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2015森の学校 第2回山菜講座

 2015年5月2日(土)、森の学校第2回「山菜講座」は、秋田県林業研究研修センターで開催された。当講座への参加希望者は、年々増加し、募集定員100名に対して1.5倍の約150名が参加。山菜採りのマナーや遭難防止、山菜の栽培などについて学んだほか、野外の山菜試験地で、ギョウジャニンニクの見分け方、シドケやニリンソウと間違えやすい毒草・トリカブトの見分け方など山菜採りの基本を学んだ。

●内容/山菜採りのマナーと遭難防止、山菜栽培の留意点、試験地で山菜の見分け方など
◆主催/秋田県林業研究研修センター(018-882-4511) ▲対象/一般
■特典/ギョウジャニンニクの苗2株プレゼント
▲秋田県林業研究研修センター阿部雅弘所長あいさつ

 連日好天に恵まれ、市場や直売所、朝市には、シドケやアイコ、ホンナ、コゴミなど地場産の山菜が山ほど並び、早くも山菜採りシーズン本番を迎えている。そんな中、山菜講座への参加者がどっと押し寄せたことから、二班に分かれて講義が行われた。
▲須田邦裕講師による室内講義

 「山菜採りのマナーと遭難防止」「山菜栽培の留意点」などについて学んだ。
山菜採りのマナー
  1. 山菜が自生する山は、入山料の徴収や立ち入り禁止、山菜採り禁止区域(国立公園特別保護地域、私有地など)もあるので、採取の可否について確認すること。
  2. 山林、原野の所有者が栽培している山菜やキノコは、採らない。
  3. 株の掘り取りは厳禁。栽培で増やすには、種子のみ採取すること。
  4. 山菜は採り過ぎると、その場から消えてしまう種類が多い。間引くように採取すること。
    • 例1:タラノメ・・・3番芽までつむと芽が出てこなくなるので、採取を慎むこと。
    • 例2:ゼンマイ・・・褐色の胞子のうのついた男ゼンマイは採らずに残す。
    • 例3:ギョウジャニンニク・・・根元の白い部分が美味しいので根こそぎ採る人がいるが、それでは絶滅する。根を3cmほど残すようにハサミやナイフで切り取ること。
  5. 山菜は、決して独り占めしないこと。自然からの恵みは、皆で平等に分け合い、自然に感謝する心を忘れてはならない。
  6. ゴミは自分で持ち帰ること。もちろん、タバコのポイ捨て禁止。
山菜採りで準備するもの
  1. 長靴又はスパイク付き地下足袋、脚絆、軍手、帽子、雨合羽、タオル、防虫網・防虫スプレー。
  2. リュックのほか、腰に下げるカゴ(コダシ)又は肩や首に下げる山菜採り専用の袋があれば、両手を使えるので安全かつ効率的に採取できる。
  3. おにぎり、パン、飲料、コップ、チョコレート、飴など・・・万が一に備え予備食も忘れずに。
  4. 新聞紙・・・採取した山菜は、沢水で濡らした新聞紙で包むと旬を保つことができる。さらに車に着いたら保冷剤入りのクーラーボックスに入れると、新鮮な状態で持ち帰ることができる。
  5. 万が一遭難した場合、携帯電話と予備の食料、ライター、防寒対策があれば助かる可能性が高い。
  6. クマ避け対策・・・クマ避け鈴、ラジオ、爆竹、クマ撃退スプレーなど
山菜採りの遭難事故

 秋田は、山菜の宝庫。だからシーズン中は、山菜採りで入山する人が多く、山菜採りの遭難事故が非常に多い。過去10年間で410件発生。うち死亡・行方不明者は、69人と多い。昨年の山岳遭難発生件数は、67件、うち山菜採りは、32件で約半数を占めている。

 65歳以上の高齢者が遭難全体の7割を占めている。また、ベテランがいつもの場所で、一人で山に入り、遭難するケースが意外に多い。
山菜採りの遭難事故防止対策
  1. 採り慣れた場所であっても、一人で入山しない。
  2. 出掛ける時は、家族に行き先を告げる。
  3. 携帯電話と予備の食料(パン、チョコレート、飴など)をもつ。
  4. 欲張りは禁物・・・山菜採りに夢中になる余り、迷ったり、無理をして崖などから転落するケースが多い。目先の収穫より安全第一を心掛けること。
  5. 地図と磁石を持ち、現在地を確認しながら行動すること。
万一遭難した場合の対処法
  1. 落ち着いて行動し、体力の消耗を防ぐ。
  2. 夜間の行動は、ケガをするので慎む。
  3. 見晴らしの良い場所に移動し、携帯電話での連絡を試みる。
  4. 焚き火や手鏡で太陽光を反射させ、自分の位置を知らせる。
 山菜の栽培は、化学肥料、農薬は厳禁。牛堆肥や鶏糞、油粕など完熟した有機質肥料を施す。ギョウジャニンニクは、市場に出回る量が少なく、地域の特産品として有望な山菜である。さらに、他の山菜に見られるような連作障害の事例もない。
 室内講習に続き、山菜を栽培している試験地で野外講習が行われた。写真の山菜は、ギョウジャニンニクと、右上がニョウサク(エゾニュウ)。今年は、山菜の出が早く、試験地でのギョウジャニンニクやコゴミ、アイコ、シドケ、ホンナなどは旬を過ぎつつあった。ただし、深山の山菜は、これから本番を迎える。
 参加者たちは、試験地の山菜を実際に見ながら、名前や見分け方、採り方、料理、猛毒トリカブトのどこに毒があるのかなどについて質問するなど、熱心な野外講習が行われた。
▲トリカブトの若葉 ▲トリカブトの根

トリカブトは全草が猛毒

 トリカブトの根は太く、特に毒性が強いが、全草が猛毒である。トリカブトの花や花粉、蜜まで危険と言われるほどの猛毒である。毒成分は植物の中でナンバーワン、天然ものではフグに次ぐと言われている。アイヌは、トリカブトの毒をつけた矢尻でクマやシカを獲った。
▲ニリンソウの若葉 ▲シドケ(モミジガサ)

ニリンソウとトリカブトの見分け方

 ニリンソウは、猛毒・トリカブトと同じキンポウゲ科だが、食用になる山菜の一つである。ただし、ニリンソウとトリカブトは、若葉が似ているだけでなく混成している場合も多く、誤食事故が多い。花が咲く前の若葉は識別が難しいので、必ず白い花を確認してから採取すること。また、人気の高いシドケ(モミジガサ)と誤認して中毒する事例もあるので注意。
ギョウジャニンニクの見分け方

 開いた若芽は、毒草のバイケイソウ類やスズランとも似ている。ギョウジャニンニクは、根際が赤い網目状の繊維に覆われ、ニンニクのような強い臭いが判別の決め手である。
ギョウジャニンニクの料理

 香りが強く、油とのなじみもよいので、バーベキューや焼肉などと相性が良い。茎の根元の部分は生食、茹でておひたし、醤油漬け、酢味噌和え、豚バラの油炒め、チャーハンの具、天ぷら、バター炒め、オムレツ、卵とじ、餃子の具など。
ニョウサク(エゾニュウ)

 株の真ん中の若い茎を切り取り、皮をむいて塩蔵する。アクが強く、すぐに食べられない。ただし味はすこぶる美味・・・煮物、油炒め、煮付け、天ぷら、汁の実など。
▲特典/ギョウジャニンニクの苗2株プレゼント

 ブナ帯に位置する秋田は、「山菜文化」と言われるほど山菜の宝庫。これから山菜採りの本格的なシーズンに入る。この講座で学んだ山菜採りのマナーを守り、「目先の収穫より安全第一」を心掛け、山菜採りを楽しんでほしい。
▲シドケ(モミジガサ、2015年5月3日撮影)
▲アイコ(ミヤマイラクサ、2015年5月3日撮影)