。子別れ時期になると、親は子どもを突いたり、子別れを促すようなしぐさをする。生まれてから約3ヶ月で幼鳥は親元から離れていった。厳しい自然界で生きるカンムリカイツブリの子育てから学ぶ点も多い。
  1. モンゴルの子どもたち
  • モノはなくても、子どもたちが群れて遊んでいた。遠くから子どもを抱いて見守る親の姿も。まるで昭和30年代~40年代の頃と同じような懐かしい風景に見えた。
  • 植樹作業・・・モンゴルは寒いので、山には針葉樹が多い。しかし違法伐採が多い。その結果、本来の森がなくなった山に日本のNPO法人が植樹している。その植樹に参加した後、村の小学校でワークショップを行った。 
  • 村の小学校・・・教室で空飛ぶ種子のワークショップを40分間行った。子どもたちの視線と一生懸命な姿に、一生忘れられないほどの興奮を覚えた。モンゴルの子どもたちは、どこから一生懸命さが生まれていたのか。モンゴルは、短い夏と冬の寒さは半端じゃない。そんな厳しい環境で育つ子どもたちのたくましさを感じた。
  • 校長先生に「あなたはどんな子どもたちに育てたいか」と聞くと、一つはモンゴルを愛してくれる人、二つ目はモンゴルの周りの人たちに優しく接する人、三つ目はモンゴルの自然を愛する人です、とはっきり言いきった。これには感動した。  
  1. 森の子どもたち
  • 上左の写真・・・ぼく、こんな松ぼっくり見つけたよ
  • 上右の写真・・・2歳の弟がお兄さんの真似をして草笛に一生懸命挑戦する姿 
  • 子どもたちが森を歩き回って何か発見すると、友達と情報を共有する。上からの情報はなくとも、友達から情報を共有できる点が素晴らしい。
  • 12月、子どもたちを並ばせ、影の長さを見ながら、〇〇ちゃん、大きくなったねと言う。 
  • 1歳半の子の頭に落ちたモミジがかわいい。この子は、もっと外を歩きたいと主張した。
  • 公園で親子が落葉を拾い、首飾りをつくる親子・・・何も道具はないけれども、自然は子どもたちにとって遊びのフィールドだなと感じた。 
  • 理想の自然観察会・・・ミズナラの倒木に、年齢も違うし、お互いに全く知らない子どもたちが乗っている。こうした自然の中にいると、子どもたちは自然と心を開いてお互いに情報を共有したりする。親子で参加する場合は、親は親同士、子どもは子ども同士で情報交換・共有することがポイント。 
  1. 子どもと楽しみたい10の自然
  • え、この泡は何・・・・セミの仲間・アワフキムシの幼虫が作る「巣」である。小さな幼虫は、植物の汁を吸って生きている。その際、余分な水分は排泄しながら泡で巣をつくる。泡は、粘り気があって、雨風で吹き飛ばされたりしない。さらに日照りが続いても干からびることもなく、意外に丈夫にできている。
  • あれ、何だろう この巻かれた葉っぱ・・・オトシブミの卵。オトシブミは、木の葉を巻いてゆりかごをつくる。この中に卵が数個入っている。卵から孵化した幼虫は、この葉を食べて成虫になるまで暮らす。名前の由来は、昔、好きな人に拾わせるように通り道にわざと落としておく恋文「落し文」に似ているからなどの諸説がある。 オトシブミは、ぶら下がっている場合もあるし、下に落ちているものもある 
  • 木の枝から、黄緑色のチョウチンのようなものがぶら下がっているが、これは何?・・・・ウスタビガというガの仲間のマユ。マユに水がたまらないよう下に小さな穴が開いている。冬を前に産卵し、卵の状態で越冬する。翌年の4~5 月に孵化、6月中頃にマユを作ってサナギになる。10~11 月頃に羽化して、産卵し、その一生を終える。 
  • 蛾のマユ3兄弟・・・ウスタビガ(長男)、ヤママユ(二男)、クスサン(三男)を題材に、自ら作った歌「俺たちまゆの抜け殻3兄弟」を熱唱した。 
  • 生まれたばかりの生き物たち・・・カイツブリの赤ちゃん、一緒に見たいセミの羽化 
  • エビフライ?食べたのはだ~れだ?・・・松ぼっくりの中の種を、ニホンリスが食べた残骸は「エビフライ」にそっくり。アカマツの球果には、40~50個の種が入っている。この種を取り出すためにリスは鱗片をかじって剥がす。 
  • ベストショット・・・眼が合ったニホンリスとエナガ
  • 細長く黒い甘納豆のようなものがたくさんあるが、これはな~んだ?・・・・カモシカのうんち。カモシカは、立ち止まって同じ場所に「溜め糞」をする習性がある。ちなみにカモシカは、シカの仲間ではなくウシの仲間。
  • 冬は、雪の上に足跡がいっぱい、誰のものだろう?・・・冬、雪の上についた足跡でよくみかけるノウサギ(トウホクノウサギ)の足跡。ノウサギは前足跡が小さく、後足跡が大きい。後足でジャンプして前進するため、後足跡が横に並んでいるのが特徴。
  • 生きている、生き物の姿・・・ムクドリがカエルをくわえている。絶滅危惧種のミゾゴイがミミズをほじくって食べている→命をつなぐことは、他の一つの命をいただくこと。
  • ホオノキの赤い実についている、矢印の糸は何のためにあるの?・・・風にゆらゆら揺れながら、タネをできるだけ遠くに飛ばすため。風散布だけでなく、ホオノキの赤い実は、多くの鳥たちが食べて、移動した後に、糞と一緒に種子を散布してくれる。
  • オオルリ・・・声も瑠璃色の姿も美しい。ウグイス、コマドリと並び日本三鳴鳥の一つ。 
  1. 子の育ちにとって大切なことは?
  • 「輸送反応」・・・哺乳類の子どもが親に運ばれるときは、心拍数が低下し、泣き止んでおとなしくなる反応のこと。動物は移動のとき、敵に見つからないように注意しなくてはいけないため、生き延びるための子どもの本能として、親に協力しておとなしくなるという。この本能が、人間にも備わっていて、親が抱っこして移動を始めると、「泣いている赤ちゃんを泣きやませる」のに即効性がある。
  • チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは出産間隔が長く、1匹の子どもを母親単独で育てる。一方、人は出産間隔が短く多産になるので、母親以外の協力が必要。つまり人は、母親一人で育てることはできないという特長がある。 
  • まとめ・・・「より豊かな子どもの目」を育むために大切にしたいこと
    ① 子どもにとっての活動フィールドがあるか→遊び場の確保
    ② 春夏秋冬それぞれの季節の良さを楽しんでいるか→自然と向き合い続ける
    ③ 五感をフルに活用しているか→心身の健全な活用
    ④ 子ども同士が一緒に遊べる場であるか→共同保育の発想。
  • 質問・・・モンゴルの植樹について、苗木はどこから調達して何を植えているのか
    日本のNPO法人が村から場所を借りて苗木を育てている。その村に、春と秋の二回植樹に行っている。苗木は、大きくなったシベリアマツという針葉樹がほとんど。
  • 質問・・・今の子どもたちは、外で遊ばずゲームばかりしている。将来が不安なんで、アドバイスを
    非常に難しい質問です。今は、パソコンを操作していろんな情報を得るということは必要なこと。ただし、そればかりでなく、世の中には楽しいことが一杯ある。そういういろんな選択肢を子どもたちに与えてあげることが私たちの責任ではないか。