森の学校 女滝沢森林遊歩道できのこ観察会
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2024年10月26日(土)、森の学校「女滝沢森林遊歩道できのこ観察会」が、湯沢市小安峡温泉女滝沢森林遊歩道を会場に開催された。一般参加者等50名が参加。例年ならナメコが生える時季だが、秋田で最もポピュラーかつ人気が高いナラタケが生えるなど、食用キノコの発生が全般的に遅れている。そんな中、樹齢300年以上のブナやヤチダモの巨木がある森林遊歩道を歩きながら、食用キノコから毒キノコ、ブナ帯の森を支える菌根菌、散策コース沿いの植物について、専門家から詳細な説明を受けながらキノコと植物の不思議な共生関係について濃密に学んだ。
- 主催/秋田県森林学習交流館プラザクリプトン
- 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
- 協力 秋田きのこの会
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- キノコ観察会講師・・・秋田きのこの会会長 菅原冬樹氏、菌根共生について 村田政穂氏、植物について 和田 覚氏(東北植生研究会)
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- オオイワウチワ・・・ブナの森では、春一番を告げる花がオオイワウチワである。淡い新緑に包まれると花は終わるが、大きな葉は一年中常緑で残る。青森から新潟の日本海側に生育するイワウチワは葉が大きいので、オオイワウチワと呼ばれている。
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- キタマムシグサ・・・太い茎にはマムシのようなマダラ模様がある。昔、秋にできる赤い実は、採取して家の戸口に下げて悪魔や伝染病除けにしていた。
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- ブナハリタケ(食用)・・・ブナの枯れ木、倒木に重なりあって生える。地元では、スギに生える白いキノコをスギカノカと呼ぶように、ブナに生える白いキノコをブナカノカと呼んでいる。
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- ナラタケ(食用)・・・秋田では最もポピュラーで人気が高いキノコ。例年10月上旬から中旬頃に発生するが、10月下旬に発生するとは。それだけ今年の食用キノコの発生は、全般的に遅れている。
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- カワラタケ・・・屋根瓦状に重なり合って群生していることから「カワラタケ」。表面は黒や青みの強いものなど多彩。
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- ツリガネタケ・・・顕著な環紋と環溝があり、その名のとおり釣り鐘形をしている。ブナなどの広葉樹の白色腐朽菌。
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- ワサビタケ・・・噛むとワサビのような強い辛みがあるという。夏から秋、広葉樹の枯れ木に多数重なって発生する。
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- ウスキブナノミタケ・・・ブナの森を代表するきのこの一つ。秋、土壌に埋まっている前年に落ちたブナの実から発生するという。食用に不適で、とても小さく目立たないキノコだが、ブナの実から発生するキノコと聞いただけで、印象度はグーンとアップ。
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- 猛毒・ニガクリタケ・・・夏~秋、枯れ木や切株に束生する毒キノコ。幼菌のクリタケに似ているが、強い苦みがあり、誤食は稀だが、毒性が強く死亡例もあるので注意。
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- 紛らわしい毒キノコ・ツキヨタケ・・・食用のムキタケやヒラタケ、シイタケと似るので紛らわしく、日本特産の毒キノコの中で、中毒例が最も多い。ブナなどの倒木や立ち枯れ木に群生する。縦に裂くと、紫色の染みになっているのが毒のツキヨタケである。
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- 試薬による毒キノコの判別・・・ツキヨタケに水酸化カリウムを滴下すると、青緑色を呈した。こうした化学反応でも識別できるという。
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- 6歳のキノコ博士・ナオ君の登場・・・自生しているキノコの名前をズバリと言い当てた。これには驚かされた。
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- ナガエノスギタケ・・・長い柄は地中深くまで伸び、何とモグラの巣のトイレ跡から発生しているという。モグラ類が残した排泄物を栄養分として吸収し、深い地中から地上に運び出すということは、「森のトイレ掃除屋さん」的な役割をしているということ。
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- ドクツルタケ・・・全体が白色で、柄は繊維状のささくれに覆われ、根元に袋状の大きなつぼがある。1本以上食べると、病院で適当な処置をしない限り3日以内に死亡するという猛毒キノコ。
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- ホコリタケ(キツネノチャブクロ)・・・内部の肉が白い幼菌のみ食用。穴が開いてホコリが出るようになると×。類似種のタヌキノチャブクロに対して、別名キツネノチャブクロとも呼ばれている。
- ムササビタケ・・・獣の名前がついたキノコで、他にムジナ、イタチなどがある。広葉樹の朽木に多数発生する。
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- 変形菌・・・巨大なアメーバ状の体を変形させてキノコのように胞子をつくる不思議な生き物。
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- コシアブラの黄葉・・・白っぽく半透明な黄色に黄葉する。
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- ツルシキミ・・・輪生状の葉の上部に、赤く熟した実がつく常緑小低木。積雪に適応して茎の下部が地を這い、枝はしなり、折れにくい。
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- ヒメモチ・・・ツルシキミと似ているが、常緑の葉は輪生しない。
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- ヒメアオキ・・・枝も幹も「緑色」で、大きな葉は鋸葉が大きく、厚みがあって光沢が強い。
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- 300年以上のブナ林広場で、村田政穂氏による「菌根菌紙芝居」が行われた。
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- マツタケやトリュフなどの外生菌根菌は、植物の根に菌根をつくって共生する菌類のことで、人工栽培が難しい。菌根菌は、光合成産物の約2割を受け取り、無機養分のほぼ100%を供給しているという。
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- 外生菌根菌は、世界で2万種以上。地面から生えるキノコの多くは菌根菌だという。
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- 菌根共生・・・ブナの森には、特に外生菌根菌のベニタケの仲間が多い。その菌根を持ったブナは、その菌糸によって地中で互いにつながりあい、「菌根ネットワーク網」になっている。低木層の若い木々たちが「栄養がほしい」と言えば、マザーツリーからもらうことができる。逆にマザーツリーが「水がほしい」と言えば、周りの木々からもらうことができる。つまり、森の木々たちはお互いに争っているではなく、菌根ネットワーク網でつながり、お互いに会話しながら協力し合うことで共存・共生している。
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- ヌメリササタケ(食用)・・・ほんのりとした甘みと舌触りの良い美味しいキノコ。傘は初めまんじゅう形で後にはほぼ平らに開く。傘、柄とも粘液に覆われている。
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- チャナメツムタケ(食用)・・・傘の色やヌメリがナメコに似ていて、土から生えているように見えることから、別名「ツチナメコ」と呼ばれている。
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- アカチシオタケ・・・初夏から秋、ブナなど広葉樹の腐木、埋もれ木などから発生する。柄が赤く、傷をつけると、傘やヒダ、柄ともに橙色の液がにじみ出てきて、キノコを赤く染めるという。だから「赤血潮茸」という。
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- ホテイシメジ(食用)・・・クセのない風味で料理にうま味が出るが、食べる前後に酒を飲むと悪酔いするという。
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- ヤチダモの巨木・・・ブナの巨木広場から谷沿いに一気に下ると、湿地を好むヤチダモの巨木があった。幹はあまり枝分かれせず、真っすぐに高く伸びるのが特徴。他に湿地を好むサワグルミ、トチノキなどが生えていた。
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- ジュウモンジシダ・・・谷間の湿ったところに生え、葉の形が十字型に見えるシダ植物であることから名づけられた。
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- ワサビ(食用)・・・沢筋のサワグルミ林などの湿地に大きな群生をつくる。根は残して主に葉と茎を利用する。
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- ミズ(ウワバミソウ/食用)・・・渓流沿いや水の滴る崖、滝の近くなど、沢筋の水が流れる湿地帯に「ミズ畑」と呼びたくなるほどの大群落を形成し、大量に採取できる。
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- 湿地とメタン・・・ヤチダモやサワグルミなどが自生する湿地帯は、地中にメタンをたくさん貯めている。そのメタンは、地球温暖化に大きな影響を与える温室効果が、二酸化炭素の何と28倍も大きいという。和田さんは、沢沿いのヤチダモ・サワグルミなどの幹からメタンが放出される量や、これら選定木の近くの土壌のメタン吸収・放出量の測定など、渓畦林における温室効果ガス吸収量の調査研究を行っているという。
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