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クリプトンの森便りその12

  • スミレの蜜を吸うヒメギフチョウ(由利本荘市鳥海町)・・・「春の女神」とたたえられるヒメギフチョウは、サクラが咲き始める頃に現れ、サクラが散って10日もすれば姿を消す。まるでスプリングエフェメラル(春の妖精)のような昆虫であることから、「春のチョウ」の中でも群を抜いて人気が高い。それだけに撮りたい昆虫の筆頭であっただけに、早春から追い続けた。しばらく惨敗が続いただけに、やっと出会えた時は、「バンザイ」するほど嬉しかった。これも詳細な情報をいただいた加藤明見さんのお陰である。
  • 落葉に止まったヒメギフチョウ・・・残念ながらカタクリの花が終わっていたので、早春の妖精・カタクリの蜜を吸うベストショットは撮れなかった。来年、再チャレンジしたいと思う。なお、ヒメギフチョウの食草ウスバサイシン(トウゴクサイシン)に産卵した卵も確認した。 
  • トチノキの花蜜を吸うマルハナバチ・・・トチノキの花は、蜜を出す3日間、花の中央に黄色い蜜標をつける。蜜を出さない4日目以降になると、赤い蜜標をつける。マルハナバチは、その違いを見分け、黄色い蜜標を頼りに蜜を吸っていた。 
  • トチノキとトラマルハナバチ・・・トラマルハナバチは、口が長く、胸部の鮮やかなオレンジ色が特徴。 
  • トチノキとクマバチ・・・同じミツバチ科ハナバチの仲間で、よくオスがホバリングしているのを見掛ける。大形でずんぐりした体形。胸は黄色の毛に覆われている。
  • トチノキとフトハサミツノカメムシ・・・トチノキの花は、大きく目立つためか、ハナバチの仲間だけでなく、チョウやアリ、カメムシなど多くの昆虫たちが群がってやってくる。この中には、盗蜜者もいるので、蜜を出さないダミーの赤い蜜標で騙す戦略をとるのも頷ける。
  • ヒメアカタテハ・・・タテハチョウ科。全体が赤桃色。日中、草地上を敏速に飛翔し、タンポポ類やアザミ類など各種の花を訪れる。食草は、ハハコグサ、ヨモギ、ゴボウ(キク科)、カラムシ(イラクサ科)など。
  • サカハチチョウ・・・日中、やや低い位置を小刻みに羽ばたせながら飛翔し、地面や倒木、草上によく止まる。ウツギ類やシシウド、オカトラノオなど各種の花を訪れる。動物の排泄物にも集まる。食草は、コアカソ、クサコアカソ、エゾイラクサ、ホソバイラクサなど(イラクサ科)。
  • オオゴマダラエダシャクの交尾・・・白地に黒紋のごまだら模様の大きなシャクガ。幼虫の食樹はカキノキ。
  • ユウマダラエダシャク・・・幼虫は、マサキの葉を食べ、葉上に静止する姿を見かける。そっくりな近似種が何種もいるという。
  • トラガ・・・蛾の仲間だが、チョウと見紛うほど美しい。初夏の日中に素早く飛び、花を訪れる。
  • シロツメクサとツバメシジミ・・・オスの表は細い黒帯が走る外縁を除いて紫青色。メスは黒褐色。日中、草原上を活発に飛翔し、シロツメクサやキツネノマゴなど各種の花を訪れる。食草は、レンゲソウ、シロツメクサ、カラスノエンドウ、ヤマハギ、コマツナギなどの各種マメ科植物。
  • アカツメクサとモンキチョウ・・・日中、タンポポ類やヒメジョオン、アザミ類など各種の花を訪れる。食草は、シロツメクサ、レンゲソウ、コマツナギ、ミヤコグサなどの各種マメ科植物。
  • 菜の花とモンシロチョウ・・・表は白色で黒斑があり、裏は白色~やや黄色みを帯びる白色。日中、キャベツ畑などを活発に飛翔し、タンポポ類やネギ、ヒメジョオンなど各種の花を訪れる。食草は、キャベツ、ブロッコリー、アブラナ、ショカッサイ、イヌガラシ、タネツケバナなど(アブラナ科)。
  • 菜の花とスジグロシロチョウ・・・モンシロチョウと似ているが、サイズや斑紋の特徴で識別できる。日中、タンポポ類やアザミ類、ヒヨドリバナなど各種の花を訪れる。食草は、ヒロハコンロンソウ、タネツケバナ、ヤマハタザオ、イヌガラシなどの野生種のほか、アブラナ、ワサビ、ショカッサイスなどの栽培種(アブラナ科)
  • コミスジ・・・タテハチョウ科。日中、よく葉の上にハネを開いて止まる。イボタノキなどの各種花を訪れるほか、路上で吸水したり、腐果・樹液・獣糞に集まる。人の汗もよく吸うらしい。食草は、フジ、クズ、ナンテンハギ、ハリエンジュなど各種マメ科植物。
  • セイヨウタンポポとベニシシジ・・・日中、低い場所を飛翔し、草上や花、地上などによく静止するので撮りやすい。タンポポ類やヘビイチゴ、ヒメジョオンなど各種の花を訪れる。食草は、スイパ、ギシギシ、ヒメスイバなど(タデ科)
  • セイヨウタンポポとニッポンヒゲナガハナバチ・・・春先4~5月に姿を現すハナバチで、オスの触角がとても長い。ただしメスの触角は短い。体中に長い毛が生えており、後脚には花粉を集めるための集粉毛がある。オスは、シロスジヒゲナガハナバチに毛色がよく似ているので識別が難しい。レンゲやフジなどのマメ科の花を好むほか、タンポポや菜の花などにも飛んでくる。
  • キアシナガバチ・・・スズメバチ科、大形のアシナガバチ。女王バチの体長は24~26mmと大きい。樹木の枝や人家の軒先に営巣する。セグロアシナガバチは平地に多いのに対して,本種は低山地に多い傾向がある。働きバチ数は最大でも約50匹。日本産アシナガバチ類のなかでは最も攻撃性および毒性が強い。
  • ハマナスと小型ハナバチ・・・ヒメハナバチ科やコハナバチ科、ムカシハナバチ科など10mm前後の小さなハナバチは、似ている種が多く、写真だけでは種の識別は難しい。故に小型ハナバチにひとまとめして分類していきたい。
  • ハマナスとドクガの幼虫(チョウ目ドクガ科)・・・幼虫(毛虫)は、4月から6月に見られ、体の色は黒色で背中と側面に橙色の斑紋がある。幼虫は秋に孵化してから、落ち葉の下などに集まって越冬する。集団越冬した幼虫は4月頃に活動を再開、数回の脱皮を繰り返し成長する。幼虫は雑食性で、サクラ、コナラ、ハマナス、ウメ、バラ、ツツジなどさまざまな庭木や街路樹の葉を食害する。
  • ハマナスとキアゲハ ・・・日中、ツツジ類やアザミ類など各種の花を訪れる。オスは、山頂部で占有行動をとるため、山頂部によく集まり、草上や地面に静止する。食草は、セリ、ミツバ、シシウド、ニンジン、パセリなど(セリ科)。
  • タニウツギとトラマルハナバチ・・・口が長いので、花の細長い奥にある蜜を吸うことができる。その際、フサフサの毛に多くの花粉がつく。
  • コデマリとコアオハナムグリ・・・春から初夏に多く、キク科植物の花に集まる普通種。体は緑色だが、時に赤銅色、黒色の個体も出現する。本種は、背面全体に毛が生えているので識別できる。
  • コデマリとシロテンハナムグリ・・・ハネの先端は尖らず、白い点がある。様々な花や樹液に集まる。
  • クロハナムグリ・・・ミズキ類やキク科植物の花に集まる。一般的に個体数は少ないが、春先には比較的多くなる。
  • キヒゲアシブトハナアブの交尾 ・・・花は、蜜や花粉を提供するだけでなく、婚活の場でもある。
  • ケナシヤブデマリとアオジョウカイの交尾・・・広葉樹の葉の上で見られる普通種。ハネは、鈍い光沢のある青紫色で、前胸背は両端が黄色く縁取られる。
  • ギシギシとコガタルリハムシ・・・メスは成熟すると腹が大きく膨らむ。道端のギシギシやスイバ、イタドリの葉の上に多い。
  • バラルリツツハムシ ・・・コナラやフジ類などの葉の上で普通に見られる。背面は藍色一色、脚は黒色。
  • オオツマキヘリカメムシの交尾・・・黒褐色で、体の後ろ半分が幅広い。山間部のアザミやキイチゴ類、ノイバラ、イタドリなどの茎で見られ、しばしば群生する。
  • もてないオスのキジ・・・オスは、メスを求めて求愛の雄たけびを何度も繰り返すが、メス一匹寄って来ない。もてないオスの雄たけびは、だんだん寂しく聞こえてくる。
  • スズメの交尾・・・新緑に包まれた森では、柔らかく新鮮な葉を食べるイモムシ類が大発生する。多くの野鳥たちは、そのイモムシ類をエサに子育てをする。
  • ハルジオンとニホンミツバチ
  • ヒメシロコブゾウムシ・・・林縁や草地で見られる普通種。ヤツデやシシウド、タラノキなどの葉に集まる。
  • セモンジンガサハムシ・・・金属光沢があり、背中にX字型の模様がある。
  • オオゴミムシ・・・甲虫目オサムシ科。体長20~24mmと大型、黒色で光沢がある。
  • セイヨウタンポポと小さなバッタの幼虫
  • ニセアカシアとセイヨウミツバチ・・・ 養蜂業の最も重要な蜜源植物の一つで、国産ハチミツの半分ほどは、ニセアカシアから採取されている。「アカシア蜂蜜」として販売されているが、本来のアカシアは別の仲間である。
  • バイカウツギとクロウリハムシ・・・ウリ科植物の葉をよく食べる。林縁や畑、草地などで見られる普通種。花の香りに誘われてやってきたのか、黄色い雄しべの花粉をなめていた。
  • ヒゲナガハバチ・・・触角が長い。食草はスミレ類。ハバチ類は決して人を刺したりしない。刺すのは、植物の組織内に卵を産む時だけだという。何とも平和なハチである。
  • ムシヒキアブがガガンボを捕らえる・・・成虫は他の昆虫を捕らえ、その体液を吸う。
  • コデマリとマルボシヒラタヤドリバエ・・・背中に丸い星のような黒星がある。「ヤドリバエ」の名のとおり、寄生バエである。幼虫は、果樹の重要害虫であるチャバネアオカメムシ類に寄生する。
  • バラとヒゲブトハナムグリ・・・小さなコガネムシの仲間。トナカイの角のような触角が目立つ。
  • コトネアスターとナミハナアブ・・・花の蜜を求めて飛び回るハナアブの代表種。中形でやや太めのハナアブ。胸部は暗褐色で黄褐色の毛がある。腹部は黒色で橙黄色の斑紋があるが、変異が多い。幼虫は、オナガウジとも呼ばれ、下水溝など流れのない水中にすみ、腐植物を食べて育つ。
  • クロクサアリ・・・プラタナスの根元の空洞に巣を作っていたクロクサアリ。ハネがあるのはオスアリだろう。
  • イモムシを運ぶトゲアリ・・・赤い胸についている3対の鋭いトゲは、釣り針状で、指に刺さると引っ掛かってとれない。このトゲは、鳥の捕食に対する防御のためと言われている。
  • トゲアリの巨大な群れ
  • モノサシトンボのオス ・・・腹に目盛り状の環形紋がある。メスは黄褐色。
  • タニウツギとシオヤトンボのメス・・・胸側に2本の黒条がある。メスは黄褐色。オスは成熟すると青白い粉をふく。シオカラトンボに似るが、大きさは一回り小さく、体は太く見える。
  • ムカシヤンマ・・・オニヤンマに似ているが、複眼が離れている点や、止まり方も木の幹にセミのように、ハネを広げたまま張り付いた格好で止まる事が多い。
  • クロイトトンボ・・・水草の多い池に多い。胸部側面と腹部の先が青いイトトンボ。成熟したオスは胸の横が粉をふいたように白くなる
  • アジアイトトンボ・・・アオモンイトトンボと似ているが、腹部の先が青い。アオモンイトトンボの腹部先端は黒い所が広い。
  • クモの巣に捕らえられたアブとカミキリムシ
  • バッタを捕まえたクモ ・・・昆虫は足が6本に対して、クモは8本。さらに触角がない。クモは、糸を使って網を張ることで知られているが、実際にはほぼ半数の種が網を張らずに獲物を捕まえる。下の写真が、その証拠の一つ。
  • 大きなムネアカオオアリを捕まえたクモ・・・昆虫の世界も、ベースは植物に依存し、命の輪でつながっていることを教えてくれる。カメラを小さな昆虫の世界に向けると、日々「命の循環」ドラマが繰り返されていることに気付かされる。
参 考 文 献
  • 「フィールドガイド 日本のチョウ」(日本チョウ類保全協会編、誠文堂新光社)
  • 「ポケット図鑑 日本の昆虫 1400」(槐真史、文一総合出版)
  • 「フィールドガイド 身近な昆虫識別図鑑」(海野和男、誠文堂新光社)
  • 「ヤマケイポケットガイド⑩ 野山の昆虫」(今森光彦、山と渓谷社)
  • 「ハチハンドブック」(藤丸篤夫、文一総合出版)