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平成27年度秋田県緑の交流集会

 2015年8月4日(火)~5日(水)、「平成27年度秋田県緑の交流集会」が秋田県立岩城少年自然の家(由利本荘市)を会場に開催された。今回は、「東日本大震災からの復興」と「緑豊かな潤いのある美しいふくしまづくり」に尽力されている福島県の穂積小緑の少年団が特別参加し、県の枠を越えて交流を深めあった。

 参加者は、4団体53名(児童46名、引率者7名)。天候に恵まれ、待望の地引き網体験が実施されたほか、提灯づくりとナイトハイク、木工教室、自然観察とザリガニ釣りなどが行われた。
 秋田県緑の交流集会は、県内の緑の少年団結成校、緑化や森林・環境教育活動等に積極的に取り組んでいる学校・エコクラブ等の児童生徒が、自然体験や共同生活を通じて交流を図りながら、水と緑を愛する心を育むことを目的に、毎年8月に開催されている。

●内容/地引き網体験、提灯づくり、ナイトハイク、木工教室、自然観察、ザリガニ釣りなど
◆主催/秋田県、公益社団法人秋田県緑化推進委員会
◆協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン、秋田県森の案内人協議会

■参加団体・・・福島県郡山市立穂積小学校緑の少年団、ボーイスカウト秋田31団カブ隊、マックスバリュ東北秋田緑の少年団、さくらシャインキッズ
▲岩城少年自然の家「信田」班長のあいさつ ▲秋田県森林整備課「佐藤龍司」課長あいさつ
▲福島県郡山市立穂積小学校緑の少年団代表あいさつ

 東日本大震災からの復興と除染も進み、やっと外で遊べるようになりました。これからも私たちの暮らしに欠かせない緑化に努力していきたいと思っています。皆さんには、倒されても必ず起き上がる郷土玩具「起き上がり小法師」をおみやげにもってきました。引き続き、皆さんの応援をよろしくお願いします。
▲穂積小学校緑の少年団からいただいた「起き上がり小法師」
▲ふれあいゲーム(講師:岩城少年自然の家) 

 30℃を超える猛暑の中、道川海水浴場手前の海岸まで移動し、「ふれあいゲーム」を行った後、メインの地引き網体験が行われた。

地引き網漁

 網の片方を浜辺にいるAグループに渡した後、船で沖に向かいながら投網し、半円状にかけ回し浜辺に戻ってもう一方の綱をBグループに渡す。お互いに均等になるように浜の方へ地引き網を引いて魚を捕る漁法。
▲Aグループに網の片方のロープを渡す ▲船で沖に向かいながら半円状に投網していく
▲もう一方の網のロープをBグループに渡す ▲みんなで力を合わせて網を引く
▲沖合に仕掛けた長い網の両端を、A、B共に陸の方向に引く一方、お互いの間を狭めていく
▲やっと地引き網を引き上げる作業が終わる。果たして、どんな魚が入ったのだろうか?
▲眠っていた漁労採集の遺伝子が騒ぎ出したのか・・・網に掛かった魚捕りに無我夢中。
▲キスとシマダイ ▲フグ

キス(スズキ目キス科)

 口先が尖り、その名の通り「キス」をしているような口が特徴。その細長く小さな口は、砂底に潜む獲物を探るのに役立つ。海岸付近の砂底で生活している。全長45cmほどに成長し、釣りの対象魚として人気が高い。料理は、塩焼き、天ぷら、フライ、刺身など。
一番多く入ったサヨリ

 サンマに良く似た細長い体形と下アゴが長く突き出しているのが特徴。産卵期は4月~8月。群れで藻場に入り込み海藻や海草に産卵する。網に入ったサヨリは、春から初夏にかけて生まれた稚魚であろう。寿命は2年余り、最大で40cmほどになる。料理は、刺身、寿司、天ぷら、塩焼きなど。
▲網に入った魚は、サヨリ、フグ、キス、シマダイ、クロダイ、カワハギ、タルイカの7種類。
▲岩城少年自然の家「食堂」にて「夕食」
提灯づくり(創作実習室)・・・ナイトハイクに備え、班ごとに提灯を2個作成する。
▲白い紙に絵を描く。
▲描いた紙をノリで4面に貼り合せる。
▲完成した提灯  
▲中にローソクを立て火を灯すと、描いた絵が光輝く。
▲ナイトハイクで歩いた「タヌキコース」
ナイトハイク

 野生の生き物たちが棲む森は、夜になると・・・明かりがないと、一歩も前に進むことができないほど真っ暗になる。前と後ろの人が、小さなロウソクの光を灯した提灯を持ち、一列になって歩く。一人じゃ怖いが、みんなで力を合わせて歩けば怖くない。ただしジクザクの急な下り坂があったり、右手に急な崖があったり、長い登りもある・・・様々な困難はあるが、お互いに離れて迷子にならないよう協調しながら歩く。耳を澄ませば、カエルや昆虫たちの鳴き声が聞こえる。

 長い、長い森を抜けると、最後は降るような満天の星空が出迎えてくれた。夜空に輝く星は、真っ暗闇だからこそ際立って美しく見える。子どもたちにとって、ナイトハイクは非日常の体験だけに人気が高かった。
木工教室「ローテーブル製作」(二日目、創作実習室)
 この木工体験は、簡単そうで意外に難しい。何しろ長さが9cmもの釘を慣れない金づちを使って、真っ直ぐに打ち込まなければならない。森の案内人やインストラクター、引率者が総動員で作成の指導にあたった。
自然観察(講師:森の案内人協議会)

 自然観察は、下図の「フクロウコース」を歩きながら、樹木の名前やその名の由来、樹齢はどのぐらいか、葉の形や匂いなどで見分ける方法、私たちの暮らしにどのように利用されているか、実を食べる動物、昆虫などについて学んだ。福島から特別参加した引率者が一言・・・「説明が上手だ」。
▲自然観察で歩いた「フクロウコース」
▲アスレチック ▲ザリガニ池
▲キャンピングセンター ▲営火場
ザリガニ釣り

 フクロウコースにある「ザリガニ池」には、たくさんのザリガニが生息している。そのザリガニを釣るエサは、イカの加工品「スルメ」や「さきいか」を使う。底までエサを沈めると、意外と簡単に食いついてくる。ザリガニ釣りの難しさは、上げるタイミングと上げ方・・・勢いよく上げると、せっかく食いついたザリガニは驚いてハサミを離してしまう。ザリガニをだますようにソッとあげて、バケツの上まで持ってくる。そこで上下に揺らすと、バケツの中に落とすことができる。
ザリガニのミニ知識

 ニホンザリガニは、北日本に生息するザリガニで、生息個体数が少ないことから絶滅危惧種に指定されている。秋田県では、大館市が生息の南限で、その一部区域が「ザリガニ生息地」として国の天然記念物に指定されている。現在、ザリガニと言えば、一般的に「アメリカザリガニ」を指す。

 アメリカザリガニは、アメリカ原産の外来種で、日本全国の田んぼ周辺の用水路や池など、水深が浅い泥底の環境に多く生息している。雑食性で何でも食べるが、エサが少ないと共食いもする。日本ではあまり食用にされないが、北アメリカやフランス、中華料理などでは人気の高い食材である。今では、子どもたちの身近な釣りとして人気が高い。天敵は、ブラックバス、ライギョ、ナマズ、ウシガエル、サギ類など。
▲真ん中の子がザリガニを見事に釣り上げる。
 子どもたちは、生き物相手になると集中力が俄然増してくる。コツをつかむと、次々とザリガニを釣り上げた。中には、将来は「釣りキチ三平」と呼びたくなるような天才的な少年もいた。子どもたちが森の中で自然体験学習をすれば、それぞれ十人十色の才能があることが良く分かる。
▲振り返り交流会

 最後に、二日間にわたって「緑の交流」を体験した感想を書き、その発表会が行われた。
 「東日本大震災」と「福島第一原発事故」は、改めて自然の災いの怖さを思い知らされたと同時に、「水と緑」がわたしたちの暮らしになくてはならないことを教えてくれた。同じ東北の仲間として、一日も早い「東日本大震災からの復興」をお祈りするとともに、こうした緑の集会を通して、水と緑を愛する心の輪が一層広がることを期待したい。