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森の学校2021 秋田駒ヶ岳トレッキング

 2021年6月15日(火)、森の学校「秋田駒ヶ岳トレッキング 春の息吹を感じよう」が花の百名山・秋田駒ヶ岳で開催された。参加者は22名。今冬は大雪だったが、春から気温が高い日が続いたことから、例年より雪解けのスピードが速く、残雪が圧倒的に少なかった。それだけ春一番に咲き誇る高山植物の種類が多かった。さらに一日好天に恵まれ、春の息吹と一斉に咲き誇る山上のお花畑にたくさんの元気をもらった。
  • 主催/秋田県森の案内人協議会
  • 協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会 
  • 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • 秋田駒ヶ岳マップ・・・「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(編集/南八幡平地区パーク・ボランティア ホシガラスの会)より抜粋
  • コース・・・秋田駒ケ岳八合目(1,310m)片倉岳展望台(1,456m)阿弥陀池(1,530m)横岳(1,583m)焼森(1,551m)シャクナゲコース秋田駒ケ岳八合目(1,310m)  
  • 新道コースをゆく
  • ハクサンチドリ・・・駒ケ岳では群生は見られず、意外に個体数は少ないように思う。
  • 岩場に咲くイワウメ・・・まだ開花初期だが、美しい。草ではなく常緑小低木。和名は、岩場に生えて梅の花に似た花をつけることから。
  • イワカガミ・・・全体に大きく、花の数が3から10個と多い。花の色は淡紅色で、葉の鋸歯は20~30個と多いのが特徴。
  • ヒメイワカガミ・・・葉に角ばった大きい鋸歯があり、白色の花の数が少ないのが特徴。
  • 高山に咲くムラサキヤシオツツジ・・・一般に低山の沢沿いやブナ帯に咲くものよりも色が濃く、新緑によく映えて鮮やかな印象を与える。 
  • ミネザクラ(タカネザクラ)・・・サクラの仲間では最も標高の高い所に生えるのが和名の由来。今年は雪解けが早い分、ミネザクラの花はほとんど散って晩期を迎えていた。
  • コヨウラクツツジ・・・ツツジ科の中では最も花が地味で、小さな赤いリンゴの形をした壺状の花を下向きにつける。一見、果実のように見える。 
  • ベニバナイチゴ・・・今年は暖かいせいか、花のつきがすこふる良い。赤い果実が相当できるであろう。イチゴ類にはトゲがあるのが一般的だが、本種にはトゲがないのが特徴。
  • ミヤマハンノキの雄花、雌花・・・垂れ下がっている大きな方が雄花。枝先に立ち上がっている小さな方が雌花。
  • ミヤマハンノキの若葉にいたオトシブミ・・・初夏の頃、若葉を切って巻き、揺籃(ようらん)と呼ばれる円筒形の筒を器用に作る。その途中で卵を産み、幼虫は内部の葉を食べて育つ。ナミオトシブミは、ミヤマハンノキに多い。
  • マイヅルソウ
  • スダヤクシュ
  • オオバキスミレ
  • ノウゴウイチゴ
  • ツマトリソウ
  • イワテハタザオ 
  • ミヤマスミレ 
  • ミツバオウレン
  • ミネカエデとナンゴクミネカエデの見分け方・・・ミネカエデ(上左)の葉の先は、ナンゴクミネカエデ(上右)のように尾状に長く伸びない。ナンゴクミネカエデの雄花は、花弁とガク片の幅が広く、隙間がないのに対して、ミネカエデは細く隙間がある。
  • 黄葉、紅葉の違い・・・ミネカエデは黄色に黄葉するが、ナンゴクミネカエデは紅色に紅葉する。
  • ハイマツ
  • ナナカマド
  • 雪解けと同時に咲くショウジョウバカマ・・・雪田が消えるに従い次々と咲き出し、線香花火のような鮮やかな色でよく目立つ。春の雪解けを待って咲くことから、ユキワリソウとも呼ばれている。
  • 片倉岳展望台(赤土の広場、1,456m)・・・まるで極楽浄土の世界に入ったかのように、眼下に雲海が広がる。
  • コメバツガザクラ・・・葉が針葉樹のツガに、花が白から紅白色でサクラの花色に似ていて、小さな葉を米粒に見立てて、コメバツガザクラと呼ばれている。
  • キバナノコマノツメ・・・和名のコマノツメは、葉の形が子馬の足のヒヅメに似ていることから。焼森や大焼砂の砂礫地に生えているタカネスミレに似ている。見分け方は、本種は葉が薄く光沢がないが、タカネスミレは葉が厚く光沢があり、さらに葉表が強く巻き込みロート状になるものが多いので区別できる。
  • ミヤマダイコンソウ・・・高山に生え、葉がダイコンの葉に似ていることから、「深山大根草」と書く。
  • お花畑・・・阿弥陀池の手前・開けた草原から木道となる。一帯は、通称「お花畑」と呼ばれている。その名のとおり、秋田駒ヶ岳に自生する高山植物の8割がここで見られ、一番の見どころと言われている。今回は、ヒナザクラやミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、ミネズオウ、開花初期のチングルマなどが咲き乱れ、まさに山上の楽園であった。
  • チングルマと昆虫・・・チングルマは、晴れると白い花びらを目一杯広げ、太陽を追いかけるようにぐる~りと回転する。そのおわん型の花びらは、こうして光を集め、花の中を温める。その温もりを求めて、多くの昆虫たちが集まってくる。こうして虫たちにたくさん花粉を運んでもらうのだ。 
  • ヒナザクラの群落・・・多雪地帯を代表する高山植物で、雪が解けた所から順に花を咲かせ、高山に遅い春の訪れを告げる。その雪解け後の草地を白く染め上げる大きな群落は、見惚れるほど美しい。
  • ミヤマキンバイの大群落・・・花は鮮やかな黄金色で、大きな群落をつくる。
  • ミネズオウ(常緑小低木)・・・茎は細く地を這い、マット状に地面を覆い、枝先に赤みを帯びた白色の花を咲かせる。
  • ミヤマダイコンソウの花にやってきたバッタの赤ちゃん
  • ミヤマキンバイの蜜を吸うハナアブ
  • ゾウムシ・・・和名は、ゾウの鼻のように口器が長いことから。葉を食べるもの、実を食べるもの、朽木や枯れ木に生息するものなど様々なゾウムシがいる。
  • 男岳~馬の瀬分岐点
  • ミヤマキンバイと活動を続ける火山・女岳(めだけ、1,512m)・・・噴火警戒レベル1。
  • 男女岳(おなめだけ、1,637m)を望む・・・駒ケ岳という名の山頂はなく、最も標高の高い男女岳、荒々しい山容が麓の人々に信仰を集めた男岳、今も火山活動を続ける女岳などからなる山全体をまとめて秋田駒ケ岳と呼んでいる。
  • 阿弥陀池で昼食後、横岳に向かう。
  • エンレイソウ
  • ミヤマリンドウ
  • ハリブキ・・・葉がフキに似て大きく、全身に針があるウコギ科の落葉低木。 
  • 横岳分岐から、活火山・女岳と雪渓が残るムーミン谷を望む。 
  • 秋田駒ヶ岳が花の名峰として名高い理由・・・多くの旧火口やカルデラ、外輪山などの変化のある火山地形であること。そして多量の降雪により多くの残雪が遅くまで残っているので、乾生、湿生の両植物が共に豊富に繁殖できる自然環境が整っていること。乾生植物の代表は、コマクサとタカネスミレ、湿生(雪田)植物の代表はチングルマとヒナザクラである。
  • 横岳(1,583m)に向かう。 
  • 焼森に向かう・・・高山植物保護柵のある火山砂礫帯は、高山植物の中でも人気ナンバーワンのコマクサ群生地帯。 
  • コマクサの花のツボミ・・・コマクサは、同じ砂礫地にタカネスミレと棲み分けをしながら生育し、少し遅れてピンクの花を付ける。見ごろは7月下旬頃。 
  • タカネスミレ・・・コマクサが咲く前に、火山砂礫地を一面黄色に染めるタカネスミレ。葉の表側が内側に強く巻き込み、ロート状になっているので、葉の形でキバナノコマノツメと区別できる。
  • 焼森からシャクナゲコースを下る。 
  • コバイケイソウ 
  • オオカメノキ(ムシカリ)・・・純白の花が新緑に映え、良く目立つ。  
  • ツバメオモト
  • イワテハタザオ 
  • 人気のシラネアオイ・・・雪渓や雪田の傍らに生え、日本が世界に誇れる日本特産種。 
  • サンカヨウ・・・カニコウモリのような大小二枚の葉と清楚な白花を数個つける。朝露や雨に濡れると、花は徐々に半透明になり美しい。小さい範囲で群生し、うす暗い森では目立つ。 

秋田駒ヶ岳で主にみられる花

  • 6月・・・ヒメイチゲ、シラネアオイ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンバイ、タカネザクラ、キバナノコマノツメ、ミツバオウレン、イワウメ、タカネスミレ、イワカガミ、ミネズオウ、ムラサキヤシオ、ヒナザクラ、ツバメオモト、ハクサンチドリ、コマクサ、チングルマ
  • 7月・・・コミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、コマクサ、ミヤマダイコンソウ、チングルマ、ミヤマキンバイ、マルバシモツケ、ハクサンフウロ、キバナノコマノツメ、タカネスミレ、イワカガミ、ミネズオウ、アオノツガザクラ、ウラジロヨウラク、ハクサンシャクナゲ、エゾツツジ、コケモモ、ヒナザクラ、イワイチョウ、エゾシオガマ、イワブクロ、ムシトリスミレ、ウサギギク、ミヤマウスユキソウ、トウゲブキ、ニッコウキスゲ、コバイケイソウ、ハクサンチドリ、オノエラン、ベニバナイチゴ、ヨツバシオガマ
  • 8月・・・オヤマソバ、オクトリカブト、コミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、コマクサ、ウメバチソウ、ハクサンフウロ、アオノツガザクラ、ミヤマリンドウ、エソオヤマリンドウハクサンシャジン、イワブクロ、ウサギギク、ウゴアザミ、ミヤマウスユキソウ、トウゲブキ、ニッコウキスゲ、オノエラン
  • 9月・・・ミヤマリンドウ、エゾオヤマリンドウ、ハクサンシャジン (「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」より抜粋)
参 考 文 献 
  • 「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(編集/南八幡平地区パーク・ボランティア ホシガラスの会)
  • 「フラワートレッキング 秋田駒ヶ岳」(日野東・葛西英明、無明舎出版)
  • 「身近な昆虫識別図鑑」(海野和男、誠文堂新光社)