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森の学校 写真で学ぶ山野草講座

 2021年1月16日(土)、森の学校「写真で学ぶ山野草講座」が秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンを会場に開催された。参加者は50名。講師は、秋田花の会会長 柳原 清さん。身近な里山などで見られる山野草を早春から咲く順番に従って100種を紹介したほか、海岸に咲く花25種、スミレの色々36種、合計161種を紹介。それぞれの花について、生息環境から花の特徴、見分け方、名前の由来、見られる場所、盗掘によって見られなくなった花などについて詳細に解説・・・新型コロナウイルス感染症の猛威と記録的な豪雪に見舞われた時だからこそ、自然豊かな秋田の美しい花々の写真に、たくさんの元気をいただいた。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/秋田県森の案内人協議会
  • 講師・・・秋田花の会会長 柳原 清さん
  • 秋田花の会・・・昭和62年10月16日設立。会員数63人(令和2年)。
  • 会の目的・・・自然の花を愛し、趣味を通じて自然に親しみ、自然の素晴らしさを大切にし、豊かな秋田の自然を守り育てて行くこと。 
  • 花の写真展・・・設立当初から毎年開催。会場に訪れる人は、千~2千人程度。
  • 秋田の山野草300選・・・秋田花の会設立15周年記念事業として高山植物を中心に発刊。
  • 秋田の山野草Ⅱ300選・・・20周年記念事業として、海岸や里山等の花、珍しい花を中心に掲載。いずれも完売で在庫なし。
  • 花の写真を撮る場合の留意点は、上記のとおり。 
  • 早春のブナ林に咲くイワウチワ・・・イワウチワの背丈は低い。「花と同じ目線」になるには、虫と同じく、斜面に這いつくばり、ローアングルで撮影するほかない。「斜光~逆光」で撮影すると、花に立体感が出ると同時に、花びらが透過光で一層輝いて見える。さらに花にできるだけ近づき、広角レンズで見上げるように撮影すると、イワウチワの「生息環境」を写すことができる。
  • このたった一枚の写真から、ブナ林の葉がまだ開かず、林床一面に春の陽射しが降り注いでいることが分かる。森が新緑に包まれると、はかなく消えてしまう。
  • フクジュソウ(キンポウゲ科)福寿草・・・男鹿市門前では、3月一杯楽しめる。
  • アズマイチゲ(キンポウゲ科)東一華(東一花)、キクザキイチゲ(キンポウゲ科)菊咲一華(菊咲一花)
  • 見分け方・・・ポイントは葉。アズマイチゲは、葉がだらっとした感じで葉先が丸い。キクザキイチゲの葉は、細かい切れ込みがある。 
  • ショウジョウバカマ(ユリ科)猩々袴・・・里山から高山まで広く分布。白花もある。 
  • エゾエンゴサク(ケシ科)蝦夷延胡索、ヤマエンゴサク(ケシ科)山延胡索
  • 見分け方・・・ぱっと見た目でも葉の形が違う。エゾエンゴサクは花の付け根にある苞は切れ込みがないが、ヤマエンゴサクの苞は切れ込む。
  • ミチノクエンゴサク(ケシ科)陸奥延胡索・・・エゾエンゴサクに比べ、細長く小型で繊細。
  • ムラサキケマン(ケシ科)紫華鬘・・・花が紫色のケマン。
  • スハマソウ(キンポウゲ科)洲浜草、オオミスミソウ(キンポウゲ科)大三角草
  • 全体に大型のオオミスミソウは山形、岩手で見られる。県内に見られるのは、大抵スハマソウ(絶滅危惧ⅠB類)である。
  • カタクリ(ユリ科)片栗・・・人為的に管理された西木村のカタクリが有名だが、玉川戸瀬パークでは、5月のGW明けに、自然状態のカタクリ群落を観賞できる。運が良ければ、白いカタクリにも会うことができる。
  • ヒメホテイラン(ラン科)姫布袋蘭(白神山地)・・・小さくてなかなか見ることができないラン。
  • ミヤマカタバミ(カタバミ科)深山傍食・・・白花が一般的だが、赤い品種はベニバナとも呼ばれている。 
  • エゾノリュウキンカ(キンポウゲ科)蝦夷立金花(戸瀬パーク)
  • クリンソウ(サクラソウ科)九輪草・・・戸瀬パークの水路脇に生えている。旧玉川集落の庭に植えていたものが野生化したものかも知れない。
  • オオバナノエンレイソウ(ユリ科)大花の延齢草・・・花の中心が赤くなっている。刺巻湿原では、ミズバショウが終わった後、その奥に群落が見られる。
  • シロバナエンレイソウ(ミヤマエンレイソウ)(ユリ科)白花(深山)延齢草・・・花の中心は赤くない。主に県北地区に多く見られる。
  • ニリンソウとトリカブト・・・左上写真のとおり、同じ所に混生していて判別が難しい。掘って根を比較すれば、違いは歴然。ニリンソウは食用として利用する地域もあるが、素人は食べない方が良い。
  • シラネアオイ(シラネアオイ科)白根葵・・・花が大きく美しいことから人気が高い。稀に白花もあるが、道の駅などで高価な値段で販売されるため、盗掘が多い。
  • アズマギク(キク科)東菊・・・寒風山の草原に咲くアズマイチゲ。群生することが多く、雲一つない青空と薄紫色の花の群れの対比が美しい。この写真から、花の撮影は好天がベストであることが分かる。ただし、光の反射を除去する偏光フィルターは必須である。
  • フデリンドウ(リンドウ科)筆竜胆・・・春(5月)に咲くリンドウ。よく似たハルリンドウは、秋田で確認されていない。
  • オキナグサ(キンポウゲ科)翁草(絶滅危惧ⅠB類)・・・盗掘で、なかなか見られなくなった。手前の花がツボミだったので、後日撮影に行くと、花はなく、穴が開いていた。
  • オオサクラソウ(サクラソウ科)大桜草(絶滅危惧ⅠA類)・・・美しい花だが、盗掘で大きな群落は見られなくなった。男鹿本山では、数が少なくなったことから、柵が作られ、カメラを下げていると監視員が後をつけてくるという。
  • トウゴクサイシン(ウマノスズクサ科)東国細辛・・・かつてはウスバサイシンとされてきたが、現在はトウゴクサイシン。ガクが尖っているのが特徴。春の女神・ヒメギフチョウの食草として有名。
  • クマガイソウ(ラン科)熊谷草(絶滅危惧ⅠB類)・・・人気が高く、盗掘例が多い。
  • サルメンエビネ(ラン科)猿面海老根(絶滅危惧ⅠB類) 、ナツエビネ(ラン科)夏海老根(絶滅危惧ⅠA類)
  • トキソウ(ラン科)朱鷺草 白花
  • トガクシショウマ(メギ科)戸隠升麻(絶滅危惧ⅠB類)・・・沢沿いに生えているので、山菜採りや渓流釣りの人たちは見る機会が多いだろう。
  • フガクスズムシソウ(ラン科)富岳鈴虫草(絶滅危惧ⅠB類)・・・富士山で初めて発見された希少種。ブナの枯木に生えた着生ラン。
  • コアニチドリ(ラン科)小阿仁千鳥(絶滅危惧Ⅱ類)・・・上小阿仁村で発見され、小阿仁川にちなんで命名された。
  • 葉緑素をもたない花・・・ギンリョウソウ(イチヤクソウ科)銀竜草、ミヤマツチトリモチ(ツチトリモチ科)深山土鳥黐(絶滅危惧ⅠA類)
  • 葉緑素をもたない花・・・ナンバンギセル(ハマウツボ科)南蛮煙管、ショウキラン(ラン科)鍾馗蘭
  • ニッコウキスゲ(ユリ科)日光黄菅・・・高山だけでなく、海岸部でも見られる。
  • イワタバコ(イワタバコ科)岩煙草(絶滅危惧ⅠB類)、フシグロセンノウ(ナデシコ科)節黒仙翁(絶滅危惧ⅠA類)
  • アケボノソウ(リンドウ科)曙草・・・花をアップで撮ると美しい。
  • オオシラヒゲソウ(ユキノシタ科)大白鬚草(絶滅危惧ⅠA類)
  • センブリ(リンドウ科)千振、高山型・タカネセンブリ(リンドウ科)高嶺千振(絶滅危惧ⅠA類)
  • キッコウハグマ(キク科)亀甲白熊・・・花全体あるいは一部が開かない「閉鎖花」になると、自家受粉を行い、種をつくるという。
  • ウミミドリ(サクラソウ科)海緑、ナミキソウ(シソ科)波来草・・・波打ち際に咲く。
  • ハマヒルガオ(ヒルガオ科)浜昼顔・・・浜辺に咲くヒルガオ。一日花だが、群生し、次々に咲くので美しい。
  • エゾノコギリソウ(キク科)蝦夷鋸草(絶滅危惧ⅠA類) 、ムシャリンドウ(シソ科)武佐竜胆(絶滅危惧ⅠA類)
  • ハマナデシコ(ナデシコ科)浜撫子、カワラナデシコ(ナデシコ科)河原撫子
  • エゾオグルマ(キク科)蝦夷小車(絶滅危惧ⅠA類)・・・北海道のほか、本州では青森県、岩手県、秋田県、新潟県で確認されている希少種。 
  • コモチレンゲ(ベンケイソウ科)子持蓮華(絶滅危惧Ⅱ類)・・・葉腋から出る走出枝の先に子株を付けるからコモチ。イワレンゲの変種で、北海道、東北に生える日本固有種。アオノイワレンゲとする学者もいる。
  • 第34回「花の写真展」・・・秋田花の会恒例の写真展は、2021年2月19日(金)~22日(月)、アトリオン2階展示室で開催します。 マスク着用の上、一足早い春を楽しみに足を運んでみてはいかがでしょうか。
参 考 文 献
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「秋田の山野草Ⅱ300選」(秋田花の会)
  • 配布資料「写真で学ぶ『山野草』」(秋田花の会会長 柳原 清)