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名前の由来、菅江真澄、タケノコ銀座・採り方、遭難に注意、皮むき、料理、保存、栄養・薬効、クマの食痕・糞
 チシマザサ(ネマガリダケ)は、秋田ではタケノコ、山形ではガッサンダケ、栃木ではジダケと呼ばれている。「ブナ-チシマザサ群落」は、日本海側のブナ帯を代表する森林植生で、その代表が世界自然遺産に登録されている「白神山地」である。チシマザサ群落では、初夏ともなるとタケノコたちが次々と生えてくる。

 タケノコは、雪国で最も人気が高い山菜の代表格だが、ツキノワグマも大好物。彼らはタケノコが生える場所を移動しながら、約一か月にもわたって食べ続ける。だから、クマ被害防止対策は必須である。
名前の由来

 チシマザサは、別名「ネマガリダケ」と呼ばれている。それは、地表の近くで根元が曲がっていることに由来し,漢字では“根曲竹”と書く。標準和名「チシマザサ」が命名されたのは1901年。学名は千島列島産の植物標本から名付けられたことに由来する。
菅江真澄「タケノコ(チシマザサの若芽・ネマガリダケ)」(1810年、男鹿の鈴風)

 「笹竹というシヌの子(クマイザサの若芽)は、三月の末に山で採り、また四月の半ばにはワラビとともに地竹というタケノコ(チシマザサの若芽)をとる。この六月になると、竹林のある家では大竹(ハチク)のタケノコを採って食用にする」
▲タケノコ銀座(乳頭山登山道) ▲急な木の根道終点には、タケノコを運ぶスノーダンプが幾つもデポされている(小和瀬川)
タケノコ銀座、採り方

 秋田でタケノコ銀座と呼ばれているのは、八幡平から乳頭山、秋田駒ヶ岳にかけての奥羽山脈脊梁ライン。タケノコ採りシーズンは、5月下旬からで豪雪地帯は7月中旬まで採れる。タケノコは笹薮の中に斜め上に伸びているので、反対側に軽くヒネリ上げれば、簡単に折り採れる。
▲八幡平のタケノコ
▲タケノコ銀座・八幡平のチシマザサ群落(大深沢)は、迷いやすく「魔の笹薮」と呼ばれている。

遭難に注意

 タケノコは、数ある山菜の中でも間違いなく横綱級の美味さ・・・それだけにタケノコ採りの人気は高いが、早朝、魔の笹薮に飛び込み、タケノコ採りに夢中になる余り、方向を見失い、遭難するケースが後を絶たない。美味しいタケノコ採りには、遭難、そしてクマ被害という落とし穴があることも忘れずに。
タケノコの皮むき

 100円ショップで売っている万能皮むき器が便利である。タケノコの先端から根元にかけて、一筋の切れ目を入れるだけで簡単に皮を剥くことができる。長刀のように伸びたタケノコは、節々が硬いので硬い部分を包丁で切り落とし、軟らかい部分のみを食用として使う。
料理

 アクがほとんどなく、味は上品で淡白、香りや舌ざわりもすこぶるよく、雪国では最も人気が高い山菜の一つ。採りたてのタケノコをその場で調理し食べるタケノコ汁は格別に美味しい。皮をむかずに、焚き火で焼いてから、味噌をつけて食べる焼きタケノコ、天ぷら、タケノコとブナカノカ(ブナハリタケ)の煮付けなど各種煮物、鍋物など、どんな料理にも合う。
タケノコ汁
 あたためた鍋にサラダ油で豚肉を炒め、水とタケノコを入れる。アクをすくいながらタケノコが柔らかくなるまで煮る。八分目ぐらい煮えたところで、コンニャク、ニンジン、味噌を入れ、味がしみこむまで煮込む。

焼きタケノコ
 採りたてのタケノコの根元のかたい部分の皮を取り除き、皮ごと炭火で蒸し焼きにする。焼けたら皮をねじるようにして抜き取り、アツアツに生みそをつけて食べると美味い。
タケノコの山菜鍋

 タケノコを主役にウド、ワラビ、ミズなどの山菜、サワモダシをどっさり入れた味噌仕立ての山菜鍋。
保存・・・缶詰、瓶詰、冷凍、塩漬け、味噌漬け
栄養、薬効

 ビタミンB、C、K、カルシウムも多く含み、デンプン、タンパク質、脂肪なども含まれているので、優れた健康食品、スタミナ源と言われている。ツキノワグマが一カ月以上にわたってタケノコを食べる理由は、この点にありそうだ。

 ビタミンB12は、美肌効果。疲労回復、便秘を抑え毒素を吐き出す。古くから喘息や心臓病に効くと言われている。
▲クマがタケノコの皮をむいて食べた食痕(6月上旬、八峰町真瀬川中ノ又沢県境稜線) ▲旬を過ぎた長刀のようなタケノコを食べた食痕(6月、太平山系)
▲100%タケノコを食べていたクマの糞(6月中旬、仙北市田沢湖町大深沢支流ヤセノ沢源頭)
タケノコ写真館
参 考 文 献
「薬効もある山野草カラー百科」(畠山陽一、パッチワーク通信社)
「山菜・薬草 山の幸利用百科」(大沢章、農文協)
「ひと目でわかる 山菜・野草の見分け方・食べ方」(PHP研究所)
「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社) 
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「山菜ガイドブック」(山口昭彦、永岡書店)
「山菜採りナビ図鑑」(大海淳、大泉書店)
「日本の山菜100 山から海まで完全実食」(加藤真也、栃の葉書房)
「山菜と木の実の図鑑」(おくやまひさし、ポプラ社)
「採って食べる 山菜、木の実」(橋本郁三、信濃毎日新聞社)
「おいしく食べる山菜・野草」(世界文化社)
「あきた山菜キノコの四季」(永田賢之助、秋田魁新報社)