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森の学校2019 炭焼き体験

 2020年2月1日(土)、2019年度最後の森の学校「炭焼き体験」が由利本荘市赤田地内で開催された。参加者は、38名。記録的な暖冬で雪が全くなかったが、時折アラレが降る中、メインの白炭窯の窯出し体験が行われた。室内では、甘酒をご馳走になりながら、高野家と泉谷家のお雛様を観賞した後、昼食。最後に来年度の森の学校の企画、各団体の里山再生等に関する情報交換を行った。なお、動画は最後に掲載している。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/ロッカ森保全ボランティア、秋田県森の案内人協議会
  • 粗悪な木炭(絵図「阿仁銅山働方之図」秋田大学鉱山絵図絵巻デジタルギャラリー)・・・秋田県では、院内銀山や阿仁銅山など、県内の鉱山が盛んな時代は、木炭の需要が大きかった。幕末には、藩の直営銅山の精錬用に7万7千俵が使われていた。しかし、品質は粗悪な木炭であった。
  • 吉田式白炭窯(吉田頼秋氏)・・・粗悪な木炭の品質改良に大きく貢献したのが、吉田式白炭窯の考案者である吉田頼秋氏である。彼は、福島県箕輪村の出身だが、昭和2年、秋田県の要請を受けて技師として就任し、県内木炭改良技術講習を重ねた結果、吉田窯が著しい勢いで普及し、秋田のナラ白炭は県外にも評価を高めた。後に岸本定吉博士によって秋・備(アキ・ビン、秋田備長炭)」と称されるように、全国的評価を得るに至った。
  • 吉田式白炭窯の伝承者は、「炭博士」と呼ばれた故鈴木勝男さん・・・現在、炭焼き体験に使われている吉田式白炭窯も鈴木勝男さんが伝承したものである。彼は、1955年、初めて焼いた木炭が秋田県の品評会で1位を獲得。さらに、全国品評会で2位。1位は和歌山の備長炭であった。
  • 炭とは・・・簡単に言うと木を蒸し焼きにしたもの。炭焼きは、無酸素状態に近いから、木材の成分が熱によって分解され、ガスや煙となって取り除かれ、炭素成分だけが固体となって残る。これが炭である。体積は約1/3に減るが、木材そのものの組織構造は変わらない。木炭には、黒炭と白炭がある。
  • 黒炭とは
    1. 焼き上がる頃、窯を密閉したまま火が消えて冷えるのを待つのが黒炭である。文字どおり見た目が黒い。
    2. 黒炭は、軟らかく、着火しやすいが、火力が弱く、長持ちしない。
    3. その分値段が安く、一般にキャンプのバーベキューなどに使われている。 
  • 白炭とは
    1. .白炭は、焼き上がる頃、口を開けて約千度の高熱で焼き、まだ赤々とした炭を窯から出した後、素灰を掛けて消化させる。その消し粉をかけた時に白い粉が付くので白炭と言う。
    2. 非常に硬く、叩くと高い金属音がする。
    3. 着火しにくいが、安定した温度を長時間保ち、新しい炭を途中補填しても、温度が下がらず焼きムラもできない。
    4. 蒲焼きや焼き鳥など炭火焼にこだわる飲食店で使われている。
    5. ガスがほとんど出ないので、室内のホリゴタツや火鉢に最適である。ただし値段は高い。
  • 備長炭(白炭)の名前の由来・・・備長炭の名前の由来は、江戸時代の紀州の炭問屋「備中屋長左衛門」に起源すると言われている。元は熊野炭で、これを田辺市秋津川付近の人たちが改良して今の紀州備長炭の焼き方を編み出した。この炭を一手に扱い、江戸に送り出していたのが備中屋長左衛門である。以来、ウバメガシを材料にしたかたい炭のことを備長炭と呼ぶようになった。
  • 農林規格による備長炭の定義は「硬さ」・・・硬度15度以上とされている。紀州産に限らず、その規格をクリヤーした白炭は、秋田備長炭、豊後備長炭(大分県)、土佐備長炭(高知県)、日向備長炭(宮崎県)などと呼ばれている。
  • 白炭の工程・・・まず地元の山から原木のナラを伐り出す。次いで「窯詰め」・・・原木の長さを整えて奥の方から縦に詰めていく。「口焚き」は、原木の水分を抜く工程で、柴などを燃やして温度をあげ、煙が白色から空色に変わるまで焚いて、口を塞ぐ。「焼火」は、220℃ほどの温度を保ち、しっかりと炭化させる。 
  • 塞いでいた窯の口を開けるタイミング・・・煙の色と臭いだけで判断する。炭になるにつれて、青白い色が無色透明に近くなり、木の焦げた匂いがしなくなる。次第にガスのような刺激臭が強烈になるにつれ、煙が無色透明になったら、炭化が終わり、口を開けるサインである。
  • ネラシ(精錬)・・・窯の口を少しずつ開け、空気を入れる。すると、中のガスに火が点き、燃え始める。中の炭の全てが真っ赤になり、表面の皮が燃え落ちるまで温度を上げていく。この作業をネラシ(精錬)という。このネラシは、炭焼き職人の勘と経験が全てだけに一番難しい技術である。 
  • 窯出しのタイミング・・・窯から炭を引っ張り出すタイミングは、炎の先が黄色(金色)になった時である。肉眼でははっきり識別できるが、写真では撮れないほど微妙な色である。
  • 窯出し作業・・・窯出しの際、燃焼中の木炭は、1,200度前後の高温である。だから、窯出しの作業は極めて熱く、大変な作業。窯出し体験をする場合、ナイロン製の衣類や樹脂製のメガネなどは解けてしまうので特に注意が必要である。 
  • 窯出しの道具・・・先がL字型のカギのついた出し棒で引き出す。 
  • 消し粉・・・引き出した炭は、速やかに素灰(土に窯の灰を混ぜたもの)をかぶせ、空気を遮断して火を消す。この素灰を消し粉と呼ぶ。 
  • 白っぽいから白炭・・・消火した炭は、灰のついた白っぽい色をしていることから白炭と呼ばれている。
  • 窯出し体験
  • 炭火焼が美味い理由は・・・炭火で焼くと、遠赤外線が表面のタンパク質を高温で焼き固めるので、肉汁は中に閉じ込められる。さらに、その熱がほどよく中に伝わるので、外側はパリッと焼き目がついて香ばしく、中はジューシ―に焼き上がり、うまみもキープされるからである。 
  • 美味しい甘酒をご馳走になりながら、高野家と泉谷家のお雛様を観賞
  • お雛様の解説をしてくれた泉谷健一さん
  • 高野家のお雛様・・・明治初期(推定)の貴重なお雛様(古今雛)
  • 泉谷家の享保雛・・・明治初期の享保雛。享保雛は、江戸時代の中頃・1716年から1736年頃の享保年間に、 京都で生まれて各地に広まっていった大型のお雛様。享保時代は、バブル期のように大変に豪華絢爛な時代だったため、お雛様も豪華で高級なものを作っていた。
  • 享保雛の特徴・・・大型で、顔の形は面長、切れ長な目と少し開けた口、 細くて白い手などである。
 
  • お雛様の掛軸(上左)・・・享保の改革で倹約政策をとられると、大型のひな人形が禁止されたことから、版画タイプの掛軸が生まれたという。 
  • ロッカ森保全の会女性部・手づくりの食文化を味わう・・・手づくりの鍋料理とガッコなどを食べながら、持参したオニギリを食べる。
  • 情報交換会
  • 2020年度森の学校企画案・・・「元気ムラの旅シリーズ7」は、白岩焼で有名な仙北市白岩地区を予定しています。和賀山塊白岩岳の麓に位置し、仙北地方の民謡「ヒデコ節」に謡われている山菜・ヒデコの栽培やブナの老木に生えるトンビマイタケの栽培、ドンパン節発祥の地・雲巖寺、白岩焼窯跡、中世の山城跡など見所も多い
  • 講座Part6は、秋田花の会の柳原清会長を講師に迎え、「写真で学ぶ 秋田の山野草講座」を予定しています。  
  • 炭焼き体験動画・・・3分55秒