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2016森の学校 炭焼き体験

 2017年2月4日(土)、2016年度最後の森の学校「炭焼き体験」が由利本荘市赤田地内で開催された。参加者は、34名。里山の再生を行っている森を散策しながら自然観察・動物の足跡を観察した後、メインの白炭窯の窯出し体験と炭火焼の試食、昼食は地元料理名人手づくりの食文化を味わいながら、赤田地区の元気ムラの取り組み事例の紹介や白炭と黒炭の違いなど炭に関する基礎知識、各団体の里山再生等に関する情報交換を行った。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/ロッカ森保全ボランティア、秋田県森の案内人協議会 
  • 里山の自然観察・動物の足跡観察会・・・自然観察指導員、森の案内人の方々の指導を受けながら冬の里山を歩く。 
オヤマボクチ(ヤマゴボウ) 矢印のような足跡は、秋田県の鳥・ヤマドリ
  • ウサギの足跡・・・ウサギは走る時、後足が先に着地するので、横に二つ並んだ足跡は後足、縦に二つ並ぶ足跡は前足である。マタギたちは、この足跡で逃げた方向を知る。周囲には一番多くみられた。
  • ジグザグに歩くのは、タヌキかアナグマだが、足跡をよく見ると、爪は4本なのでタヌキであろう。ちなみにアナグマの爪は5本。キツネは、モデルのようにまっすぐ歩くので、足跡は一直線になる。 テンは、シャクトリムシのように走るので、足跡が横に並ぶ。
カモシカの足跡 ガマズミの赤い実 
  • ガマズミの赤い実は鳥たちの好物・・・ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、キジ、キジバト、コジュケイ、メジロ、オナガ、アオゲラ、ヤマドリなどが食べる。だからこの里山周辺には野鳥たちもたくさんやってくる。 
  • 里山保全の材でつくった作品・・・竹林の除伐により発生した材料を加工し、周囲に自生しているヤブツバキ、マツ、ガマズミの赤い実、松ぽっくりを使った作品。茶会の席に飾る茶花のように、飾らない山野の自然そのままの素朴さが素晴らしい。作者は、竹工房さら代表泉谷健一氏。 
  • 炭とは・・・炭焼きは、無酸素状態に近いから木材そのものは燃えない。木材の成分が熱によって分解され、ガスや煙となって取り除かれ、炭素成分だけが固体となって残る。これが炭である。体積は約1/3に減るが、木材そのものの組織構造は変わらない。
  • 黒炭とは
    1. 木炭には、黒炭と白炭がある。焼き上がる頃、窯を密閉したまま火が消えて冷えるのを待つのが黒炭である。文字どおり見た目が黒い。
    2. 黒炭は、軟らかく、着火しやすいが、火力が弱く、長持ちしない。
    3. その分値段が安く、一般にキャンプのバーベキューなどに使われている。 
  • 白炭とは
    1. 白炭は、焼き上がる頃、口を開けて再び火を入れて高熱で焼き、窯から出した(上の写真)後、素灰を掛けて消化させる。その消し粉をかけた時に白い粉が付くので白炭と言う。
    2. 非常に硬く、叩くと高い金属音がする。
    3. 着火しにくいが、安定した温度を長時間保ち、新しい炭を途中補填しても、温度が下がらず焼きムラもできない。
    4. 蒲焼きや焼き鳥など炭火焼にこだわる飲食店で使われている。
    5. ガスがほとんど出ないので、室内のホリゴタツや火鉢に最適である。ただし値段は高い。 
  • 窯出し体験・・・ガスが燃え、炭が赤く黄金色になったら、窯出しをするタイミングである。その際、燃焼中の木炭は、1,200度前後の高温である。だから、窯出しの作業は極めて熱く、大変な作業。窯出し体験をする場合、ナイロン製の衣類や樹脂製のメガネなどは解けてしまうので特に注意が必要である。 
  • 窯出しの道具・・・先がL字型のカギのついた出し棒で引き出す。
  • 消し粉・・・引き出した炭は、速やかに素灰(土に窯の灰を混ぜたもの)をかぶせ、空気を遮断して火を消す。この素灰を消し粉と呼ぶ。消火した炭は、灰のついた白っぽい色をしていることから白炭と呼ばれている。 
 
  • 参考:阿仁銅山と薪炭(絵図「阿仁銅山働方之図」秋田大学鉱山絵図絵巻デジタルギャラリー)・・・絵図を見ると、銅の精錬に大量の薪炭材を要したことが分かる。だから藩は、銅山用の山留材、薪炭を伐り出す藩直営の山を設定していた。その範囲は阿仁や森吉にとどまらず、桧木内、小阿仁川流域、小猿部川流域まで拡大して設定していた。
  • 参考:阿仁銅山と旅マタギ・・・ 阿仁銅山の経営が赤字になると、藩は炭焼きの大幅なコスト削減を行った。天保10年(1839)10月、阿仁の請負人7人は、連名で炭焼きの請負値段引き上げを願い出ている。その文書には「従来の値段では、安くて妻子も養えない。だから他国へマタギ商売に赴いたりする者が後を絶たない。その旅マタギに出る者は、特に打当村と中村の山子に多かった。」と記されている。当時、阿仁地域では炭焼きとマタギを生業にしていたこと、阿仁銅山用の炭焼きの大幅なコスト削減が、他国へ出稼ぎ猟をする、いわゆる旅マタギを数多く輩出する大きなキッカケになったことが伺える貴重な文書である。
  • 炭火焼の試食・・・炭火で焼くと美味しいのは、遠赤外線が表面のタンパク質を高温で焼き固めるので、肉汁は中に閉じ込められる。さらに、その熱がほどよく中に伝わるので、外側はパリッと焼き目がついて香ばしく、中はジューシ―に焼き上がり、うまみもキープされるからである。
  • 除伐した竹と炭を使った作品
  • 地元料理名人手づくりの食文化を味わう・・・除伐された竹の器に盛られたガッコ4品、地元の食材を使ったタケノコの煮物、鶏肉と大根の煮物、枝豆、ユズ入り卵焼き、ゴマ豆腐、地元名物「夕顔汁」。除伐した竹に草木を挿した素朴な飾りがさりげなく添えられている演出も素晴らしい。
ロッカ森保全の会女性部料理名人のお二人 竹工房さら代表泉谷健一さん
  • 持参したおにぎりと、身も心も温まる手づくりの逸品を味わいながら交流を深めた。ご馳走様でした。
  • 情報交換会 
赤田地区町内会副会長工藤さん ロッカ森保全の会代表高野修さん
  • 赤田地域の元気ムラの取り組み・・・赤田地域には、全国的にも珍しい神仏混合の祭り赤田大仏祭りや赤田獅子舞など伝統芸能が数多く残されている。しかしながら、65歳以上の高齢化率は、県平均を大きく上回る44%。県や市からの支援を得て「あきた元気ムラ」に登録。現在、元気ムラの取り組みは、4つの部会で構成されている。
    1. 直売所部会・・・平成24年3 月下旬に山菜や野菜中心の「赤田ふれあい直売所」 をオープンさせ、それに伴い設置。平成28年には「赤田ふれあいスーパー」オープン。
    2. ピザ・そば部会・・・住民が講師になってピザづくり体験、そば打ち体験を実施。
    3. 人材育成企画部会・・・大仏や三十三観音霊場、六ケ村堤などの歴史遺産、赤田大滝や東光山などの自然遺産、赤田大仏祭りや赤田獅子舞などの文化遺産に恵まれているので、地域全体をガイドできる人材の育成を行っている。
    4. 特産品部会・・・平成26年1月、食品加工所が完成。 山菜の水煮商品を真空パックし、千葉県柏市の京北スーパーへ出荷。地元産の山菜だけでなく、県内の元気ムラと連携して「リレー出荷」を行うことで、販売期間、販売量の充実を図っている。現在は総菜も実施しているという。
 2017年度森の学校「元気ムラの旅シリーズ」は、地域資源を最大限活かして多くの成果を挙げている由利本荘市赤田地区を予定しています。また、HP「モリエールあきた」のアクセス数も、年々増え、2017年度中に200万アクセスも視野に入ってきました。これまで懸案となっていた特集「樹木シリーズ」の編集も開始しています。乞うご期待ください。