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 2014年8月31日(日)、森の学校第8回森の案内人と一緒に森づくり実践活動「ふるさとの森をつくろう!」が、秋田市雄和繋地区の里山で開催された。今回は、森の案内人の方々が里山林の保全活動を行っている現場を視察するとともに、枝打ち体験、ミョウガ摘み取り体験を行った。

●内容/里山林の保全活動視察、枝打ち・ミョウガ摘み取り体験 ▲対象/一般
◆主催/秋田県森の案内人協議会
◆協力/秋田県森林学習館・プラザクリプトン(018-882-5009)
 会場となった里山は、昔、亀田藩(由利本荘市岩城)に至る街道沿いに位置しており、三叉路には旅の安全を祈ったであろう道祖神が祀られている。
▲林業体験に使用した道具
▲高い所の枝を切るノコギリ、3段4.9m ▲プロの道具・・・チェーンソー
 森の案内人・工藤正さんは、子ども時代、この里山でアイコやワラビ、ゼンマイを採ったり、魚や昆虫を捕まえたり、棚田沿いに乱舞するホタルを追い掛けたり、秋になればアケビやヤマブドウ、キノコを採ったりして良く遊んだ。この森の学校で学んだ体験があったから、森の案内人になったと、懐かしそうに語ってくれた。少子高齢化の時代と言えども、身近な里山林が荒廃してゆくのを黙って見ていられない心境が伝わってきた。
 急斜面に設けられた九十九折りの作業歩道を上って、保全活動を行っている森林へ。
チェーンソーによる除伐・・・指導者・NPO法人 森の王国サルパ代表・奥山勝栄さん

 除伐とは、曲がった木、枯れている木、成長の悪い木など支障となる木を除去すること。
伐木のやり方(写真:除伐した切り口)

①倒す方向に「受け口」(写真右側の切り口)をつくる。水平に太さの1/4~1/3辺りまでチェーンソーを入れ、次に上から斜めに切り、三角の切り口を作る。
②反対側から、受け口の下切り面より少し上くらいの位置を水平に切る。これを「追い口」(写真左側の切り口)という。受け口の少し手前まで切り込みを入れ、つなぎ目を切り残しておく。

③周囲に「倒すぞ~」と大きな声で知らせ、安全を確認してから、クサビを打ち込むなどして倒す。
▲除伐作業風景・・・作業が進むにつれて、林内が明るくなっていくのが分かる
枝打ち・・・3段4.9mのノコギリで高い枝を切る

 枝を切り落とすと、林内が明るくなり、林床に光が射し込むようになる。今回は、視察体験ということで枝打ちを行ったが、本来は11月から3月頃までがベストだという。
▲枝打ち作業風景
つる切り

 木に巻き付くタイプのつるは、上の写真・フジやアケビ、クズなどが代表種である。これらのつるは、樹木に巻き付き、食い込むため、成長に必要な養分などをうまく送ることができないほか、幹に傷がつく。上のフジの断面を見ると、4年でかなり太くなっているのが分かる。つるは、樹木に巻き付いた後4年頃から急成長するので、その前に切り取るのが良いという。
枝打ち体験

 里山林の保全活動を視察した後、平成18年、休耕田に植樹されたフィールドで枝打ち体験が行われた。管理が不十分なため、林内は暗かった。植樹すれば、きれいな森林になると思うのは大間違い。一度手を入れた自然は、手をかけ続けなければ維持できないことが分かる。
 参加者は、枝打ちをはじめると、みな夢中になった。というのは、横に張り出した枝を次々と間引いていくと、確実に林内が明るくなり、すっきりするからである。里山林を健全に育てていくためには、樹木の種類、密度、林内の明るさを適正に管理していくことが重要である。

 また、休耕田に植樹する場合は、排水対策も重要だという話があった。ただし、湿った場所を好むサワグルミの成長は、すこぶる良かった。ということは、環境に合わせた樹種の選定も重要であろう。  
ミョウガ摘み取り体験

 里山の恵みとして、ミョウガ畑で摘み取り体験も行われた。夢中になる余り、袋一杯に採った参加者もいた。秋田で有名な産地は、白神山地の麓・能代市の「白神みょうが」である。ミョウガ料理でオススメは、大きめのものを半分に切って焼いた後、甘味噌を塗った田楽が美味い。
雑木の山をつくるには百年かかる・・・「木の教え」(塩野米松)

 木を伐った跡や林のあったところで雑木林が再生するのは別ですが、全く丸裸にしてしまった山に改めて雑木林をつくろうとしたら、自然のままにまかせれば、百年はかかるといいます。・・・大島に宅地分譲のブームが起きたさい、別荘用に多くの椿の山が大きな企業に買い占められました・・・しかしブームは去り・・・放置され・・・あっという間に雑木が伸び、美しかった椿山は荒れ放題になってしまいました。

 ・・・炭焼きが雑木を炭に焼き、アケビ細工師やヤマブドウつるの細工人、クズのつるを採集する人、漆掻き、イタヤカエデの採集人たちがいて、それぞれが有用な木を利用し、農家の人たちが落葉を集め、大きくなった木は樵たちが伐り出す。伐ったら、苗を植えたり、ひこばえの世話をし、育てて使う。これを順に繰り返しながら、山の自然は守られてきたのです。こうした仕事のどれ一つがなくなっても輪は欠け、山は維持できなくなっていきます。
参 考 文 献
「森づくりワークブック 人工林編」(全国林業改良普及協会)
「Q&A 里山林ハンドブック」(木文化研究所、日本林業調査会)
「木の教え」(塩野米松、ちくま文庫)