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森林インストラクターと歩く百花繚乱・真人山一周ツアー

 2023年4月30日(日)、森の学校「森林インストラクターと歩く百花繚乱・真人山一周ツアー」が横手市増田町真人山で開催された。参加者は30名。さくら名所100選・真人公園を起点に九十九折りの登山道沿いを登り、途中最も眺望が良い三吉神社を経て標高390mの真人山山頂へ。帰路は、北に向かって下り、途中義経三貫桜を経て起点の真人公園に至る一周ツアー。萌黄色の新緑と満開のカスミザクラ、桃の花、登山道沿いを彩るキバナイカリソウやナガハシスミレ、カキドオシなど数えきれないほどの草花を観察しながら、春の里山を満喫した。
  • 共催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン、秋田県森林インストラクター会
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 講師・・・森林インストラクターの酒井さん、次田さん、佐々木さん、花田さんの4名 
  • 真人山一周コース・・・真人公園→三吉神社(標高350m)→真人山(標高390m)→倉狩沼→義経三貫桜→真人公園 
  • さくら名所100選・真人公園・・・秋田のさくらの名所100選は、仙北市角館町桧木内川堤・武家屋敷、秋田市千秋公園、横手市増田町真人公園の3つ。例年なら真人公園の桜約2千本が咲き競う絶景を鑑賞できるのだが、今年は既に花が終わり、青葉になっていた、残念! 
  • 「リンゴの唄」の記念碑・・・昭和を代表するヒット曲「リンゴの唄」は戦後作成された第一号の映画「そよかぜ」の主題歌。その映画のロケが当地で行われ、主演の並木路子さんが歌って大ヒットした。ちなみに歌詞は、「赤いリンゴに口びるよせて/だまってみている青い空/リンゴはなんにも言わないけれど/リンゴの気持ちはよくわかる/リンゴ可愛やかわいやリンゴ」 
  • 真人山登山口 
  • 真人三十三観音・・・1863年、天下泰平・国土の平和などを願って建立された。明治の廃仏毀釈の影響を受けて散逸したが、その後、満福寺住職をはじめ有志の人々によって再建されたという。 
  • 九十九折りの登山道沿いをゆっくり登りながら、森から聞こえる野鳥の名前、多種多様な植物の名前から見分け方、特徴などを学んだ。 
  • 観察した野鳥・・・シジュウカラ、キビタキ、コガラ、メジロ、ヒヨドリなど。
  • キバナイカリソウ・・・名前の由来は、花の形が船の錨(いかり)に似ていることと、花の色が淡い黄色だからキバナイカリソウ。若芽、若葉を食べる。花を野菜サラダに散らし入れると、さわやかで美しい。地上部を乾燥させた薬草は、滋養強壮薬として用いられる。 
  • 里山に自生するサクラで、一番早く咲くオクチョウジザクラ・・・花を横から見ると、開き方が漢字の「丁」のように見えることから、「丁字桜」。その変種で、日本海側の多雪地帯・奥地に自生することから、「奥丁字桜」と書く。 
  • 参考:ソメイヨシノ・・・江戸時代後期に開発され、美しく生育が早いことから、たちまち全国に広まった。この品種は、オオシマザクラとエドヒガンの天然交配による自然雑種で生まれたといわれている。オオシマザクラは、緑色の新葉の展開と同時に大輪の花を比較的多く咲かせる特徴をもつ。エドヒガンは、葉が出る前に淡い紅色の花を咲かせる。この両者の特徴を併せ持つ人気のソメイヨシノが生まれた。
  • 名前の由来・・・江戸時代末期から明治初期に染井村に集落を作っていた造園師や植木職人達によって育成された。吉野山に多いヤマザクラと混同される恐れがあったことから、染井村の名を取り「染井吉野」と命名された。 
  • ナガハシスミレ(別名テングスミレ)、ウゴツクバネウツギ
  • 多雪地帯に適応したエゾユズリハ・・・ユズリハの変種で、多雪地帯の日本海側の山地に多く自生する。多雪地帯では高さが1mにも満たないほど低く、下部が地を這うなど、多雪地帯に適応しているのが分かる。ユキツバキ、ヒメアオキなどの日本海要素の常緑地這植物とともに、ブナ林などの林床によくみられる。
  • 春になって若葉がのびると、古い葉は「若葉に譲る」ように散ることことから、親が成長した子にあとを譲るのにたとえて、家系が途切れることなく続く象徴とされ、めでたい正月の飾り(門松、しめ飾り、鏡餅)に使われている。
  • オオバクロモジ・・・幹や枝が緑色をし、枝を折ると芳香があることから、和菓子の楊枝に欠かせない樹木である。芳香、殺菌力、丈夫さなど、他の木には代えがたい価値がある。葉は枝先に集中し、新しい葉が展開すると同時に黄緑色の小さな花を10個ほどつける。  
  • 山菜として人気急上昇のコシアブラ・・・若芽は、タラノメと並び人気の山菜だが、秋田ではほとんど食べなかった。しかし、最近は山菜ブームに乗ってポストタラノメ的存在になりつつある。幹がブナのように白く、枝の先に5枚の葉を掌のようにつけているのが特徴。タラノキのようにトゲがないのも人気の秘密かもしれない。
  • ハリギリ・・・枝にトゲがあるが、同じウコギ科のタラノキ同様食用になる。ただし、タラノキに比べるとアクが強く、味が劣ることから、アクダラ、イヌダラと呼ぶ地方もある。
  • 上左がタムシバ、上右がコブシ
  • タムシバとコブシの見分け方・・・花の下に葉があるかどうかで見分ける。タムシバの花の下には、葉がつかないが、コブシは花の下に小さな葉が一枚ついているのが見分け方のポイント。 
  • ウリハダカエデ・・・緑色のスベスベした樹皮は、マクワウリの実に似ているのが最大の特徴。山地のやや湿り気のある雑木林などに生育する雌雄異株の落葉高木。新芽と同時に細長い総状花序を垂らし、淡い黄緑色の小さな花を咲かせる。株が育つとオスからメスに、環境が悪化した場合もメスに性転換する不思議な特性をもっている。高さ8~10m。
  • オオカメノキ・・・早春、アジサイに似た白い装飾花をたくさんつけ、北国の山に春がきたことを告げる。亀の甲羅のような大きな丸い葉、夏から秋にかけて実る赤い果実は、柄まで赤いのでよく目立つ。紅葉も美しい。山の鳥たちは、秋の赤い実を食べ、カモシカは冬芽を好む。
  • 途中最も眺望が良い三吉神社(標高350m)・・・田んぼが広がる横手盆地から遠くは鳥海山まで見える。特に田んぼに水を張った時と黄金色に実った時期は、最高の絶景を拝むことができる。
  • ユキツバキ・・・秋田県内では主に県南地方に自生し、北限のユキツバキとして知られている。高さは1~2mと低い。
  • ユキツバキはなぜ低木か・・・雪の下に潜って、寒さや乾燥から体を守るためである。だからユキツバキは、小さくなる方向に進化したと言われている。雪の重みで折れないよう、幹がしなやかである。樹形は垂直に立ち上がるのではなく、枝が地を這うように伸びて、ほふく型の樹形をしている。さらに、種子だけでなく、地面に押し付けられた枝が、地面についた点から根を出して、いわばクローンによる繁殖も行っている。空間を巧みに棲み分けて進化したとはいえ、生命力の凄さに驚かされる。
  • 真人山山頂(標高390m)
  • 小雨が降る中、車が通れる広い道を北方向に下る。
  • マルバマンサクの虫こぶ・・・マンサクの芽につくイガイガした形は、実ではなく虫こぶ。正式名称はマンサクメイガフシというアブラムシが作った虫こぶ。
  • 隠れた名所・ミズバショウ群落
  • 山菜として人気が高いタラの芽、ミチノクホンモンジスゲ(右上)、ミツバアケビの花(右下)
  • ウワミズザクラ・・・白く小さな花が穂状につき、とてもサクラの仲間とは思えないが、これもサクラの仲間。
  • ニワトコ、オオウバユリ 
  • ナツトウダイ
  • カタクリ、ワラビ
  • オニグルミ、カタツムリ
  • シュンランツボスミレ(右上)、カキドオシ(右下)
  • 倉狩沼・・・新緑に染まったため池も美しい
  • 満開の霞桜(カスミザクラ)・・・北海道から九州まで分布するが、日本海側や冷涼な地域に多い傾向がある。ソメイヨシノより1週間以上遅れて、白い花と緑~茶色の若葉が同時に開く。新緑の中にたなびく霞のように咲く。一見ヤマザクラに似ているが、葉の裏に白味がなく花期も遅く、幹の色も赤褐色ではなく灰褐色。
  • 義経三貫桜伝説・・・昔、真人山から仙北街道に通ずる古道周辺は、桜の神域であった。1187年、頼朝に追われた義経が平泉に亡命する。その際、加賀の国安宅の関を逃れ、由利の山越えをして、東成瀬村手倉~仙北街道~平泉に向かう途中、この古道にさしかかった所で一休みした。武蔵坊弁慶は、崖上に見事なオオヤマザクラを見つけ、大きめの枝をもぎ取った。そこへヨボヨボのお年寄りが現れ、「この桜は私が自分の身と同じように大事にしているもの、何と心無い人がいるのだろう」と悲しまれた。義経一行は深く謝り、三貫の銀を払って許しを乞い、通行させてもらったと伝えられている。現在の桜は、昭和63年4月に、この義経三貫桜伝説をもとに植えられたものである。
  • 参考:大山桜(オオヤマザクラ)・・・北海道、本州、四国に分布。特に北海道、東北を代表する野生のサクラである。花や同時に開く若葉は、赤みが強いのでベニヤマザクラとも呼ばれている。枝は上向きに伸び上がる傾向が強い。
  • 三吉神社にて記念撮影