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2015森の学校③ 木登り&ツリークライミング

 2015年5月16日(土)、森の学校第3回「木登り&ツリークライミング」が秋田県森林学習交流館プラザクリプトンの森で開催された。一般参加者は、募集人員40名を大きく上回る65名が参加、講師及び森の案内人等スタッフを含めると合計87名が参加。大人から子供まで、「鳥」になった気分で森の空中散歩を楽しんだ。

●内容/木登り&ツークライミングを体験、森の宝探しなど ▲対象/一般、親子
◆主催/秋田県森林学習館・プラザクリプトン 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
◆協力/秋田木登りクラブ、NPO法人森の王国サルパ、秋田県森の案内人協議会
 昨日の夕方から雨が降り始め、一晩降り続いたが、幸い当日の朝には止んでくれた。午前9時半、森の案内人を先頭にプラザクリプトンを出発、学習交流の森「ふりあい広場」に向かった。
 今年は、4月から気温が高く、森の緑がいつになく深い。5月中旬とはいえ、雨上がりの森は、ブヨが大量に発生する。そのブヨ対策と暖房を兼ねて、両サイドに薪ストーブを設置し、スギの葉を燻し続けた。これは、ブヨ撃退に絶大な効果を発揮し、快適な木登り&ツリークライミングを楽しむことができた。
▲木登り講師・・・秋田木登りクラブの皆さん。真ん中が代表の村上幸志さん。
▲ツリークライミング講師・・・NPO法人 森の王国サルパ代表・奥山勝栄さん。
 雨上がりの森は、いつになく涼しく、ほとんど風がなかった。秋田木登りクラブの村上代表は、今日のような天候は、絶好の「木登り日和」だという。木登りの楽しさは、言葉ではなかなか理解してもらえないので、ぜひ体験してほしい。ただし、登る途中で怖くなったら、即中止して降りてほしい。万全のサポート体制をとっているものの、本人が怖さで足が震えると、それは明らかな危険信号・・・安全第一、いさぎよく諦めるのも生きる力の一つである。
森の宝探し、カモフラージュゲーム

 参加者が定員より遥かに多かったことから、それだけ木登りやツリークライミングの順番待ちの時間が長くなる。そこで森の案内人の方々の指導のもと、森との一体感を得ることができるネイチャーゲームを楽しんでもらった。
木登り体験

 木登りに使用した樹木は、樹齢80年ほどのスギの大木。スギの太い下部は、横の枝がないので、木登り用梯子を使って登る。それより上は、横に張り出した枝を足場に登る。本来は、ロープなどを使わない素登りだが、体験イベントでは、安全確保のため、ヘルメット、ハーネス、ザイル、エイト環、二重ロックカラビナなどを使用する。さらに上と下でクラブ員がサポートし、安全には万全を期して実施された。
 スギの大木は、天に向かって真っ直ぐで、足場となる横枝が360度あるので登りやすい。ただし、横枝が多い分、登る方向を間違えると、ロープが横枝にからまる欠点もある。それを子どもたちに理解させるのは極めて難しい。稀に天性の勘でスイスイ登る子もいるが、大抵は四苦八苦する子が多かった。その際は、クラブ員が下から上からサポートしながら登った。
 地上から15mの高さまで登り、鳥の目線で森を見下ろす。私たちの祖先は、木の上で生活していた・・・そのDNAが蘇ってきたに違いない。また、木の上で生活している鳥や動物たちの気持ちも分かるだろう。だから、木を見たら登れ!。映画「WOOD JOB!」をもじれば、「少年少女よ、大木を抱け」・・・これは昔から森で遊ぶ子どもたちの鉄則であった。
 15mの高さから斜め下に向かって張ったロープにカラビナを通して一気に空中を滑り降りる。これは子どもたちにとって、最もハラハラドキドキする体験。いざ、滑空が始まると・・・
 鳥になった気分で・・・満面の笑顔!。親が驚くほど、木登りが上手な子も少なくなかった。木登り体験は、そんな子どもたちの隠れた才能を発見する効果もある。下でサポートしていた森の案内人が言った。「この子は木登りが上手だ。将来は、森の案内人だな!」
 応援に駆け付けてくれた森の案内人は、大活躍。猛スピードで滑空してくる子どもたちを、安全に受け止める役を一生懸命担ってくれた。その心は親子にも伝わったようで、全員が「ありがとうございました」と一礼してくれた。
 今まで経験したことのない達成感、充実感で喜びが爆発・・・Vサインをしながら記念撮影する親子もいた。それを見ていた参加者は、当然のことながら人気が沸騰・・・順番待ちの行列ができ、1時間以上待ち続けた親子もいたほどである。
昔の遊び「ターザンごっこ」

 熟やゲーム機はもちろん、テレビもなかった時代は、森と川が子どもたちの学校だった。そんな中、ターザン映画が人気を博した。樹の上で生活することの多いターザンの移動手段は,ジャングルにぶら下がっている太いツルである。そのツルにつかまり振り子のようにぶら下がって樹から樹へと移動するのである。

 悪ガキたちは、ヒーローのターザンになったつもりで、「ターザンごっこ」に夢中になった。森へ入り太いフジヅルにぶら下がり,ターザン気取りで「ア~ア~ア~」と叫びながら、小川の対岸に飛び移ったりして遊んだ。時には失敗して小川に落ちるなど、危険を伴ったが、その失敗から多くのことを学んだ。
ツリークライミング

 ツリークライミングは、大きな木で下枝が無く、素登りができない木に登るときに使われる木登りの方法である。高い木にかけた専用ロープと、ツリーハーネスと呼んでいる安全ベルトをつなげて、ぶらさがったまま登る。手を離したり力を抜いても落ちる心配がない。だから、今まで気軽に行くことの出来なかった高い木でも、老若男女誰もが自分の力で登ることができるという利点がある。
▲奥山講師のお手本

 ロープと身体はサドルと呼ばれるハーネスでつながっている。太もも部分の幅が広いので長時間ぶら下がっても足がしびれることはない。伸びにくく、縮みやすいツリークライミング専用のロープを使い、特殊な結び目を手で引き上げながら、ゆっくりと上へ進んでいく。ロープには足をかける補助紐がついているので、握力がなくても、結び目を軽く上へ引き上げることができる。これが老若男女誰でも上れるポイントである。

 「高いところが苦手」という人でも、安全ベルトがついているので安心だ。また、上る速度を競うものではないので、ゆっくり上った方が、その魅力を理解することができる。
 高い木に登ると、普段と違った非日常的な開放感や達成感を得ることができる。ツリークライミングジャパンの創設者・ジョンさんは、「ツリークライミングを通して人々が樹に興味を持ち、放置された森に人が手を入れることの必要性に気付いてくれる。昔の人は森との付き合い方、利用の仕方を良く知っていた。ツリークライミングを通して忘れ去られた森との接し方を学んでほしい」と語っている。        
梯子を使って木に登る
モンキーロープ

 木と木の間にロープとスラックライン(綱渡り用の幅広のロープ)をつないで渡る。子どもたちのバランス感覚や集中力を鍛えることができる。
 子どもたちは、モンキーロープにぶら下がり、鈴なりになるほど人気があった。
森の恵み・アイコ(ミヤマイラクサ)入りの山菜汁

 昼食は、プラザクリプトンの料理人が調理した山菜汁と、持参したお弁当を広げて食べた。森で思いっきり遊び、森の恵みをいただく。言わずとも、美味いに決まっている。
▲昼食後、「森林学習展示室」で学ぶ
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 木登りやモンキーロープで遊ぶにしても、大人は「危ないから、ヤ・メ・ナ・サ・イ」と言いがちである。しかし「危険は、体験してこそ身に付くもの」。小さなケガや失敗から、危険回避の方法を、頭ではなく身体で学ぶ・・・これは昔も今も同じである。だから大人は見守るだけ・・・自己責任で自由に遊ばせることも大切である。
参 考 文 献
「゛読む゛植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「森の楽校」(小林毅、山と渓谷社)
「会津の民俗芸能 歌と踊りと子どもの遊び」(会津若松市)