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 2014年8月20日(水)~21日(木)、「平成26年度秋田県緑の交流集会」が秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンを会場に開催された。参加者は、5団体42名(児童34名、引率者8名)。当日は、悪天候で波が高く、メインの地引き網体験は中止になってしまったが、海辺の散策と拾い物、森と海からのメッセージ、ネイチャーゲーム、木工、森のクラフトなどが行われた。
 秋田県緑の交流集会は、県内の緑の少年団結成校、緑化や森林・環境教育活動等に積極的に取り組んでいる学校・エコクラブ等の児童生徒が、自然体験や共同生活を通じて交流を図りながら、水と緑を愛する心を育むことを目的に、毎年8月に開催されている。

●内容/活動発表、あきたの森林、自然観察、木工、森のクラフト、ネイチャーゲームなど
◆主催/秋田県、公益社団法人秋田県緑化推進委員会
◆協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン、秋田県森の案内人協議会

■参加団体・・・湯沢市立秋ノ宮小学校、秋田市立川添小学校、ボーイスカウト秋田31団カブ隊、ボーイスカウト秋田49団カブ隊、マックスバリュ東北 秋田イオンチアーズクラブ
開会式・オリエンテーション
参加者紹介
「あきたの森林」について学ぶ

 開催当日は、広島で大規模な土砂災害が発生し、多くの犠牲者が出たとのニュースがあった。思えば、昨年の8月9日、仙北市田沢湖の供養佛集落でも土石流が発生し、家屋など11棟を押しつぶし、6名の犠牲者が出ている。改めて自然の災いの恐ろしさを思い知らされる。

 近年、こうした局地的豪雨が頻発しているだけに、森林のはたらきで忘れてはならないことは、雨の力をやわらげ、土砂が流れ出るのを防いでくれることである。さらに水を蓄え、緑のダムのはたらきや美味しい水を供給してくれる。海岸林は強い風や塩害、津波の被害を軽減してくれる。二酸化炭素を吸収し地球温暖化を防ぐのに役立つ。休養、散策、森林浴、山菜・きのこ・木の実・渓流魚などの山の恵みを与えてくれるなど、多くの多面的なはたらきをしている。
▲砂防林の神様「栗田定之丞(くりたさだのじょう) ▲秋田スギの父「賀藤景林(かとうかげしげ)

森林づくりの先人

 「栗田定之丞」(1767-1827年)は、能代市から秋田市まで120kmにわたって、海岸にマツを植樹することに成功し、飛砂の被害から救った先人である。秋田市新屋の人たちは、彼を「砂防林の神」として祀り栗田神社を創建している。

 「賀藤景林」(1768-1834年)は、農民たちが進んで植樹するしくみをつくり、スギの植樹は250万本にも及んだといわれ、「秋田スギの父」と呼ばれている。また、能代地域の飛砂の被害を防ぐために砂防林の植樹を指導し、能代の人々を救った。彼は、能代公園の景林神社に神として祀られている。こうした先人に学び、県民の暮らしと文化を守る森林づくりを進めていくことが大切である。
海辺の散策

 森の案内人の指導を受けながら、由利本荘市岩城の道川海岸を散策する。砂浜に漂着している物の中から「森と海からのメッセージ」を感じ取れるものを探し拾いながら歩く。
 単なるゴミも多いが、良く捜し歩くと、森と海がつながっている証拠となるような漂着物や、地域の暮らしと文化に関わる拾い物も少なくない。右の写真の拾い物は、お盆の間に供えた野菜や果物、飾り物。この地方では、盆に供えた物を小舟に乗せて川や海に流す風習があるという。
▲流木とカラス ▲スイカを食べていたカモメ
室内ゲーム

 室内ゲームは、「フォグランプ」と「ネームトス」の2種類。講師は、自然観察指導員の大石礼之輔さん。室内ゲームの後、セミプロ級の手品も披露してくれた。
▲室内ゲーム「フォグランプ」

 二人一組でお互いに「山」「川」といった合言葉を決める。左右に分かれ、ハンカチやバンダナで目隠しをした後、合言葉を言いながら仲間を探すゲーム。
▲室内ゲーム「ネームトス」

 リーダーがボールを1個持つ。自分の名前を言ってから、「Aさん」と名前を呼ぶ。「はい」って返事をしたら持っているボールを投げる。Aさんも同じように、「Bさん」と名前を呼び、ボールを投げる。こうやって、全員にボールがまわったら、終了。ただし、途中で落としたら、また最初からやり直しをする。早く終了したチームが勝ちと言うゲーム。

 このゲームは、初対面の参加者の名前を覚えられること、相手がとりやすいようなボールを投げるという思いやりの気持ちを持つこと、全員が協調しながら取り組むことなどの効果が期待できる。
▲森の案内人・田口恵子さん・・・道川海岸は、日本で初めてペンシルロケットが打ち上げられた場所であるとの説明があった。 ▲森の案内人・工藤正さん・・・海辺を散策して大事なことは、五感で感じること。目、耳、鼻、舌、触って感じたことを、今晩、絵にしてみようとアドバイスしてくれた。
森と海からのメッセージを絵に描く(講師:山上インストラクター)

 道川海岸を散策しながら、拾ってきた物や五感で感じたことを、「森と海からのメッセージ」というテーマで班ごとに描く作業を行った。
▲海辺の拾い物 ▲みんなで協力して描く
森と海からのメッセージ 1班の発表
2班の発表
3班の発表
4班の発表
5班の発表
6班の発表
木工体験「二役棚」(講師:進藤インストラクター)

 今回の木工体験は、横にすれば本棚、縦にすれば飾り棚になるという「二役棚」である。
 この木工体験は、簡単そうで意外に難しい。バランス良くつくるには、二人一組でやるほどの難度があった。森の案内人やインストラクター、引率者が総動員で作成の指導にあたった。そのお蔭で、全員が時間内に完成させることができた。

二日目、ネイチャーゲーム「ノアの箱舟」(講師:大石礼之輔)

 「ノアの箱舟」の伝説ストーリー・・・争ったり盗みを繰り返してばかりいる人間たちに絶望した神様は、大洪水を起こして、その悪い人間たちを一掃することを決断する。しかし、ただ一人心の清らかなノアとその家族だけは救うことにして、大洪水がもうすぐ起こるから大きな箱舟をつくるように言う。そしてその船には全ての動物たちをそれぞれオスとメスのつがいで一組ずつ乗せるように言う。

 人々は箱舟を作り出したノアをバカにするものの、大洪水は本当に起こり、全て亡くなってしまう。洪水がおさまり戻ったノアたちは、そこで平和に暮らし、神様ももう洪水を起こさないことを約束したというのが概略のストーリーである。ネイチャーゲーム「ノアの箱舟」は、洪水が起きる前に生き物たちのオスとメスのつがいを探してノアの箱舟に乗せるという場面を重ねた楽しいゲームである。
 ノアの箱舟は、トラロープで舟の形の輪をつくる。ノアの箱舟カードは、15種の生き物カードが各2枚ずつ入っている。そのカードを参加者に各2枚ずつ配布する。配布されたカードの生き物になりきって、しぐさを繰り返し、自分と同じ生き物を探す。探し当てたらノアの箱舟に乗る。全員が無事にノアの箱舟に乗り込む早さを競う。
 配布された生き物は、トンボ、クワガタ、カマキリ、ペンギン、カラス、キツツキ、ウサギ、ゾウ、ネコ、ゴリラ、ラッコ、ヘビ、カメ、カエル、カニの15種。鳴き声を出してはいけないので、大きなジェスチャーで仲間を探す。探し当てると、大喜びでノアの箱舟に乗り込む。演じる楽しさ、仲間を見つけた嬉しさ、たくさんの生き物に出会える楽しさに笑顔が絶えなかった。
森のクラフト(講師:進藤インストラクター)

 昨夜つくった「飾り棚」に飾る森のクラフトを行った。見本は、進藤インストラクターが作った森の妖精や昆虫、動物たち。子どもたちは、森の自然素材を様々に組み合わせて、講師顔負けの創造力あふれる作品を数多く創作していた。
▲森の自然素材を手にとって創造力を膨らます ▲十人十色の感性で独創的な作品にチャレンジ
独創的な子どもたちの作品

▲森のクラフトを終えた参加者は、森林学習展示室でクイズをしたりして楽しく学んだ。
ふりかえり

 最後に、二日間にわたって「緑の交流」を体験した感想を書き、その発表会が行われた。
 メインの地引き網体験ができなかったけれど、今回が一番楽しかったとか、森のクラフトで満足のいく作品ができ嬉しかったとか、スタッフの皆さんの熱心な指導に感謝する言葉などをいただき、スタッフ一同嬉しそうだった。 
湯沢市立秋ノ宮小学校の活動報告

 湯沢市立秋ノ宮小学校杉の子隊は、平成20年度全日本学校関係緑化コンクールで、準特選(国土緑化推進機構会長賞)を受賞している。その親子森林教室や秋の森林活動、菜園活動、福祉活動の様子を力強く発表してくれた。来年は、雄勝地区が一つの小学校に統合され、秋ノ宮小学校はなくなるという。輝かしい歴史と伝統を誇る杉の子隊の優れた森林づくり活動を、ぜひ引き継いでほしいと思う。
みんなが森林の応援団に!

 二日間とも、悪天候に見舞われたが、思いのほか充実した緑の交流集会になった。それゆえ、全員満足の笑顔!。こうした緑の集会を通して、水と緑を愛する心が育まれ、将来は「みんなが森林の応援団」になることを期待したい。