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2015森の学校⑨ 秋田県林業研究研修センター参観デー

 2015年10月3日(土) 森の学校第9回「秋田県林業研究研修センター参観デー」が同センターを会場に開催された。秋の味覚であるキノコ講座(室内講義、野外採取、キノコ判定)をはじめ、天然キノコの実物展示、森のクラフト体験、試験研究パネルの展示、樹木の花粉・マツノザイセンチュウの観察などが行われた。

◆主催/秋田県林業研究研修センター(018-882-4511)
■協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
天然キノコの実物展示・・・天然キノコの王様「マイタケ(舞茸)」

 今が盛りのマイタケは、岩見三内産。ミズナラの大木の根元に生える。天然のマイタケは巨大な株になり、極めて香りが良いのが最大の特徴。味も歯切れも素晴らしく、栽培品は足元にも及ばない。それだけに値段は高く、山のプロが採るキノコの筆頭である。料理は、秋田名物「きりたんぽ」などの鍋物、天ぷら、炊き込みご飯、土瓶蒸し、お吸い物、炭火焼・ホイール焼きなど。
▲独特の芳香が人気の「コウタケ(香茸)」

 アカマツなどの針葉樹や広葉樹が混じった林の中に列をつくって群生する。香り高い食用菌として珍重される。そのまま焼いても美味しいが、干すと良い香りが強くなるのがコウタケの特徴で、乾燥したものを五目ずしや炊き込みご飯に入れる。生食は中毒するので注意。
キノコのパネル展示  
試験研究パネルの展示、樹木の花粉・マツノザイセンチュウの顕微鏡観察コーナー
  1. 秋田県の海岸域に分布する広葉樹(ケヤキ、シナノキ、カシワ、ミズナラ)
  2. 日本海中部地震による津波の被害とマツ林による津波被害の軽減
  3. 抵抗性マツの開発に向けた取り組み
  4. ブナの結実豊凶予測とクマの出没予測
  5. スギ人工林の広葉樹林化と表土保全機能への影響
  6. クロマツと共生するきのこ(ショウロ、アミタケ、ベニタケ属、クロハツ、キシメジ)
  7. 低コストで売れるキノコを作ろう
  8. 拡がるナラ枯れと対策など
森のクラフト体験(第一研修室)

 森を歩くと、味のある木の枝、色づいた葉っぱ、かわいい花、どんぐりやまつぼっくりなどの木の実、草の種など芸術心をくすぐる素材に溢れている。秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンでは、そんな森の素材を使った「森のクラフト体験」を実施。
▲森のクラフト見本例
▲左は普通のクリ、右はトゲなしクリ

 トゲなし栗は、イガにトゲがない珍しい品種で、外皮は鳥海マリモのように緑が鮮やか。味や香りも普通の栗と変わらず美味しいとのことだが、クラフトの素材にもなる。
▲森のクラフト体験・・・子どもはもちろんのこと、大人でもつくり始めると病み付きに!
▲参加者の作品
キノコ講座(管理棟2階第二研修室)

 秋、森の恵みは、何といってもキノコ。秋田では、キノコ採りの人気が極めて高い。それだけに、毎年、毒キノコによる食中毒やキノコ採りの遭難が絶えない。特に今年は、8月以降、キノコ採りの遭難が相次いで発生していることから、注意喚起の呼びかけがあった。
▲阿部雅弘所長あいさつ ▲講師は、菅原冬樹上席研究員
毒キノコによる食中毒発生ワースト4
  1. ツキヨタケ(ヒラタケ、ムキタケ、シイタケ)
  2. クサウラベニタケ(ウラベニホテイシメジ、ホンシメジ、ハタケシメジ)
  3. ドクササコ(カヤタケ、ナラタケ、ホテイシメジ、アカハツ、チチタケ)
  4. カキシメジ(ニセアブラシメジ、チャナメツムタケ、シイタケ)
 ※( )内は、間違えやすい食用キノコ例
 日本で報告されているキノコは約3000種。図鑑として最も充実している「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」に掲載されているキノコですら、約1000種。名前のないキノコが圧倒的に多く、それを含めると1万種を超えるのではないか。だから、まだ多くのキノコには名前がなく、食毒不明。従って、知らないキノコには絶対に手を出さないこと。
 きのこは、生えている環境、気象条件、時季によって変化する。さらに幼菌、成菌、老菌の成長段階によって、姿形、色、大きさなどが大きく異なる。従って、写真が1、2点しか掲載されていない「きのこ図鑑」だけで判断するのは危険である。
野鳥の森でキノコ採取
▲毒・テングタケ ▲毒・ズギヒラタケ(スギカノカ)
キノコ判定(実習棟)・・・講師:「秋田きのこの会」初代会長の阿部さん
食中毒ナンバーワンのツキヨタケ

 ツキヨタケの幼菌、成菌、老菌に至るまで収集展示。成長段階によって、姿形、色、大きさなどが大きく異なるのが分かる。上の写真の中にシイタケが1個混ざっているが、分かるかな?
参考:天然状態のツキヨタケ
▲幼菌 ▲幼菌~成菌の間がシイタケと似ている
▲成菌になると、見た目は美味しそうに見え、ムキタケやヒラタケに似ている。
ツキヨタケと食用キノコの見分け方

 見分け方は、縦に裂けば一目瞭然・・・上の写真のように、黒いシミになっているのが毒のツキヨタケ。稀にシミのないものもあるので注意。
第二の識別法・・・シイタケの柄は3~10cmと長く強じんなので識別できる。
▲ムキタケ ▲ヒラタケ
 ムキタケは、ヒダが白く皮が簡単にむけるので識別できる。ヒラタケは、晩秋~春に発生するので、一般的にツキヨタケは姿を消している。ツキヨタケは、ごく短い茎とヒダとの境に隆起したリング状のつばがある。
▲食用のウラベニホテイシメジ ▲有名な食中毒菌・クサウラベニタケ

名人泣かせの異名を持つ「クサウラベニタケ」

 食用のウラベニホテイシメジとよく似ていて、判別が難しく、「名人泣かせ」の異名があるほど有名な食中毒菌。コナラ、クヌギ、シイなどの雑木林によく発生する。成熟したキノコのヒダは肉食だが、若いうちは白色で、シメジ類と間違えやすい。傘表面は乾くと絹状の光沢がでるが、ウラベニホテイシメジのように細かいかすり模様はない。傘肉は薄く、もろい。粉臭がある。ヒダは初め白色のち淡い肉食。柄は中空でつまむとつぶれる。イッポンシメジ属はほとんどが有毒なので、手をださないこと。
 野鳥の森で採取したキノコの判別。ほとんどが毒キノコであった。だから、確信のもてないキノコは、手をださない、食べないことが肝要である。判別できない場合は、信頼できる人にみてもらうか、林業研究研修センターに持ち込んで、キノコ博士に判別してもらおう。
 参観デーご来場記念として、当センター内で栽培されている栗がプレゼントされた。
栗の料理・・・ゆで栗、蒸し栗、焼き栗、栗ご飯、栗のおこわ、栗の渋皮煮、栗きんとんなど   
キノコ採り遭難を防ぐための対策
  1. 雨具、防寒対策、ライター、クマ避け鈴、笛、ナタ
  2. 雨具や服装、ザックカバーなどは目立つ色にする
  3. チョコレートやパンなど予備の食料、携帯電話
  4. 天気予報を確認し、悪天候が予想される場合は入山を中止する
  5. 地図と磁石、高度計で現在地を確認しながら歩く
  6. 単独で入山せず、家族か知人に行き先を告げる
  7. 同行者と声を掛け合い、お互いの居場所を確認しながら行動する
  8. キノコ採りは、基本的に午前中で終え、早めに下山する
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(山と渓谷社)
「キノコ狩りガイドブック」(伊沢正名ほか、永岡書店)
「詳細図鑑 きのこの見分け方」(大海秀典、講談社)
「キノコ採り遭難に注意」(秋田さきがけ 2015年9月27日)