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 2014年11月1日(土)、森の学校第11回 学ぼう・活かそう「林業イロハ塾」が、湯沢市の指導林家・宮原隆さんの森林で開催された。一般参加者、インストラクター等24名が参加した。沢水を利用したイワナの養殖やナメコなどの林間栽培、自前でつくった3kmに及ぶ作業路、人生のオアシス「いわなの館」など、「山の恵みを受けて 楽しむ森林づくり」について学んだ

●内容/指導林家の山林を見学し、経営について学ぶ ▲対象/一般
◆主催/秋田県森林学習館・プラザクリプトン(018-882-5009)
◆協賛/(一社)秋田県森と水の協会 協力/指導林家 宮原 隆氏
▲秋田県指導林家・宮原隆さん

 林業イロハ塾の先生は、湯沢市石塚の秋田県指導林家・宮原隆さん。宮原さんは、林業技士(森林環境部門)や雄勝広域森林組合理事として活躍されているほか、平成21年度秋田県林業経営コンクールで県林業改良普及協会長賞を受賞している。
▲平成18年に自宅を新築したが、材は全て自分の山のスギやクリなどを使用したという。
▲持ち山の広葉樹林から刈り出す薪で、自宅の暖房を賄っている。
▲持ち山の広葉樹でホダ木を生産、林内で様々なキノコを栽培している。
▲自作の油圧式薪割り機・・・多彩な才能に驚かされる。
清流のシンボル「イワナ」の養殖

 森から湧き出す沢水を利用してイワナの養殖を行っている。イワナは、水温が15℃前後と低く、年中枯れることがない清流でしか育たない。山の上の部分を水源林として広葉樹を残し、スギ人工林も適度な管理がなされているからこそ、豊かな水の恵みがあるのであろう。
▲イワナの親魚

 野生のイワナと同じく、大きいイワナと小さいイワナを一緒にすれば、共食いする。それを防ぐために、水槽はサイズ別に分けて飼育している。親魚の採卵は、11月に行うという。
▲サンショウウオを食べていた野生のイワナ ▲イワナ用配合飼料(市販) 
 野生のイワナは、川の最上流に棲み、生きた水生昆虫や落下昆虫、サンショウウオ、カエル、果てはネズミや蛇まで食べる。それだけに餌付けが大変難しく、養殖は不可能と言われていた。日本で初めて養殖が成功したのは、昭和45年のことである。それ以前は、野生のイワナを釣り、温泉宿などに卸していたイワナ釣りのプロ、いわゆる「イワナ職漁師」と呼ばれる人たちがいた。
▲イワナの稚魚(一歳魚) ▲塩焼き用イワナ(二歳魚)

 イワナの養殖は、誰も教えてくれないので思考錯誤を繰り返し自前で行ったという。一般的に、一歳魚が唐揚げ、二歳魚が塩焼き、三歳魚が刺身として食用される。 
▲最下流の生け簀 ▲沢水を引いた洗い場
癒しの空間「いわなの館」

 手づくりの「いわなの館」には、春は新緑と山菜、夏は涼、秋は紅葉とキノコを求めて人が集まってくる。カフェや野外レストラン、仲間との宴会はもちろん、宿泊もできるという。かつては、露天風呂も楽しんだとか。この「いわなの館」は、お金では決して買うことのできない「人生のオアシス」そのものである。こんなに楽しい森林づくりもあるんだと感心させられた。
▲森の最高の恵み・・・イワナの炭火焼
▲露天風呂「七右エ門の湯」

 この湯は、効能が素晴らしい。金欠病、背中の痛み、アルコール中毒、夫婦不仲、老眼に効くという。看板には、金欠病は「稼げば何とかなる」、夫婦不仲は「逃げられる前に手を打て」・・・なるほどと頷かざるを得ない名言が掲げられている。
▲キハダ ▲「いわなの館」を象徴する絵

 キハダの樹皮をコルク質から剥ぎ取り、外樹皮を取り除いて乾燥させると生薬の黄柏(上左の写真)となる。主に健胃整腸剤として用いられる。強い抗菌作用を持つといわれ、チフス、コレラ、赤痢などの病原菌に対しても効能がある。また強い苦味があるので、眠気覚ましとしても用いられたという。薬用のほか染料の材料としても用いられる。
森林経営の特徴

 経営森林面積は18.77ha。うち11.55haがスギを主とする人工林、残り7.22haはミズナラなどの入り交じった広葉樹林。作業路は、下刈りや枝打ちなどの保育作業や材の搬出、きのこ栽培のため、山の頂までくまなく張り巡らされている。その総延長は3kmに及ぶが、30数年かけて全て自力で開設したというから驚かされる。
 広葉樹は、キノコや薪炭の原木として利用。ナメコやシイタケ、ブナハリタケ、クリタケなど、多くの種類のキノコを林間栽培している。
▲クロモジなどの低木類の黄葉 ▲トチノキの黄葉

 スギ人工林の林床には、適度な光が注ぎ低木類や下草が生えている。間伐した空間には、ホオノキやトチノキの誘導を行い、針混交林化を図っている。
▲樹齢300年ほどのカツラの巨木 ▲作業路で見掛けたカモシカ

 森林の豊かさは、生き物たちを見れば一番よく分かる。右の写真は、作業路に現れた天然記念物・カモシカ。ツキノワグマも生息しているという。
▲中腹の作業路から望む絶景

 宮原さんの住む石塚地区をはじめ、仙北、平鹿方面まで見渡せる。頂上近くに「森のカフェバー」と呼ぶ見晴台があるという。そこまで行けば、どんなに素晴らしい眺めだろう。
▲コガネタケ ▲ツルリンドウ
▲原木シイタケ
▲ナメコの原木栽培

 ホダ木は、持ち山のトチノキやクルミ、ホオノキなどを利用。適度な光と水分、良好な排水条件を確保するため、緩やかに傾斜した林間にホダ木を寝かせて栽培している。ナメコは、傘が七分~八分開きが美味しいので、その頃を見計らって株ごと収穫する。
▲原木ナメコは、姿・形・味ともに天然物とほとんど変わらない。  
▲収穫した原木ナメコ
▲宮原家の特製ナメコ汁とイワナの炭火焼 
 昼食は、人生のオアシス「いわなの館」にて、イワナの炭火焼とナメコ汁を堪能した。あちこちから「んみぁな~(美味しい)、んみぁな~」の連呼が絶えなかった。宮原家の恵みをごちそうになれば、「山の恵みを受けて 楽しむ森林づくり」の意味がストレートに理解できる。ありがとうございました。