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森の学校2016 第2回山菜講座 

  2016年4月30日(土)、森の恵み山菜を学ぼう!「山菜講座」は、秋田県林業研究研修センターで開催された。一般参加者は約100名。今冬は雪が少なく、早くも山菜採り本番を迎える中、室内講習では、山菜採りのマナーや遭難防止、山菜の栽培の留意点などについて学んだほか、野外の山菜試験地では、ギョウジャニンニクの見分け方、シドケやニリンソウと間違えやすい毒草・トリカブトの見分け方など山菜採りの基本を学んだ。

●内容/山菜採りのマナーと遭難防止、山菜栽培の留意点、試験地で山菜の見分け方など
◆主催/秋田県林業研究研修センター(018-882-4511) ▲対象/一般
■特典/ギョウジャニンニクの苗2株プレゼント
▲秋田県林業研究研修センター石田良春所長あいさつ

トリカブトとシドケを間違え食中毒(参考:2016年4月27日秋田魁新報)

 所長のあいさつにもあった食中毒は、4月23日、湯沢市の70代男性がトリカブトをシドケと間違って食べ、意識不明の重体に陥った。県内では1992年以降、誤認によって8件の食中毒が発生し、94年には横手市の男性が死亡している。また2012年4月7日、北海道函館市では、ニリンソウと間違え家族3人が食中毒を起こし、うち1人が死亡している。猛毒トリカブトの誤食による食中毒が絶えないことから、見分け方の詳細を後述する。
  • 須田邦裕講師による室内講義・・・山菜採りのマナーと遭難防止、山菜栽培の留意点、減反利用による山菜栽培、ギョウジャニンニクの天然自生地、種子から増やす方法などについて学んだ。
山菜採りのマナー
  1. 山菜が自生する山は、入山料の徴収や立ち入り禁止、山菜採り禁止区域(国立公園特別保護地域、私有地など)もあるので、採取の可否について確認すること。
  2. 山林、原野の所有者が栽培している山菜やキノコは、採らない。
  3. 株の掘り取りは厳禁。栽培で増やすには、種子のみ採取すること。
  4. 山菜は採り過ぎると、その場から消えてしまう種類が多い。間引くように採取すること。
    • 例1:タラノメ・・・3番芽までつむと芽が出てこなくなるので、採取を慎むこと。
    • 例2:ゼンマイ・・・褐色の胞子のうのついた男ゼンマイは採らずに残す。
    • 例3:ギョウジャニンニク・・・根元の白い部分が美味しいので根こそぎ採る人がいるが、それでは絶滅する。根を3cmほど残すようにハサミやナイフで切り取ること。
  5. 山菜は、決して独り占めしないこと。自然からの恵みは、皆で平等に分け合い、自然に感謝する心を忘れてはならない。
  6. ゴミは自分で持ち帰ること。もちろん、タバコのポイ捨て禁止。
  • 過去10年間の山岳遭難事故・・・秋田は、山菜ときのこの宝庫だけに、入山者も多い。その分、山菜ときのこ採りの遭難事故件数は、不名誉な日本一。その内訳は、山菜採りが断トツ一位、二位はきのこ採り、三位が登山となっている。
  1. 山菜採り・・・404件462人、うち死亡54人、行方不明13人、負傷82人 
  2. きのこ採り・・・132件147人、うち死亡29人、行方不明8人、負傷39人
  3. 登山・・・103件138人、うち死亡8人、行方不明2人、負傷51人
  4. 遭難者のうち65歳以上の高齢者が全体の7割。さらにベテランがいつもの山に1人で入って遭難するケースが多い。
山菜採りの遭難事故防止対策
  1. 採り慣れた場所であっても、一人で入山しない。
  2. 出掛ける時は、家族に行き先を告げる。
  3. 携帯電話と予備の食料(パン、チョコレート、飴など)をもつ。
  4. 欲張りは禁物・・・山菜採りに夢中になる余り、迷ったり、無理をして崖などから転落するケースが多い。目先の収穫より安全第一を心掛けること。
  5. 地図と磁石を持ち、現在地を確認しながら行動すること。
万一遭難した場合の対処法
  1. 落ち着いて行動し、体力の消耗を防ぐ。
  2. 夜間の行動は、ケガをするので慎む。
  3. 見晴らしの良い場所に移動し、携帯電話での連絡を試みる。
  4. 焚き火や手鏡で太陽光を反射させ、自分の位置を知らせる。
山菜採りで準備するもの
  1. 長靴又はスパイク付き地下足袋、脚絆、軍手、帽子、雨合羽、タオル、防虫網・防虫スプレー。
  2. リュックのほか、腰に下げるカゴ(コダシ)又は肩や首に下げる山菜採り専用の袋があれば、両手を使えるので安全かつ効率的に採取できる。
  3. おにぎり、パン、飲料、コップ、チョコレート、飴など・・・万が一に備え予備食も忘れずに。
  4. 新聞紙・・・採取した山菜は、沢水で濡らした新聞紙で包むと旬を保つことができる。さらに車に着いたら保冷剤入りのクーラーボックスに入れると、新鮮な状態で持ち帰ることができる。
  5. 万が一遭難した場合、携帯電話と予備の食料、ライター、防寒対策があれば助かる可能性が高い。
  6. クマ避け対策・・・クマ避け鈴、ラジオ、爆竹、クマ撃退スプレーなど
  • 野外講習・・・上の写真の山菜は、ギョウジャニンニク。今年は、山菜の出が早く、試験地では、ギョウジャニンニクやアイコ、シドケ、ホンナ、ヤマワサビなど、人気の山菜がほとんど生えそろっていた。これからブナ帯の山菜も本番を迎える。
▲ギョウジャニンニクの花芽 ▲天然状態のギョウジャニンニク
  • ギョウジャニンニクの見分け方・・・バイケイソウやスズラン、イヌサフランなどと似ている。判別の決め手は意外に容易で、右上の写真のように根際が赤い網目状の繊維に覆われていること、ニンニクのような強い臭いがあることである。
  • ギョウジャニンニクの定植地・・・上の写真のような半日蔭がベスト。畑地などを利用する場合は、30%ほどの遮光が必要である。
  • 猛毒・トリカブトの見分け方・・・上の写真は、今年の4月上旬、白神山地で撮影したもの。雪解けの早い日本海側のブナ帯では、トリカブトとニリンソウの大群落が目立つ。上の写真のように混生している場合が多く、葉の形だけでは区別が難しい。トリカブトの成長は、ニリンソウより早いので背丈が高いのがトリカブトとおおよその見当はつくのだが・・・。 
  • トリカブトの若葉の特徴・・・3~5つに深く裂け、 裂片の基部はクサビ形となり、互いに離れている。
  • シドケの若葉・・・標準和名の「モミジガサ」のとおり、モミジの葉に似ている。葉の切れ込みは、トリカブトほど基部まで切れ込まない。トリカブトの葉は、どう見てもモミジの葉には似ていない。
  • 天然のシドケ・・・葉の形がモミジの形に似ているのが分かる。
  • ニリンソウとの識別・・・猛毒トリカブトに似た植物は、花のないニリンソウの若葉ほど似たものはなく、最も注意を要する。両者は、生えてくる時期、場所が同じ上に、花芽や花がなければ、ほとんど識別不能なほど似ている。だから、命をかけてまで食用にする価値はないと思うのだが・・・どうしても食べたいと思う方は、上の写真のようにニリンソウの花芽や白い花を確認して採取するしかないであろう。 いずれ誤食を100%避けるには、ニリンソウは山野草として楽しむだけにとどめ、採取しないことに尽きる。
  • タラノメ 
  • ニョウサク・・・株の真ん中に出た若い茎をナイフで切り取る。
  • ホンナ(イヌドウナ)・・・秋田では、葉の付け根が大きなヒレのようになったヨブスマソウの変種・イヌドウナが良く利用されている。
  • アイコ(ミヤマイラクサ)の採り方・・・イラクサは全草に細かい刺があり、その刺にはヒスタミンを含んでいる。不用意に素手で触ると、痛く、痒くなるので、必ず軍手をはめて採る。腐葉土が厚い所では、土中に入った茎の部分は意外に深い。できるだけ深い根元から採取するには、手前に折り返すように折り採るのがコツである。
  • 特典/ギョウジャニンニクの苗2株プレゼン
  • 今年は雪解けが早く、ゴールデンウィークと山菜採りのシーズンが重なった。 この講座で学んだ山菜採りのマナーを守り、「目先の収穫より安全第一」を心掛け、「山菜王国・秋田」で山菜採りを存分に楽しんでほしい。きっとブナ帯の森の恵みの美味しさ、素晴らしさ、有難さを実感することだろう。
  • ブナ帯の谷で採取した山菜7種・・・左からホンナ(イヌドウナ)、ウド、タラノメ、ミズ(ウワバミソウ)、シドケ(モミジガサ)、アイコ(ミヤマイラクサ)、コゴミ(クサソテツ)。