森の学校2024 寒風山カルデラトレッキング
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2024年5月14日(火)、森の学校「寒風山カルデラトレッキング」が男鹿市寒風山で開催された。参加者は25名。寒風山は低山だが、火山の箱庭や風穴、第二火口にそびえる姫ヶ岳など起伏に富んだコースを歩き、雲一つない青空と360度の絶景や、多様な草花、昆虫、野鳥のさえずりなどを楽しむカルデラトレッキングを満喫した。緩斜面の草原に広がるアズマギクの大群落を借景に昼食をいただいた後、午後は、寒風山ジオサイト関連の滝の頭湧水とスギの巨木のパワーで、疲れた心と体を癒す森林セラピー体験を行った。
- 主催/秋田県森の案内人協議会
- 協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会
- 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
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- コース・・・妻恋峠駐車場→風穴/小噴火口まわり→蛇越長根分岐点→姫が岳→妻恋峠駐車場→昼食→滝の頭湧水/森林セラピー体験
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- 寒風山は、標高約355mの火山である。火山活動は今から3万年以上前に始まり、噴火のたびに溶岩が積み重なり、次第に高く大きくなった安山岩の上を薄い表土と芝生が覆い現在の形になった。この岩は「男鹿石」とも呼ばれ、護岸や庭石、墓石などに幅広く用いられている。
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- アズマギク・・・秋田県RDB準絶滅危惧種
- ウマノアシガタ・・・・・・ウマノアシガタは、葉の形が馬の足形に似ているからといわれるが、むしろ鳥の足形に似ている。「鳥」と「馬」の文字を間違えて記したことから、「馬の足形」になったという説がある。
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- ササダケの花・・・イネ科だから花は穂状である。60年に一度しか咲かないという。それだけに、この花を観察できるのは珍しい。花が咲く時は、群落全体が咲き、結実後、枯死する。その後10年ほど経つと再び生えてくるという。
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- ホオノキ・・・枝先に大きな葉を車輪状に茂らせ、その葉の大きさは30~40cmと国内最大級。
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- ヤマウルシ・・・春の新葉は、枝先に集まって立ち上がり、葉柄、葉軸が赤褐色で目立つ。
- ハリギリ・・・キリに似ていて、若い幹や枝にトゲがあるのが名前の由来。
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- サルトリイバラ・・・黄緑色の小さな花を多数つける。ルリタテハの食草。
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- ツタウルシ・・・樹液にかぶれ成分を含み、その威力はウルシ科の中で最強なので注意。
- ウワミズザクラ・・・コップを洗う細長いブラシのような白花を咲かせる。ソメイヨシノもヤマザクラも花を落とした頃に開花する異色のサクラである。
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- ウツギ・・・円錐花序を多数出し、鐘形の白い花が密に垂れ下がって咲く。茎を切ると中が中空だから「空木(ウツギ)」と書く。小学校唱歌「夏は来ぬ」の冒頭に「卯の花におう垣根に・・・」と歌われている「卯の花」は、ウツギの別名である。
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- ミツバアケビ・・・花はチョコレート色で、大きいのが雌花、小さいのが雄花でブドウの房のように垂れ下がる。雌雄同株だが、自家受粉はしないので、虫に頼る。
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- ヤマドリゼンマイ・・・ゼンマイが危険な岩場に多いのに対し、ヤマドリゼンマイは里山の明るく開けた湿原などに群生する。市場で売られているのは、ゼンマイよりヤマドリゼンマイの方が多いと言われている。
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- 風穴・・・底の窪地を回り込むように散策路を下っていくと、その行き止まりに風穴がある。重なった岩の下の小さな隙間から、静かにゆっくりと涼しい風が絶えず吹き出している。
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- 見事な花を咲かせたヒロハヘビノボラズ・・・風穴の向かいに鮮やかな黄花を多数吊り下げた樹木があった。名前は「ヒロハヘビノボラズ」。幹や茎に葉の変形した鋭いトゲがあるので、蛇も登れないとの意味だという。
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- カンボク・・・花はまだツボミだが、開くとオオカメノキやヤブデマリに似ている。本種の見分け方は、葉の先が大きく3つに裂けていること。
- スミレ
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- ミツバツチグリとキジムシロの見分け方・・・ミツバツチグリの葉は3枚だが、キジムシロの葉は奇数羽状複葉で5~9枚と多い。
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- タニウツギ・・・明るいところを好むパイオニア植物で、道路際や雪崩斜面、時に亜高山から高山帯まで広く分布している。小枝の先から淡紅色~紅色の美しい花をたくさん咲かせる。花の形はラッパ形で細長い。かつては、若葉を蒸してから乾燥保存し、飢饉の際の救荒植物として利用された。雪国の美しい花だが、火事を呼ぶとも言われ、家に持ち込んだり、庭に植えることを忌み嫌う風習がある。
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- 大噴火コースの尾根を歩き、360度の絶景を楽しみながら蛇越長根分岐点へ
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- 蛇越長根分岐点
- 参考:蛇越長根・・・寒風山の2つのピークのうちの1つ、姫ヶ岳(標高337m)の火口は古玉の池と呼ばれ、大蛇にまつわる伝説がある。昔、火口には水が溜まっており、望まない婚姻を強いられたお玉という娘がこの池に身を投げ、池は玉の池と呼ばれるようになった。お玉は大蛇に姿を変え、この池は徐々に干上がってしまったため、新玉の池に移動した。その時通った峰が蛇越長根と呼ばれている。
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- ホタルカズラ・・・花は鮮やかな青紫色で、裂片に白い5本の稜がある。和名は、草むらの中に点々とつける花の色をホタルの光にたとえたことに由来する。その名のとおり、心奪われる美しさがある。
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- ヒョウタンボク・・・ 花が白色と黄色に変わり、白色と黄色の花が同時に見られることから別名キンギンボク(金銀木)とも呼ばれている。液果は、2個がヒョウタン形になるのが名前の由来。赤く熟すと美しいが、猛毒なので注意。
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- 姫ヶ岳山頂(337m)・・・天候にも恵まれ、鳥海山もはっきり見えた。
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- 姫ヶ岳山頂の石川理紀之助の歌碑・・・「男鹿島 うちわたす雄がの島山雲はれて ことのみづうみたつ浪もなし」
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- ウラシマソウ・・・肉穂花序の先端の付属体は、釣り糸状に長く伸びるのが特徴。その花の形が浦島太郎が釣り糸を垂らしている様子に似ていることから、浦島草。
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- ヒメハギ・・・花がハギに似ており、全体がついさいことからヒメハギ。花弁は3枚で、合着して筒状になり、下の1枚の先が房状になる。
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- 絶対に触ってはいけないツチハンミョウ・・・黒藍色の身体は一種不気味な光沢がある。事実、この虫を捕まえると、身体から黄褐色のなんとも嫌な臭いのする液を出し、この汁が柔らかい皮膚についたりすると水疱ができる。
だから素手で触るのは厳禁!
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- アカスジカメムシ・・・赤と黒の縦じま模様が美しく、その特徴的な体形と模様で識別が容易。赤と黒の派手な模様は外敵への警告色と言われている。平地から丘陵地のセリ科植物の花で見つかる。
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- ヒラタアオコガネ(コガネムシ科)・・・アズマギクの群落に多数訪花していたコガネムシの仲間。一見、ハナムグリかと思ったが、ちょっと小さい。画像を拡大してみると、緑色の小型コガネムシ「ヒラタアオコガネ」であった。腹部・胸部の周りに白い毛が良く目立つのが特徴。幼虫は芝の根や腐植を食べる。寒風山は山全体が緑の芝生に覆われているから、ヒラタアオコガネが多いのであろう。
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- 滝の頭湧水・・・寒風山は、火山の噴出物が積み重なってできた山である。その火山噴出物には、たくさんの割れ目や気泡がある。雨が降るとその隙間に染み込んで水がたまり、山麓には多くの湧水が分布している。そのうち最も湧水量が多いのが滝の頭湧水である。
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- 円形分水工・・・滝の頭湧水は、寒風山に降った雨が約20年かけて自然に濾過されて地表に湧き出していると言われ、一日あたり2.5万トンという膨大な湧水量がある。古くから農業用水や飲料水の水源とし利用されている。争いが起きないように各地域に公平に水を分配するための施設が「円形分水工」である。
- 見える魚影はニジマス・・・円形分水工周辺の水路やため池で見られる魚はニジマス。ニジマスは本州では天然繁殖しないと言われている。その最大の理由は、「夏でも水温が摂氏12度以下の冷たい水であること」・・・秋田では、その冷水の条件を満たしているのが滝の頭湧水。故に唯一天然繁殖が確認されている。
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- 湧き口には、今木神社という不動尊が祀られ、三吉神、太平山碑などの石碑に囲まれ、この湧水が天からの授かり物として、地域の人たちに敬われてきたことが分かる。
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- 菅江真澄図絵「滝の頭湧水」(秋田県立博物館蔵)
1804年9月6日、おもしろい所があると、案内されて滝の頭へ。1810年8月27日、男鹿大地震を体験した後、同年10月25日、再び滝の頭を見学して・・・「今度の地震で水が増えており、不思議なことである」と記し、絵図も描いている。絵図を見れば、山全体から湧き出し、沢となって流れる様子から、湧水量は今より何倍も多かったであろう。
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- スギの巨木とため池
- 滝の頭湧水と渡部斧松・・・真澄が訪れた9年後、1819年、渡部斧松は寒風山一帯を調査し、干ばつにも涸れたことのない滝の頭を水源に定め、1821年、滝の頭より水利工事着手。湧水の水温は、年間12℃と低く、このまま導水すれば冷害になってしまう。1826年、滝の頭の水源直下に堤防を築いて水を貯め、冷水を温める「温水ため池」として築造。豊富な滝の頭を水源に、未開の原野に村を拓いた。
新村は、斧松にちなんで「渡部村」と命名された。
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- ヒメコウゾ・・・ミツマタ、ガンピとともに和紙の原料として知られ、和紙製造のための品種が各地で栽培されている。現在のコウゾは、ヒメコウゾとカジノキの交配種だが、コウゾが広まるまでは野生種のヒメコウゾをコウゾと呼んで用いていた。
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- 清冽な湧水と杉の巨樹のパワーを全身に取り込む森林セラピー体験
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