本文へスキップ

平成29年度緑の交流集会(あきた白神体験センター)

 2017年8月2日(水)~3日(木)、「平成29年度秋田県緑の交流集会」が世界自然遺産白神山地の麓に位置する「あきた白神体験センター」(八峰町八森)を会場に開催された。今回は、 東日本大震災と福島第一原発事故によって甚大な被害を受けたふるさとの森林再生に尽力している福島県緑の少年団育成協議会と猪苗代町立緑小学校が特別参加し、県の枠を超えて交流を深めあった。参加者は、5団体42名(児童35名、引率者7名)。好天に恵まれた一日目は、御所の台里山トレッキングと貝がらストラップ作り、二日目は夏の暑さを吹き飛ばすシーカヤック体験と海辺の自然観察が行われた。
 秋田県緑の交流集会は、県内の緑の少年団結成校、緑化や森林・環境教育活動等に積極的に取り組んでいる学校・エコクラブ等の児童生徒が、自然体験や共同生活を通じて交流を図りながら、水と緑を愛する心を育むことを目的に、毎年8月に開催している。
  • 主催/秋田県、公益社団法人秋田県緑化推進委員会
  • 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン、秋田県森の案内人協議会、あきた白神体験センター
  • 参加団体・・・猪苗代町立緑小学校、福島県緑の少年団育成協議会、ボーイスカウト秋田31団、ボーイスカウト49団、マックスバリュー東北秋田緑の少年団、さくら学童保育クラブ「さくらシャインキッズ」 
  • あきた白神体験センター(八峰町)・・・ 世界自然遺産白神山地やハタハタの海で知られる日本海での自然体験、郷土食づくりの体験、自然の素材を活かした創作活動の体験など、さまざまな体験ができる宿泊施設。平成197月に秋田県が建設し、八峰町が運営管理を行っている。
  • あきた白神体験センター所長あいさつ  
  • 秋田県森林整備課眞坂班長あいさつ 
  • 福島県猪苗代町立緑小学校のあいさつ
  • 2018年、第69回全国植樹祭は福島県で開催・・・開催理念には、「東日本大震災及び原子力災害により今なおそ12 万人の県民が避難生活を送っています。長年、慣れ親しんできたふるさとからの避難を余儀なくされている住民の皆さんが、ふるさとへの帰還を無事成し遂げるためには、生活インフラの復旧、国や市町村が行う除染等による放射線量の低下、防災機能を高めた林帯幅の広い海岸防災林の復旧 ・再生 など、安全・ 安心に結びつく森林を確実に整備していくとともに、より親しみやすい森林環境を創造する必要があります。このため私たち福島県民は、全国植樹祭を本県の森林再生の取組の目標とするとともに、国内外からの復興支援への感謝の気持ちを広く発信するシンボル事業として、県民が一丸なって取り組みます。」
  • アイスブレイクゲーム・・・初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすために行うゲーム。森の案内人・大石さんを講師に、鼻と耳つまみ、人間知恵の輪、関所やぶりなどが行われた。 
  • 御所の台里山トレッキングルート図・・・上図の赤い線のルートを歩く。
  • トレッキングクイズ・・・コースの途中に、トレッキングクイズが掲示されている。グループのメンバーで協力して解答用紙に答えを書く。
  • クマ対策・・・事前調査を行った際、御所の台ルートには、クマの糞やアリの巣を掘った痕跡があったので、クマ対策には万全を期した。各班のガイドやインストラクターは、クマ避け鈴を腰やバックに下げ、万が一に備えてクマ撃退スプレーを腰に下げる。さらに先頭は、ルートの要所要所で爆竹を鳴らしながら歩いた。
  • 御所の台里山トレッキング・・・6班編成で御所の台に入る。先頭は、白神山地の森と海、ジオパークにも詳しい地元の森の案内人・辻正英さん。
  • 森の中に入ると、なぜ涼しいのか・・・森の中に入ると、天然エアコンのようにヒヤーッと涼しさを感じた。森の中と外との温度を比較したデータによると、森の中の方が5度程度低い。それは、天を覆い尽くす葉によって陽射しが遮断されるだけではない。太陽の熱量を100とすれば、樹木の蒸散によって奪われる熱量は何と6割にも達し、地表に届くのはわずか4割に過ぎないという。
  • ケヤキの樹皮・・・若い木は滑らかな灰色で、小さなブツブツ(上右写真)が散在している。老木になると、不規則な雲のような形が、めくれて剥がれるようになる。このめくれた隙間に、冬の間のねぐらにする昆虫もいる。幹にセミの抜け殻があった。
  • トレッキングクイズを解く・・・クイズは三択形式で、例えば「里山には、カモシカが住んでいます。カモシカは、次のどれでしょう」、「磯遊びでよく見かけるカニは、イワガニといいます。イワガニは、次のどれでしょう」、「早春の山で゛まず咲く゛のがマンサクです。マンサクの花は、次のどれでしょう」など。班長がクイズを読み上げ、みんなで解答を考える。
▲ホオノキの根元にあったクマの爪痕  ▲アリの巣を掘った穴の跡 
  • 夏、ツキノワグマの食性・・・夏は、食べ物が少ないので、主にアリの巣やハチの巣を狙って食べる。畑のトウモロコシや養蜂被害が増えるのも真夏である。トレッキングルート沿いには、クマがアリの巣を掘った痕跡が数ヵ所あった。さらにホオノキの根元には、クマの爪痕がはっきり刻まれていた。これはナワバリを主張するサインであろう。
▲ヤマハギ  ▲クジャクシダ 
▲クズ ▲キンミズヒキ
  • 「癒しの鐘」を鳴らす
  • 松ぼっくりとエビフライ・・・松ぼっくりの中の種を、ニホンリスやネズミが食べた残骸を「エビフライ」と呼んでいる。アカマツの球果には、40~50個の種が入っている。この種を取り出すためにリスなどが鱗片をかじって剥がす。果軸を刈り上げたように綺麗にかじっていればネズミ、長いヒゲ状の残骸が残っていればニホンリスの可能性が高い。
  • サルナシの実・・・猿が好んで食べる梨のような実であることから、漢字で「猿梨」と書く。甘酸っぱく美味しい。ハタハタ館の人気ソフトクリームは、この実を使ったサルナシソフトクリーム。猿やツキノワグマは、この実を大量に食べて移動した後、糞をするので種子散布に貢献している。
  • サンカクヅル・・・果実は球形で、秋に黒く熟すと食べられる。
  • クマの糞・・・尾根付近のトレッキングロードにあったツキノワグマの糞。辻さんによると、御所の台には以前からクマが出没しているが、これまで人に悪さをしたことがないという。残飯や生ごみを捨てたりしないなど、人とクマとの共存がうまくできているからであろう。
  • ギンドロ・・・葉の裏が白いのが特徴。中央アジア・ヨーロッパ原産で、明治中期に渡来。 
  • 葉陰越しに見える日本海の眺望がすばらしい・・・八森漁港から能代、男鹿半島までくっきり見えた。ハタハタの群れは、男鹿の北浦から八森に向かって一直線に押し寄せるというのがよく分かる。
  • エゾノコリンゴ・・・白い花はズミによく似ているが、葉は裂けない。果実は、直径約8mmと小さい。 
  • エゴノキとヤマガラ・・・エゴノキの果皮には、有毒なサポニンが含まれている。それを食べる鳥はヤマガラだけ。ヤマガラは両足で実をはさみつけ、器用にくちばしでつついて有毒な果皮を割り、中の種子だけを取り出すことができる。さらにその実を大量に貯食する習性があり、種子散布に大きく貢献している。
  • 松枯れ被害・・・松枯れを起こす犯人は「マツノザイセンチュウ」という2ミリにも満たない外国からやってきた生物。このセンチュウを松から松へ運ぶ共犯者が「マツノマダラカミキリ」。センチュウは健康な松の樹体内で繁殖し、松を衰弱させる。衰弱した松はカミキリの絶好の産卵対象木となり、次々と枯れていく。その マツ枯れは、マツ砂防林の管理が悪いところで起こり、地球温暖化とともに北上している。
  • 株立ちするミズナラ・・・萌芽によって株立ちになった樹形は横に広く、光の獲得に有利である。
  • 八峰町まで達したナラ枯れ被害・・・カシナガが孔道を掘った木くずや糞などの混ざった大量のフラスがみられた。上を見上げると、夏なのに葉は枯れて紅葉しているかのように見えた。
  • ナラ枯れ被害その2・・・改めて、あきた白神体験センターから御所の台方向を遠望してみると、至る所でナラ枯れ被害が広がっているのに驚かされた。ナラ枯れは、長年続いてきた薪炭林としての山の管理が燃料革命によって途絶えたところで始まったと言われ、地球温暖化とともに猛スピードで北上している。里山は、常に利用しながら保全しなければならないことを、松枯れやナラ枯れ、里まで生息域を拡大しているクマたちが警告しているように思う。
  • 貝がらストラップ作り・・・八森の海岸で見つけた貝がらを使ったストラップ。
  • 作業風景
  • 完成した貝がらストラップ
  • 新しく友だちになった仲間と楽しくおしゃべりしながら夕食
  • シーカヤック体験・・・黒い砂が広がる砂浜と雄島の手前のテトラポットとの間で行われた。ライフジャケットとマリンブーツを着用するので、誰でも安心して楽しめる。
  • シーカヤックとは・・・数あるカヌーの一種で、人が持ち上げて移動できる海の船の総称。水かきが両端に付いたパドルを使い、二人で呼吸を合わせてこぎながら進む。安全性、操作性に優れ、初心者でも安心して体験できるのが特徴。
  • 「あきた白神体験センター」の講師から操作方法や注意点などを学ぶ。
  • いざ、日本海の海上散歩に出発・・・風がほとんどなく穏やかで、まさにシーカヤック日和。
  • シーカヤックの楽しさで笑顔全開・・・海面から数十センチの低い視点から広大なエメラルドグリーンの海原を滑るように進むと、まるで日本海と一体化したような錯覚に陥るらしい。とにかく目線が低く、水の上を移動する気持ちよさ、海上から見る日本海の景色の近さに、自然と笑顔も全開になるのであろう。
  • 海辺の自然観察・・・講師は、八峰町白神ガイドの会の皆さん。
  • 岩場で、ヤドカリやエビ、小魚などをつかまえると、海水を入れたトレイに入れる。頭ではなく身体で体験することに主眼を置いた自然観察に、子どもたちは夢中であった。特に動きが速く、石の下に隠れるカニをつかまえるのは難しい。それでも慣れてくると、カニハンターと呼びたくなるほど上手な子どももいた。
  • 子どもたちが採取した海辺の生き物たち・・・トレイに石や海藻を入れて、採取した生き物たちが逃げないように、安心して隠れることができる空間を設けている。
  • 海藻には毒がない・・・陸上の植物は、ほとんどの種が虫や動物に食べられないように毒をもっている。しかし、同じ植物の海藻には毒がない。海藻は一年のうち、わずか3ヶ月が旬で、海辺に森のように繁茂する。しかし、残りの9ヶ月はどこかに着床した胞子がゆっくり育っていて、肉眼ではどこにいるのかほとんど分からない。だから、わざわざ体に毒を蓄えなくてもいいようになったという。
  • 採取した生き物たちは、全て優しく海にかえす。
  • 白神を見守るスフィンクス・・・八峰白神ジオパークの一つで、あきた白神体験センターの海岸に見られる自然の造形・スフィンクス。確かにスフィンクスに似た印象を受けるが、むしろ右側の斜めに傾いた岩がライオンの身体と人間の顔を持った神聖な存在のように見えるのだが・・・。
  • ふりかえり・・・二日間にわたって「緑の交流」を体験した感想を書く。
  • 閉会式・・・県緑化推進委員会専務理事兼事務局長・石田良春さん、閉会のあいさつ
  • 最後に皆で記念撮影・・・「森林文化のくに・ふくしま県民憲章」には、
    1. 森林を敬い、あらゆるいのちを尊びます。
    2. 森林にふれあい、心豊かに生きます。
    3. 森林の恵みに感謝し、活かします。
    4. 森林を守り育て、未来につなぎます。
      と、謳われています。
     こうした心を尊重し、来年、福島県で開催される第69回全国植樹祭の成功をお祈りするとともに、県の枠を超えた「緑の集会」を通して、水と緑を愛する心の輪が一層広がることを期待したい。