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2020森の学校 クリプトンの森「ザゼンソウ」の保全活動

 2020年4月21日(火)、クリプトンの森「ザゼンソウ」群落の保全活動が行われた。今回は、新型コロナの影響を受け、一般参加の募集は行わないこととした。その結果、参加者は森林インストラクター会と森の案内人協議会から計7名と、少人数に絞って行われた。道具は、下刈り用の刈払機や下刈りガマ、倒木や枯木を伐るチェーンソーやノコギリ、ナタ、ロープなどを使った。
  • 主催/主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • 共催/秋田県森林インストラクター会、秋田県森の案内人協議会
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 雑木林のザゼンソウ群落(羽後町刈女木湿原)・・・ザゼンソウの群落は、上の写真のような半日陰の湿地に群生している。
  • クリプトンのザゼンソウ・・・スギ植林地内の半日陰の湿地に群生している。手入れの行き届かないスギ林は、生長とともに暗くなり、ザゼンソウの大きな群落やショウジョウバカマなども衰退していた。幸い2年ほど前に間伐が行われ、林内は半日陰の状態を取り戻した。
  • その結果、復活の兆しが見えてきたことから、かつての群落を取り戻すべく、支障となる倒木や枯木、落ち枝の除去、放射状に1mも葉を伸ばすオシダなどの下草刈り、トゲのあるモミジイチゴや触れるとかぶれるヤマウルシなどの低木類の下刈り作業を行った。
  • 目印の設置・・・あらかじめ、守るべきザゼンソウの位置を示す目印(赤いテープを巻いた緑の棒)を100本ほど設置した。この一帯には、ザゼンソウが約200株ほどあることが分かった。
  • 林内の植生・・・ザゼンソウのほかショウジョウバカマ、ウルイ(オオバギボウシ) 、ゼンマイ、アザミ、ヒメアオキ、ニワトコ、ヒイラギナンテン、ホオノキ、ミズキ、ニワトコ、クロモジ、リョウメンシダ、ミチノクホンモンジスゲ、タラノメ、モミジイチゴ、ヤマウルシなどの植物が自生している。
  • ウルイ(オオバギボウシ
  • アザミ
  • ヒメアオキ
  • ミズキ
  • ヒイラギナンテン
  • ニワトコ
  • リョウメンシダ
  • ミチノクホンモンジスゲ
  • ウルイ(オオバギボウシ
  • タラノメ
  • 作業風景①・・・手前に間伐した際の伐根、ウルシなどの低木類が繁茂する奥に赤い目印が守るべきザゼンソウの群落である。その周辺の笹や下草の刈り払い、倒木の除去を行った。 
  • 作業風景②・・・人力による枯木、落ち枝の除去 
  • オシダの群落例・・・落葉広葉樹林の林床を覆い尽くすオシダの群落(上小阿仁村)。これだけ覆い尽くせば、他の植物は皆無に等しくなる。ザゼンソウ群落周辺には、このオシダの芽が数多くあったことから、その芽を下刈りガマで刈り取る作業を重点的に行った。
  • 作業風景③ オシダの下刈り・・・まだ芽を出したばかりだが、根株が一際大きい。その根際を下刈りガマで刈り取る。なお小沼森林インストラクターの下刈りガマは、市販の稲刈りガマとパイプを使って自作したものだが、その切れ味は抜群であった。
  • 上の写真は、太いオシダの根際を刈払機で下刈りしたもの。 
  • 作業風景④・・・倒木の除去。まず倒木の根元をチェーンソーで伐る。
  • 伐った根元にロープを巻き、みんなで力を合わせて除去する。
  • 休憩・・・水分補給しながら、安全かつ効率的な作業の打ち合わせを行う。
  • 再び作業開始・・・大きな緑の葉がザゼンソウで、その周辺の下刈りを行う。
  • 落ち枝やスギの葉、モミジイチゴなどの低木類の中にザゼンソウの群落がある。ザゼンソウを傷つけないように慎重に刈払機で刈り取る。
  • 作業終了後の全景・・・林床がすっきりしたのが一目瞭然。ご苦労様でした。
  • ザゼンソウの受粉・・・ザゼンソウは、自家受粉ができないことから、昆虫に花粉を運んでもらわなければ子孫を残すことができない。しかし、まだ寒さが厳しい時期は昆虫も少ない。その少ない昆虫を独占し受粉効率を上げる必要がある。そのためザゼンソウは、開花すると、悪臭を放つだけでなく、真ん中の部分の温度が約25℃まで上昇させるという凄い技を使う。その悪臭と熱によって花粉を媒介するハエ類をおびき寄せる戦略をとっていると考えられている。実際、苞の中の肉穂花序周辺に小さなハエが飛んでいた。
  • 結実した種子は、野ネズミによって食害されるが、一部は野ネズミの貯食行為によって運ばれる。さらにその一部が被食を逃れて発芽することが出来るという。そうしたハエによる受粉と野ネズミによる種子散布によって、ザゼンソウ群落の完全復活を期待したい。
  • スギ人工林内に自生していたザゼンソウの群落は、間伐もすることなく放置した結果、林内は暗く荒れ放題になっていた。2年ほど前の間伐によって、林内は格段に明るくなったことでザゼンソウは息を吹き返し、復活の期待が高まった。今回の保全活動は、その復活の後押しをする大切な作業であった。今後もこうした保全活動を通して、この貴重な群落を維持していきたいと思う。