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クリプトンの森便りその6 

 クリプトンの森周辺には、キツネの糞が幾つか散見された。しかし、その姿は夜行性なのでなかなかお目にかかれない。野鳥撮影を兼ねながら、あわよくばキツネを撮りたいと思い、早朝に樹木見本園に向かった。野鳥や木の実を撮影した後、たまたま右手の薄暗い湿地帯を横断する散策路を覗くと・・・キツネがこちらに向かって歩いてくるではないか。上の写真は、私に気付き立ち止まった瞬間である。

 今年は木の実が凶作の予想であったが、オニグルミは豊作で、そのクルミを拾っては森のあちこちに貯えるニホンリスの姿が幾つも見られた。クリも大豊作、ミズナラとコナラのドングリは平年作程度は実がついている。だからブナの実が皆無であっても、森には生き物たちの食べ物がそれなりに実っているように思う。また、珍しく夏鳥のキビタキやアオゲラと同じくらいでかいオオアカゲラも樹木見本園にやってきた。
  • ヤマボウシの実を食べるヒヨドリ・・・ヤマボウシの樹上から「ピィーヨ、ピイーヨ」と、あのうるさい鳴き声が聞こえてきた。赤く熟すのを待ち切れず、ヒヨドリが大群でやってきてヤマボウシの実をついばみ始めた。 
  • 実を半分ほど食べたら、残りを口にくわえて飛び立った。
  • メジロとヤマボウシ・・・よく見ると、メジロも群れでやってきてヤマボウシの実をついばんでいた。いずれも鳥媒花を代表する野鳥だが、木の実も好んで食べる。 
  • 緑の森とヤマガラ 
  • 枯れ幹とヤマガラ・・・アカゲラ、コゲラが幹に穴を開けて虫をついばんでいた枯れ幹にヤマガラがやってきて昆虫類を捕食。 
  • 木漏れ日とコゲラ・・・「トロロ」と、コゲラ特有の低いドラミングが聞こえたので、音のする方向を見上げると木漏れ日の葉陰にコゲラが見えた。 
  • メジロとハルニレ・・・メジロの群れがハルニレの木にやってきて枝や葉についた昆虫類を捕食
  • キビタキのオス・・・鮮やかな黄色と橙色が美しいキビタキがモミジの木にとまった。樹木見本園では珍しい夏鳥だが、南に渡る途中だろうか。観察していると、地味なメスも一緒だった。
  • キビタキのメス・・・オリーブ褐色と地味で目立つ模様はない。
  • トビの飛翔・・・翼下面に白斑があるので識別できる。 
  • ジョロウグモ(クモ目)のメス・・・クモにはハネがなく、足が8本もあるので昆虫ではない。メスはオスより3倍も大きい。張り巡らせた網には、いつも下向きにしがみついている。
  • キアゲハ 
  • ミドリヒョウモン 
  • ルリタテハ 
  • ブタナとキジ
  • キジの幼鳥(オス)
  • オオアカゲラ・・・かつてはノロ川のブナ林で見たことがあったが、まさか樹木見本園で見られるとは思わなかった。アカゲラよりでかく、アオゲラほどの大きさ。脇腹に黒い縦斑があり、背中には逆八の字がない。頭頂部は黒いのでメス。オスは、アカゲラと同じく赤い帽子を被っている。
  • 飛ぶと翼の大きさに驚く
  • カワラヒワ・・・群れでやってきてスギの天辺にとまる。
  • ムクゲの白花
  • ヤマハギ・・・万葉集に一番多く登場する植物で、秋の七草の一つ。京都の梨木神社では9月中旬、萩祭りがある。
  • クサギの実・・・赤い星形のガクが殊の外目立ち、その中に藍色の果実がある。
  • ナナカマドの実・・・真っ赤な果実は、葉か落ちても残り、野鳥にとっては真冬の貴重な食糧。木の実が赤いのは、野鳥をおびき寄せる戦略色らしい。ツグミ、ヒヨドリ、シロハラ、アトリ、ムクドリ、イスカ、アトリ、レンジャク類、アカハラ、ルリビタキ、アオゲラ、コジュケイなど。
  • ガマズミの実・・・果実は赤く熟す。酸味が強く、生で食べても美味しい。野鳥も大好き。ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、キジ、キジバト、コジュケイ、メジロ、オナガ、アオゲラ、ヤマドリなど。
  • ツリバナ・・・秋に真っ赤な実がなる。目立たない花より実の方が観賞価値がある。
  • サワフタギの実・・・果実はゆがんだ卵形で藍色に熟す。
  • ヤブツバキの実・・・秋に熟すと3つに割れ、種が現れる。種を絞ると美容と健康に良いとされる「椿油」や食用油、薬品、石鹸の原料に利用される。
  • マユミの実・・・晩秋から初冬にかけて淡い紅色の果実が熟すと4つに割れ、中から赤い種子が出てくる。これは多くの野鳥の好物。メジロ、コゲラ、ヒヨドリ、ツグミ、キビタキ、ジョウビタキ、キツツキ類、シジュウカラなど。
  • カリンの実・・・中国原産の果樹。美味しそうに見えるが、堅くて生では食べられない。果実酒やジャム、咳止めの薬に利用される。
  • クリは大豊作・・・ブナの実は皆無だが、クリは大豊作。だからツキノワグマは、クリを腹いっぱい食べているらしい。
  • キツネ(ネコ目イヌ科)・・・猫のような光る眼に注目。夜行性で、瞳孔はネコと同じく縦長である。食性は、ネズミ、ウサギ、キジ、カモ、カエル、昆虫などを捕食するが、植物質も食べる雑食性。
  • 樹木見本園の入口に向かって歩いてきたが、私に気付いて立ち止まったところ。しばらくにらめっこしていたが、向きを変えて走るように逃げ去った。
  • キツネの走る速度は、クマよりも速い時速50kmほど、最高時速は70kmを超えるらしい。跳躍力は2m以上、さらにキツネは賢いので、狩りが上手なのもうなづける。
  • コナラのドングリ・・・コナラの葉は、葉柄が長くはっきりしているが、ミズナラは短い。ドングリの帽子は、ミズナラに比べて浅く外側の凹凸も浅い。昨年はナラ類のドングリが豊作だったので、今年は凶作の予想であったが、どうも平年作程度に実がついている。
  • ミズナラの実・・・ミズナラの葉の葉柄は短く、ドングリの実もコナラに比べて大きい。帽子もコナラに比べて深く、外側の凹凸も深い。 マイタケ採りで、奥山のミズナラの巨樹を何度も巡回したが、ドングリは結構落ちていた。ツキノワグマの食べ物は、ブナ林皆無と同じく、当初相当心配されたが、その後の天候が良かったのか、心配するほどでもないように思う。
  • カケスとドングリ・・・ドングリをターゲットに樹木見本園にやってきたカケス。のど袋にたくさんのドングリを入れて飛ぶ姿がよく見られる。樹洞や土中に貯蔵するが、それを忘れることも多く、そこから木が生えたりする。忘れっぽいカケスやネズミがドングリを運んで、数キロ離れた所にナラ林ができた例もあるという。  
  • オニグルミは豊作・・・ツキノワグマやニホンリス、ネズミ類の好物。
  • オニグルミの貯食行動・・・ニホンリスが落下したオニグルミを拾うと、その場で外側の果肉を丁寧に取り除き口にくわえて森のあちこちに隠す。 
  • クルミを口にくわえて猛スピードで走り回る。片時も休まず、クルミが落ちている場所と貯える場所を行き来する。貯食場所は、オニグルミの母樹から約20m以内で、意外に近い場所に集中して貯えていた。
  • クルミは、地面の落葉や分厚い苔の下、樹上の枯れた幹の隙間などに貯えていた。
  • 貯食行動中は、集中力が凄く、撮影している私には全く気付いていない。私が立っているすぐ傍まで来て、貯えようとした瞬間を撮ったのが、上の写真。さすがに近すぎたせいか、連写のシャッター音に気付いた。 
  • カメラの音に気付いて振り向き、警戒しているところ。すぐさま、遠くに走り木の上に上った。 
  • 樹上に貯える途中、私に気付いて警戒しているところ。
  • こんな面白い芸もする。何ともユーモラスで、見ていて飽きない。
  • 貯えたクルミを食べる・・・ニホンリスは冬眠しないから、貯えたクルミは食べ物がない冬に食べるのかと思っていた。ところが、せっかく貯えた場所から取り出し、すぐに食べたりしていた。森林総合研究所の調査によると、貯えたクルミの42%はすぐに食べ、58%が貯食した、とある。なるほど、納得。他のリスやネズミ類にとられる前に隠すのであろう。
  • 枯れた幹の隙間に貯えていたクルミを取り出し、安全な食事場所に移動する。
  • 安全かつ食べやすい水平な枝の上で、クルミを食べる。このリスのもう一つの食事場所は、クリの木の根元。一帯には、食べたクルミの殻がたくさん落ちている。貯食したクルミのうち、忘れたりして食べずに残るのはどれだけか・・・翌年の5月まで地上に放置され、発芽の機会を持ったのは7%程度(森林総合研究所)。
  • 参考HPニホンリスの貯食行動によるオニグルミの更新」(森林総合研究所)