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クリプトンの森便りその4

 真夏の早朝、クリプトンの森で野鳥を追い掛けていたら、左手に妙な殺気を感じた。振り返ってみると、特別天然記念物に指定されているカモシカであった。不思議と警戒する気配はなく、むしろ野鳥を追い掛けている私が逆に観察されていた。「好奇心が強く、人間を見に来ることもある」というが、そのとおりだと思った。ニホンカモシカは、世界中で日本にしかいない固有の動物。さらにクマと並んで、ブナ、ミズナラなどブナ帯の森を好む大型動物の代表である。
  • ホオジロの巣づくり・・・イネ科植物の茎や細根をくわえて、樹木見本園の散策路を歩きながら巣づくり用の資材を探し回る。ホオジロは、繁殖期になるとツガイで縄張りを持ち、低木の枝の上や地上に椀型の巣を作る。産卵期は4~7月。卵数は3~5個。
  • クリプトンの建物に営巣し、子育て中の親スズメ・・・スズメは、普通、年2回巣を作る。クリプトンの前庭にあるトチノキの実の上に、大量のエサをくわえて止まった。向かいの建物の巣に、卵からかえったヒナたちがエサをねだって盛んにさえずっている。
  • ヒナにエサを運ぶ・・・営巣は、写真では撮影できない奥の隙間にある。右上写真の窪みの右上から、エサをねだるヒナの声が聞こえる。上面の網を巧みに潜り抜けてエサを与えているようだ。
  • ヤマガラの幼鳥・・・ヤマガラは胸からお腹にかけて赤みがあるが、幼鳥はその赤みがほとんどないので識別が難しい。でも、よく見ると頭は白黒のツートーンカラー、顔と胸に薄い赤みがあるのが分かる。
  • 同じくヤマガラの幼鳥・・・樹木見本園の枯れた桜の木の幹に止まり、穴の中にいる虫を探していた。
  • 巣立ちしたばかりの幼いシジュウカラのヒナ・・・黒ネクタイが淡い幼鳥。「キキキー、キキキキー」と盛んにさえずり、親鳥にエサをねだる。
  • 樹木見本園に棲みついているヒヨドリ・・・樹木と最も密接な関係にあるヒヨドリは、クリプトンの森でも、最も良く見られる野鳥の一つ。壊れた樹木標識用のパイプの上に止まり、森の中にいる虫を探す。
  • セミを捕まえたヒヨドリ ・・・今、樹木見本園はセミの声がシャワーのように降り注ぎ、時にはうるさいくらいだ。そんな森の中を盛んにヒヨドリが飛び交っている。観察していると、大きなセミを巧みに捕らえていた。ヒヨドリの夏のごちそうは、やはりセミのようだ。
  • モズ・・・黒いカギ状のクチバシ、赤茶色の頭と眼の前後に黒い帯があり、尾が長いのが特徴。 
  • カワラヒワ・・・スズメと並んでよく見掛けるポピュラーな鳥
  • カケス・・・カラスの仲間で声は汚いが、姿は美しい 
  • メジロとコサメビタキ?・・・クリプトンの森では、メジロをよく見掛けるが小さいだけに葉に隠れてほとんど撮影できない。珍しく枯れ木に止まってくれたので、何とか撮影できた一枚。 
  • キジのメス・・・キジは、余り人を警戒しないので撮りやすい野鳥の筆頭だ 
  • コサメビタキ?・・・高清水公園で初めて見掛けた野鳥で、クリプトンの森にもやってきた。小さい割に目が大きく可愛いのでコサメビタキだと思うが・・・分かる方は、ご指導願います。 
  • ビンズイ(撮影は乳頭山)・・・ホシガラスを見たさに乳頭山に登ったが、残念ながら撮影できたのはビンズイのみ。繁殖期なのか、木の梢に止まって「ツィツィツィ、チーチーチー、ズィーズィーズィー」と盛んにさえずっていた。
  • 梅の実・・・実の片側に浅い溝があり、黄色く熟す。果実は、梅干し、梅酒、ジャムなどに利用される。
  • 風で落下したハクモクレンの実・・・これが熟すと中に赤い実ができる。
  • オニグルミ・・・ニホンリスやネズミ類などのげっ歯類が好んで食べる。クマも大好物だが、熟すと堅くて歯が立たないらしく、8月下旬から9月にかけて、まだ熟していない実を食べる。
  • トサミズキの実 
  • カリンの実・・・美味しそうに見えるが、堅くて生では食べられない。果実酒やジャム、咳止めの薬に利用される。 
  • 西洋すももの実 
  • ツバキの実・・・秋に熟すと3つに割れ、種子が現れる。種子を絞ると、椿油を採ることができる。 
  • 梅雨期に咲くアジサイ ・・・装飾花が手まりのような形に集まったアジサイは、改良された園芸品種。
  • ウワミズザクラの赤い実・・・やがて黒く熟す。果実酒としてよく利用される。もちろん鳥類やツキノワグマも好んで食べる。
  • ニホンカモシカMEMO・・・ニホンジカはシカ科だが、カモシカはヤギや羊と同じウシ科。ニホンジカの角はオスにしかないが、カモシカはオス、メス共にあるので雌雄の識別が難しい。また角は、ウシ科なのでシカのように毎年生え変わることがない。体重は30~40kg。シカより小型。
  • 食性・・・草食性で、草や木の葉、木の実や樹皮、果実、花など。落葉期には低木の冬芽などを食べ、冬の積雪時には、前足で雪をかき分けて食べ物を探し回る。
  • ブラウザーという食性・・・木の葉や広葉草本など比較的栄養価が高いものをツマミ食いする性格で、典型的な森林性の動物と言われている。
  • カモシカの生息分布・・・ブナ・ミズナラ林の分布に極めてよく一致する。外敵はツキノワグマだが、最近では急速に生息域を広げているニホンジカの影響を受けて、明らかに減少しているらしい。
  • 主に朝夕に活発に活動し、日中は洞窟や岩陰などで休んでいることが多い。夜間も活動する。
  • 林業被害・・・幼齢造林木の芽・葉を食べる食害。被害面積は、1970年代末に3000haとピークに達し、1980年代に急減。1980年代末には、シカによる被害が多くなり、今ではカモシカの数倍に達している。
  • 農作物被害もあるが、シカ、イノシシ、サルに比べると著しく低い。森林伐採と林床植物の増加は、シカと同じく好適な生息地をつくり出す効果がある。
  • 一頭一頭が縄張りをもち単独で生活する。縄張りの面積は10~30ha前後。一夫一妻。生息密度が低く、自然植生への影響は小さい。
  • 繁殖・・・10 ~11月に交尾。胎生で妊娠期間は210~220日。5 ~7月に1頭を産む。稀に双子や三つ子が産まれる場合もある。シカに比べると増加率は低い。離乳期は12月で以降自活。2~4歳までは母親の行動圏で生活。初産齢は、平均4歳。 
  • 樹木見本園の中に入ると、やはり幼齢木の葉をツマミ食いしていた。寿命は15歳ほど、最長20歳を超える。
 お腹が一杯になったら、藪の中に消えていった。恐らく、定番の木の根元や切り株の上などで休みながら食べ物を反芻するのであろう。森林生活者と言われる大型動物のカモシカが生息しているということは、それだけクリプトン周辺の森の恵みが豊かな証左であろう。