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2015森の学校⑤ 八幡平森林セラピー体験

 2015年6月19日(金)、森の学校第5回 「八幡平森林セラピー体験」が開催された。一般参加者、森の案内人等56名が参加。これ以上ない好天に恵まれ、森と水の癒しの里「八幡平」のパワーを五感で存分に味わった。また八幡平森林セラピーロード沿いには、コバイケイソウやレンゲツツジ、ワタスゲ、イワカガミ、ハクサンチドリ、マイヅルソウ、キヌガサソウなどの草花を観察、大沼の美しい景色を眺めながら昼食を楽しんだ後、後生掛温泉で心身ともにリフレッシュした。「森林セラピー体験」を通して、「ココロとカラダの健康づくり」に役立つ森林の新たな効果について学んだ。

●内容/八幡平森林セラピーロードを歩く、五感を使ってリラックス、自然観察、温泉
◆主催/秋田県森の案内人協議会
◆協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会 
◆協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
八幡平森林セラピーロードMAP

 「八幡平森林セラピーロード」は、秋田県と岩手県にまたがる八幡平国立自然公園内にある。アオモリトドマツやブナの原生林の中を歩くルートは、蒸ノ湯森林セラピーロード、後生掛森林セラピーロード、大沼森林セラピーロードの3つのルートがある。

 今回のコースは、蒸ノ湯森林セラピーロードと大沼森林セラピーロード
 ふけの湯(E)~大谷地分岐(D)~八幡平ビジターセンター・・・距離2.8km、所要時間約60分
 八幡平ビジターセンター~大沼遊歩道・・・距離1.3km、所要時間約20分
 源泉・秘湯の宿「ふけの湯」が起点。出発前に準備体操をした後、森林セラピスト兼心理カウンセラーの資格をもつ森の案内人・奥山俊靖さんの指導で、森林セラピー体験を通して、その癒し効果を高める方法について学んだ。
森林セラピーとは

 これまで感覚的に語られてきた「森林浴」の癒し効果を科学的に解明し、「ココロとカラダの健康づくり」に活かそうという試みで、一歩進んだ「森林浴」ともいえる。
「森林セラピー基地」「森林セラピーロード」とは

 森の香りや空気の清浄さ、美しい森の色彩、景観などが人の生理に及ぼす効果について、科学的に実証され、さらに関連施設などの自然・社会条件が一定の水準で整備された地域を森林セラピー基地として認定されている。その科学的効果の検証がなされた散策路を森林セラピーロードという。

 現在、全国60(森林セラピー基地55ヶ所、セラピーロード5ヶ所)の森が認定されている。秋田県では、鹿角市が唯一「森林セラピー基地」に認定され、5つ (八幡平森林、湯瀬渓谷森林、東山森林、黒森山森林、中滝森林) のセラピーロードがある。
▲起点「ふけの湯(E)」 ▲ガクウラジロヨウラク

 「八幡平が有名になり始めたのは、奇湯ふけの湯からではなかろうか。これは人間の浸る湯ではなく、人間を蒸かす湯であった。浴舎は山小屋のように中央に通路があって、両側の土間の上にムシロを敷き、浴衣一枚で横になると、下から湧いてくる空噴きに蒸されるのである。」(「日本百名山」深田久弥、新潮文庫)
▲タニウツギ ▲オオカメノキ
▲マイヅルソウ ▲キヌガサソウ
▲タムシバ ▲秋田杉の間伐材を使用した木橋
▲大谷地分岐(D) ▲大谷地に咲き乱れる高山植物を鑑賞
▲背後の色鮮やかなレンゲツツジと湿原を白色に染めるワタスゲの群落
▲ナナカマド ▲ツマトリソウ
▲イワカガミ ▲ミツガシワ
▲ブナの巨木が連なる森をゆく

 現代人は、自然から遠くなるにつれて、ストレスは増大・・・そんな「ストレス社会」と言われて久しく、うつ病や認知症などの精神疾患も年々増大している。さらにメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)など健康に対する不安も拡大している。森林は、こうした現代人が抱える悩みを解消してくれるパワーを持っている。
森林セラピーの効用その① 「 ストレス解消」

 森は、「母なる森」と呼ばれるように、人々を優しく包み込み、ストレスを解消すると同時に、心身ともに元気にしてくれる。
森林セラピーの効用その② 「免疫力アップ」

 ガン細胞を防ぐナチュラルキラー細胞が増えていることが、近年実験で実証されている。
森林セラピーの効用その③ 「フィトンチッド」

 フィトンチッドとは、樹木などから発散される殺菌力を持つ芳香性の物質である。リフレッシュ効果、消臭・脱臭効果、抗菌・防虫効果があり、人に対しては自律神経を安定させる効果がある。
森林セラピーの効用その④ 「五感を使ってリラックス」

 森の中を歩くと、眠っていた五感が研ぎ澄まされる。森の葉が風に揺れる音、水の流れる音・瀬音、野鳥の囀り、カジカガエル、セミなどの天然の音は、血圧の低下や脳活動の沈静化に効果がある。木の葉や幹を触る、巨木に抱きつく、森林美を見る、木の香りを嗅ぐ、名水や渓流魚、山菜、木の実、キノコを味わうなど、五感で味わう森林のパワーで心と体を癒すことができる。もちろん、人の五感機能を回復・改善するのにも役立つ。
森林セラピーの効用その⑤ 「ウォーキング効果」

 森林浴をしながら歩けば、疲労度が軽減され、快適にウォーキングできる。だから、普段より運動量をあげることができる。さらに、血圧の正常化や足腰の筋力強化、メタボリックシンドローム改善効果、ひいては、心身の健康維持・増進、疾病の予防が期待できる。
 五感を使ってウォーキングするだけでなく、森の案内人の方々から樹木や草花の名前、見分け方、名前の由来、薬用効果などについて指導を受けながら、標準の倍近い時間をかけて森林セラピー体験を楽しんだ。
▲ホオノキ ▲ブナ
▲ズダヤクシュ ▲ギンリョウソウ ▲ヤグルマソウ 
▲エンレイソウ ▲ウワミズザクラ
▲森の恵み・サワモダシ(ナラタケ) ▲ツクバネソウ
▲川を渡ると、ほどなくゴール ▲ふけの湯コース終点・八幡平ビジターセンター
▲高山植物が咲き乱れる「大沼森林セラピーロード」
▲レンゲツツジの花園 ▲イソツツジ
▲参加者は、美しい花の撮影に夢中
▲ヤチダモ ▲ダケカンバ ▲アオモリトドマツ
▲ミネカエデ ▲ニッコウキスゲ
▲ハクサンチドリ ▲コウホネ ▲リュウキンカ
▲コバイケイソウ
▲後生掛温泉

 森林セラピー体験の後、汗を洗い流し、心身ともにリフレッシュするには温泉が欠かせない。八幡平森林セラピーロードは、起点、終点に、ふけの湯温泉、大深温泉、後生掛温泉など、歴史ある秘湯が数多く点在している。より効果の高い森林セラピー体験と温泉がセットで楽しめるのが大きな魅力である。
▲大深温泉
参考その1・・・後生掛森林セラピーロード

 大深温泉から後生掛温泉まで距離2.3km、所要時間は約50分。左手に「せせらぎの音」を聞きながら、古の人々が歩いたであろう記録として、ブナの幹に刻まれたナタ目を眺めながら古道を下る。終点は、火山活動の博物館として有名な「後生掛自然研究路」を経て後生掛温泉に至る。
参考その2・・・湯瀬渓谷森林セラピーロード

 両岸とも断崖絶壁が続く湯瀬渓谷沿いに遊歩道と見所の案内看板、随所に休憩用の東屋、ベンチなどが整備されている。

 湯瀬ホテル~笹の葉橋駐車場~国道282号線横断~大地平農村公園~鹿角市役所八幡平支所 距離4.7km、所要時間70分
▲起点「湯瀬ホテル」 ▲湯瀬渓谷沿いに走る森林セラピーロード
▲獅子淵と藍桶 ▲菅江真澄の道「天狗橋」
▲森と水の癒しの里「八幡平」のパワーを五感で味わい、心身ともにリフレッシュした皆さん。

 都会では、コンクリートの建物に囲まれたアスファルトの上を歩くしかないが、それではセラピー効果は期待できない。今回の森林セラピー体験を通して、「森と水」のもつ癒しのパワーで、ストレス低減や五感を使ってリラックスできる効果を実感できた。これまで、無機質な街中を散歩していたが、これからは、できるだけ身近な里山や森林浴とせせらぎの音を楽しめるような森林公園などを選んで散歩することを心掛けたいと思う。「森と水、美しい花々」のパワーに改めて感謝!!
参 考 文 献 等
パンフレット「森林セラピー基地 森と水の癒しの里 かづの」(秋田県鹿角市)
HP「森林セラピー総合サイト