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2015森の学校⑧ 里山の手入れ&ミョウガ採り体験

 2015年8月30日(日)、森の学校第8回森の案内人と一緒に里山の手入れ&ミョウガ採り体験が、秋田市雄和繋地区の里山で開催された。今回は、森の案内人の方々が里山林の保全活動を行っている現場を視察するとともに、ミョウガ採り体験や枝打ち体験、里山周辺に自生している草花約20種ほどの自然観察を行った。

●内容/里山林の保全活動視察、枝打ち・ミョウガ採り体験、自然観察 ▲対象/一般
◆主催/秋田県森林学習館・プラザクリプトン
◆協賛/(一社)秋田県森と水の協会
◆協力/秋田県森の案内人協議会
森林づくりのためのフィールド安全対策、注意点(講師:進藤インストラクター)
▲スパイク付き長靴 ▲スパイク付き地下足袋、長靴

 森林づくりの現場は、刃物を使うので危険。さらに斜面が多く、作業中の滑落や転落は命取りになりかねない。だから、山に入り、歩き、作業する時には、身体を直接守るための服装と保護具が大切である。

 その安全対策として特に足ごしらえは重要。少々高価だが、滑りを防止できるスパイク付き長靴あるいはスパイク付き地下足袋を履く。頭には、ヘルメット、長袖シャツ、長ズボン、革手袋・軍手など。
 スズメバチは、黒いものを攻撃する習性がある。だから黒っぽい服装は避けて、白っぽい服装を身につけること。また、スズメバチは匂いに大変敏感なため、香水などの使用は避ける。
森林づくりには、「手ぬぐい」がオススメ

 汗ふき用にタオルも悪くはないが、手ぬぐいが断然オススメ。乾燥が早くてかさばらない。緊急時には、包帯や三角巾の代わりになったり、細く裂くとヒモとしても使える。山菜やキノコがあれば、風呂敷代わりにもなる。
熱中症に注意

 炎天下で激しい運動をすると、筋肉がケイレンしたり、熱中症になったりする危険が高くなる。適度な休憩と、スポーツドリンクなどで水分補給をしたり、塩分を補給する必要がある。
ミョウガ採り体験

 まずはミョウガ畑でミョウガ採り体験を行う。ミョウガの産地として名高い能代市では、株が枯死する根茎腐敗病が大発生し、産地の存続が危ぶまれる事態になったことがあった。工藤正さんのミョウガ畑は、栽培を始めて15年ほどになるが、そういう病気は一切ないという。
▲ミョウガの花・・・花も美味しく食べられる。
▲参加者はミョウガ採りに夢中 ▲採取したミョウガ

ミョウガ料理

 ミョウガの香り成分「アルファピネン」には、食欲増進、消化促進、血行促進、熱冷ましなどの効果があるので、夏バテ気味で食欲がない時に最適な食材である。料理は、つま物、薬味、吸い物、漬物、油炒め、天ぷら、田楽など。
枝打ち

 節のない価値の高い木材をつくるためには、ある程度木が育ってくると、下の方の枝を切り落とす必要がある。この作業を「枝打ち」という。ノコギリで枝打ちを行う場合、幹に一番近い枝の下に切れ目を入れてから、上から完全に切り落とす。
ノコギリの使い方

 ノコギリを使い慣れていない人は、たいてい押す時にもかなりの力を入れて木を伐っている。これでは効率が悪いばかりでなく、ノコギリを痛めてしまうこともあるので×。ノコギリは、手前に引く時に伐れるので力を入れ、押し戻す時は力を入れずに戻すのがコツである。
▲枝打ちしたものを利用して箸置きを作る。
下刈り

 農業の場合は、作物の生育を妨げる雑草を取り除かないと良い作物は育たない。林業の場合も同じで、植林したら終わりではなく、苗木の成長を妨げる植物を除去する必要がある。その作業を「下刈り」という。苗木が他の草木より背が高く成長するまでの間(植栽してから約5~10年)、毎年行う必要がある。
▲支柱の取り換え作業
▲刈払機による下刈り作業
 下刈りは、夏場に行うのできつい作業だが、草茫々の藪がなくなり苗木が姿を見せると、仕事の達成感を味わうことができる。こうした適正な管理をすれば、里山周辺の草花の種類も増し、生き物の多様性も高くなる。
由利地方で見られる黒覆面を再現

 野良仕事をする時、由利地方の女性は、奇妙な黒覆面をする。1977年当時、農繁期の羽越線沿線の調査では、1800名の女性の8割が覆面をしていたという。森の案内人の田口恵子さんに白い手ぬぐいで再現してもらった。覆面習俗は、昔の野良着によく似合う。腰にはナタまで下げている。全く知らない人が見れば、「九ノ一忍者」に見えるかもしれない。
里山の手入れを行っている周辺の自然観察
▲キブシの実 ▲ヤマハギ
▲ユウガギク ▲ノコンギク
▲ヌマトラノオ ▲キンミズヒキ
▲コアカソ  ▲クズ
▲オオマツヨイグサ ▲オモダカ
▲カタバミ ▲ヌスビトハギ
▲ボタンヅル ▲ツユクサ
▲ゲンノショウコ ▲ツリガネニンジン
▲ヤマジノホトトギス ▲再生した里山のキャッチフレーズ
 「森に遊び 森に学ぶ」

 里山周辺に自生していた草花は、20種余りを観察することができた。再生した里山のキャッチフレーズは、「森に遊び 森に学ぶ」。そういうフィールドにするには、生き物の多様性に富んでいなければならないが、もともと里山は生物多様性の宝庫・・・荒廃した里山でも、再び下刈り、ツル切り、除伐、枝打ち、間伐など、さまざまな人の手を加えることで、生き物の多様性を取り戻すことができる。
参 考 文 献
「森づくりワークブック 人工林編」(全国林業改良普及協会)