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クリプトンの森便りその11

  • サクラと動物媒花・・・鳥や昆虫など動物に受粉を依存する花を「動物媒花」という。サクラの花にやってくる動物たちを観察していると、鳥以外にも多くの昆虫たちがやってくる。まず鳥で言えば、送粉者として活躍する鳥は、メジロとヒヨドリである。
  • 盗蜜者・・・スズメ、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラといった鳥は、受粉に貢献せず蜜のみを奪う「盗蜜者」である。今回は、ヤマガラとヒガラがどのようにして蜜を盗むのかを撮影してみた。
  • サクラの花をもぎ取ったヤマガラ・・・花の蜜は、ガク筒の細くなった花の奥に隠されている。鳥や昆虫が花の奥に隠されている蜜を、花の正面から吸おうとすれば、体が雄しべに触れ黄色い花粉がつく仕掛けである。ところがヤマガラは、花をガク片ごともぎとってしまう。
  • 木の実を食べる時と同じく、枝の上でもぎった花の裏側を足で押さえて、蜜の入ったガク筒にクチバシで穴を開けて蜜を吸う。吸い終わると、ポイッと花を捨てる。だからサクラの木の下には、花びらがたくさん散乱している。 
  • 花初期の頃・・・ヤマガラは、開いた花ではなく、ツボミを集中的に摘んで蜜を吸う。開花した花よりもツボミの方が蜜が美味しいのだろうか。 
  • ツボミを足で押さえ、クチバシで穴を開けて蜜を吸う。吸い終わるとポイッと捨てる動作を繰り返していた。
  • 今度は、カラ類の中でも小さいヒガラの群れがやってきた。
  • ヒガラの盗蜜・・・片足で花びらを押さえ、クチバシで蜜の入っているガク筒に穴を開けて蜜を吸う。何とも器用な盗蜜者だと感心してしまう。
  • サクラの花蜜にやってきたビロードツリアブ・・・鳥と違って昆虫は小さいので、いつも見逃していた。花の周囲を注意深く観察していると、昆虫たちが花の周りを飛び回っているのが分かる。このビロードツリアブは、カタクリやスミレ類、菜の花など春一番に見かける昆虫の一つであった。3~6月、平地から亜高山で花の蜜、花粉などに集まる。
  • ハナアブの仲間・・・ハチに似ているが、アブの仲間なので眼が大きく、触角が短い。ハチ目に次いで重要な送粉グループと言われている。
  • 花粉まみれになったニホンミツバチ・・・ミツバチは、ハナアブより触角が長く、後ろ足に黄色い固まりになった花粉をつけているので判別できる。この花粉の固まりは、アブの脚には見られない。
  • 「春の女神」と形容されるギフチョウ、ヒメギフチョウ・・・昆虫ファンに人気が高いチョウだが、共に個体数が少ないだけでなく、撮影のチャンスが極めて少ない。その理由は、サクラが咲きはじめる頃に現れるというが、サクラが散って10日もすると姿を消してしまうからだ。
  • 成虫は、カタクリやキクザキイチゲなどの花蜜を吸い、食草のウスバサイシンの葉の裏に卵を産む。そのヒメギフチョウを狙って、ウスバサイシンとカタクリが群生する場所を何度も訪問したが、今だ一度もお目にかかっていない。
  • ルリビタキのオス・・・青色の宝石「瑠璃」の名前がついた鳥は、ルリビタキのほか、オオルリ、コルリが知られ、「瑠璃三鳥」と呼ばれている。下枝にとまって地上を見張り、昆虫やクモを見つけると舞い下りて捕食する。
  • ルリビタキのメス・・・メスは地味だが、尾がブルーで、眼の周りに白いアイリングがある。
  • オオルリ・・・渓流沿いのよく茂った林に棲息し、枝先から谷間の上空に飛び出し、昆虫類をフライングキャッチで捕食する。
  • 集団で行動するアトリの群れ
  • オオアカゲラ・・・アカゲラと違って、脇腹に黒い縦斑があるのが特徴。鋭いクチバシで木をつつき、中にいる昆虫を捕食する。
  • アオゲラ・・・繁殖期に「ピョー、ピョー、ピョー」と、笛のような大きな声で鳴く。ドラミングは、「ドドドド」と、木の幹をクチバシで叩く。主に木の幹の樹皮の間から昆虫やその幼虫を取り出して食べる。
  • コゲラ・・・「ギィー、ギィー」ときしるような声でなく。ドラミングは、「トロロ」と聞こえる低く短い音である。主に昆虫類をエサとし、秋冬でも樹皮の下から虫を探して食べる。
  • カケス・・・数羽の集団が地上に降りて、落葉の下にいる昆虫などを捕食していた。二羽が仲良く並んで行動していたのでツガイだろうか。
  • シロハラ・・・明るい場所は好まないので、なかなか姿を見ることがない。薄暗い雑木林の茂みで昆虫やミミズを捕食していた。
  • ウグイス・・・藪を好むので、葉が茂ると「声はすれども姿見えず」の代表格。それだけに撮影のチャンスは、早春の一時期だけに限られる。藪の中を枝移りしながら活発に移動し、葉にとまる昆虫などを捕食する。
  • クロツグミ・・・主に地上を歩きながら、ゴミムシなどの昆虫やミミズを捕食する。
  • キビタキ・・・鮮やかな黄色と橙色が美しい夏鳥の代表種。雑食性だが、繁殖期は主に昆虫類を捕食する。空間の開けた明るい落葉広葉樹林で、飛ぶ虫をフライングキャッチで捕らえる。
  • ウスバサイシンとカタクリの混生・・・ヒメギフチョウのためにあるような花園だが、なぜか姿も葉裏の卵も確認できない。やむなくクマ講座でお世話になった加藤明見さんにご教示いただいた。
  • エンレイソウの群落
  • ベニイタヤ・・・ブナ帯の「春紅葉」に欠かせない樹木。
  • ベニイタヤとヒガラ
  • モズ・・・地上に舞い降り大きなトンボを捕まえると、再び枝に戻った。
  • トンボを頭から丸呑みしたモズ・・・木の枝や杭などにとまって地上を見張り、昆虫やムカデ、カエルなどの小動物を捕食する。
  • シータテハ・・・春から秋にかけて見られ、成虫で越冬する。
  • バッケとハナアブの仲間・・・昆虫は種類が多く、素人には種の特定は難しい。従って、ハナバチの仲間、ハナアブの仲間といった大きなグループで表現していこうと思う。
  • リュウキンカとハナアブの仲間
  • 菜の花とニホンミツバチ
  • ヤマブキとヒラタアブの仲間 
  • ユキヤナギとカミキリムシの仲間
  • ニホンタンポポとヒラタアブの仲間・・・珍しくニホンタンポポを見つけたので、どんな虫が来ているのだろうかと覗くと、ヒラタアブの仲間が花粉をなめていた。
  • セイヨウタンポポとキリギリスの仲間・・・キリギリスの仲間・ヤブギリの幼虫
  • ドウダンツツジとクマバチ・・・壺形の白い花は、クマバチがぶら下がって蜜を吸うのに最適な形になっている。花の色だけでなく、大きさや形も、送粉者として呼びたい昆虫に合わせてアピールしているのであろう。
  • ツバキの花とミツバチ・・・鳥に比べて遥かに小さいミツバチは、大きなツバキの花に入ると、身体全体が花粉まみれになってしまう。
  • イチゴの花にやってきたハナムグリとアリ ・・・アリは、花の周りをせわしなく動くが、ハナムグリは、花に潜って微動だにせず、花の蜜や花粉を食べる。
  • スミレサイシンとビロードツリアブ ・・・全身毛に覆われ、花粉を運ぶには最適な昆虫のように思う。それにしてもこれがアブの仲間とは驚いた。ビロードツリアブは、早春の花園で大活躍していた。
  • トゲアリによる巣の乗っ取り・・・樹木見本園のオニグルミの洞に巣を構えていたムネアカオオアリは、トゲアリの襲撃を受けて完全に乗っ取られていた。撮影した写真を拡大すると、背中に鋭いトゲのようなものがある。明らかにトゲアリだ。
  • トゲアリは、クロオオアリやムネアカオオアリの巣に侵入し、その巣の女王アリを殺して居座る。さらに、襲撃した相手の働きアリを奴隷のようにこき使い、自分の子を育てさせるのだ。襲った相手の働きアリが全て寿命尽きて死んでしまうと、トゲアリだけのコロニーになるというわけ。その結末が上の写真だ。洞に群がっているアリは、全てトゲアリになっていた。
  • トゲアリは、巣を侵略するだけでなく、征服した働きアリを奴隷のように使う戦略には驚かざるを得ない。人間の奴隷社会より遥か以前から、トゲアリはこの頭脳的な戦略で生き延びてきたのである。やっぱり、昆虫はス・ゴ・イ!