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第3回林業体験学習~大仙市立豊成中学校

 2018年7月19(木)、平成30年度第3回林業体験学習が、秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンを会場に行われた。第3回は、大仙市立豊成中学校1年生13名を対象に行われた。
  • 内容・・・学習の森・森林散策、林業機械視察、森林計測、林業ユニフォーム撮影、森林計測内業、秋田の森林・林業、森林学習展示室見学
  • 学習の森・森林散策・・・指導は、森の案内人3名。2班に分かれて実施(1班7名、2班6名)。 
  • コナラの原木を使ったシイタケ栽培・・・スーパーで売られている菌床シイタケより遥かに肉厚で美味しいシイタケが出てくる。採取時期は、傘が完全に開いたものより傘が八分くらい開いたものが美味しい。 
  • ヤマボウシの実・・・花が終わると青い実が上向きにできる 。9月頃、赤く熟す。熟すと地面に落下し、そのまま皮を剥いて生でも食べられる。果肉には小さな種がたくさん入っていて、味は甘く、マンゴーやバナナ、あけびの味に似ている。生食のほか、乾燥させて食べる方法や、ジャム、果実酒など、使用用途が広い。
  • 参考:赤く熟した実に群がるムクドリ・・・クリプトン裏庭のヤマボウシに大群でやってきたムクドリ(2017年9月21日) 。その他ヒヨドリ、メジロ、キジなど野鳥の大好物。
  • ヤマナシ・・・まだ青くて小さいが、9~10月に黄褐色に熟す。果肉は、硬く味も酸っぱいため、あまり食用には向かない。日本なし(和梨)は、このヤマナシから改良されたもの。 
  • 松枯れ・・・問題「松枯れの原因であるマツノザイセンチュウという目に見えない虫はカブトムシがはこんでくる。〇か×か」。答えは「×」。 
  • 松枯れを起こす犯人は「マツノザイセンチュウ」という2ミリにも満たない外国からやってきた生物。このセンチュウを松から松へ運ぶ共犯者が「マツノマダラカミキリ」。センチュウは健康な松の樹体内で繁殖し、松を衰弱させる。衰弱した松はカミキリの絶好の産卵対象木となり、次々と枯れていく。  
  • カタツムリ
  • ヒメジョオン
  • オカトラノオ
  • ノリウツギ
  • アジサイ
  • ニホンカナヘビ 
  • ウワミズザクラの実・・・夏に赤くなった後、黒く熟す。 
  • 憧れの国際教養大学前で記念撮影
  • 国際教養大学「メタセコイヤの並木道」・・・大昔に絶滅した化石植物と思われていたが、1946年に中国奥地で発見され、「生きた化石」として有名になった。秋、針葉樹では珍しく美しく紅葉し、側枝ごと落葉する。成長が速く樹形も美しいことから、公園樹や街路樹として植えられる。
  • 間伐はなぜ行うのか・・・木が大きくなってくると、だんだん混み合って木同士の競争がはじまり、成長が次第に衰えてくる。木を間引いて本数を減らし(間伐)、残った木に十分な光と水分を与えて成長を良くするために行う。間伐は、50年間に3回ほど行う。  
  • 参考:森林整備のサイクル・・・木材用に植えられたスギ人工林を維持するためには、地ごしらえ・植付け→下刈り→除伐→間伐と、大変な労力が必要である。その後伐採適期に主伐した後、地ごしらえ・植付けへと戻り、このサイクルが繰り返されることによって健全な林業が継続できる。
  • 間伐した伐根の年輪を数える・・・約50年。
  • 年輪ができる仕組み・・・成長の良い春から夏にかけてできる細胞は形が大きく壁が薄く、成長が悪くなる夏から秋にかけてできた細胞は小さく押しつぶしたような形で壁が厚くなる。冬には細胞の成長が止まり、春になるとまた成長をはじめる。このようなことを毎年繰り返すので年輪ができる。だから四季の変化がない熱帯地方の木には年輪がない。
  • CLT(直交集成板)を床板に使った橋・・・CLTとはCross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料のこと。秋田県立大学木材高度加工研究所では、CLTを橋梁の床版として利用するための研究開発を行っている。仙北市田沢湖の林道に国内初のCLTの橋も完成・・・今後、コンクリート床版の代替として、地元の木材を活用して、CLT を床版に用いた既設橋梁の補修に利用されることが期待されている。 
  • 樹木の導管を観察・・・導管は、根から吸い取った水分・養分を上へ送る管のこと。植物は、葉の気孔から吸収した二酸化炭素と根から導管を通して吸い上げた水を原料として、太陽の光エネルギーと葉緑素の働きでブドウ糖をつくり、酸素を放出する。光合成によってつくられた「ブドウ糖」が、樹木はもちろん、森林生態系の動植物に必要なエネルギー源になる。
  • モグラ塚・・・モグラがトンネルを掘る際に出た残土を「モグラ塚」という。モグラのトンネルは、住居をはじめ、排出場、休み場、食物貯蔵庫として利用する。そのトンネルの補修や拡張によって掘り出された土が地表のあちこちに捨てられモグラ塚になる。 
  • ビオトープ・・・人工的に作られた様々な生き物が共生できる場所のこと。ここではオニヤンマの産卵やカエル類、サワガニなどを観察することができる。間伐して林内が明るくなると、新たに希少種の植物も見られるようになった。
  • 参考:アブラゼミ・・・夏、学習の森で「ジージージー」とうるさいほど鳴いているセミが「アブラゼミ」。今、あちこちでアブラゼミの羽化が見られる。それを狙ってヒヨドリたちが学習の森を飛び交い、アブラゼミを捕食する光景が見られる。
  • 林業機械視察(林業研究研修センター機械棟)・・高性能林業機械があれば、女性でも楽に、安全に作業ができる。講師によれば、機械の操作は、むしろ女性の方が上手いという。
  • 高性能林業機械とは・・・従来の林業機械に比べて高い性能を持ち、複数の作業を1台でこなす多工程機械のこと。上写真のハーベスタは、従来チェーンソーで行っていた立木の伐倒、枝払い、玉切りと集積作業を一貫して行うことができる機械。
  • 秋田県の高性能林業機械保有台数は352台で、全国3位。
  • フォワーダ(集材)・・・玉切りした材を荷台に積んで運ぶ集材専用の自走式機械。
  • ウィンチ付きクラップル(木寄せ)・・・木材をつかんでまとめる。
  • 森林計測・・・クリプトンのスギ林をフィールドに、様々な測樹器械を使って、樹木の直径を測る、樹木の高さを測る、樹木の材積を求める、販売価格はどれぐらいになるか計算する森林計測体験を行った。
  • 標準地調査・・・通常は1haだが、今回は10m×10m=100m2で実施。その範囲内にあるスギの直径、高さを測る。
  • スギの直径を「直径巻尺」で測る・・・木の周囲を測れば直径が表示される特殊な巻尺で、地上から1.2mの高さ(胸高直径)を測る。輪尺による測定より直径が大きく出る傾向がある。
  • スギの直径を「輪尺」で測る・・・輪尺(りんじゃく)と呼ばれる大形のノギスを使い、地上から1.2mの高さ(胸高直径)を測る。変わっているのは、2cm目盛りになっている点。奇数は切り上げ、全て偶数で表す。輪尺は、幹の周りを一周させ、一番狭いところを測る。  
  • 測竿でスギの高さを測る・・・どんどん伸ばして、スギのてっぺんまで届いたら目盛りを読む。測竿は10mまでしかないので、それより上は目測で読み取る。全て目測で高さを推定するより、正確に読み取ることができる。
  • ワイゼ式測高器を使ってスギの高さを測る・・・スギまでの距離を巻き尺で測り、ワイゼで木の根元と梢の角度から木の高さを測る。
  • ブルーメライス測高器・・・便利な距離計を備えているので、距離測定をする必要がない。ワイゼ式より精度が高い。
  • 参考:直角三角形の原理を応用・・・上図に示した角度α・β、水平距離Lを測り、樹高ABを求める計算式に当てはめることで樹高を求めることができる。
  • トゥルーパルス・レーザー距離計によりスギの高さを測る・・・起伏の激しい山の中で、巻き尺やワイゼを使って、1本、1本測るのは大変な労力を要する。現在は、木までの距離をレーザーで測定する装置と角度を測る装置を組み合わせ、内蔵している計算機で木の高を自動計算して表示する機械が開発されている。
  • 林業ユニフォーム撮影・・・明るいオレンジ系。誤ってチェーンソーの刃が当たっても切れないジャケットとパンツ、頭と耳を保護するヘルメットとイヤーマフ、両手にチェーンソーを持てば、格好いい林業マンに変身!
  • 森林計測内業・・・屋外で測ったスギの高さ、直径から木の体積である「材積」を求めることができる。その際、「立木材積表」を使って求める。 秋田県のスギ人工林に適用されている「立木材積表」を使って、材積を求める。縦に高さ、横に直径が表示されており、測定した数値が交差する位置の値が材積となる。
  • 販売価格はどれぐらいになるか・・・今回は利用率70%、A材(主に製材用20%)、B材(主に合板用50%)、C材(主にチップ用30%)と仮定し、県内のスギの価格(製材用、合板用、チップ用)をもとに計算する。結果は1ha当たり1班が447万円、2班が458万円であった。両班に大きな差がなかったことから、測樹結果はほぼ同じであったことが分かる。
  • 参考:スギ人工林に要する費用・・・50年間で231万円/ha(「平成20年度林業経営統計調査報告」農林水産省)。試算した販売価格から、スギ人工林に要する費用のほか、伐採、搬出・運搬などの経費を引けば、利益はほとんど残らないのが現状である。従って、近年、木を伐っても植林しないケースが増加している。
  • 昭和40年代に植栽したスギが50年生に成長し、伐採・利用できる林齢になっている。しかも秋田の人工林面積の92%はスギで、その面積23万8千haは全国1位を誇る。今、その豊富な資源を活用する時期を迎えているだけに、林業機械を活用した低コスト生産から木材を利用・販売できる若い技術者の確保育成が急務になっている。こうした林業体験学習を通して、将来は林業を職業選択の一つとして考えてくれることを期待したい。
  • 秋田林業大学校・・・民間と行政が連携し、オール秋田で「林業県あきた」を担う若い人材を養成する大学校。定員18名、研修期間は2年間で、高性能林業機械等の各種資格も取得できる。さらに「緑の青年就業給付金」が年間最大約137万円、最大2年間もらえる。
  • 就職先・・・森林組合(県内12)、林業会社(県内約100社)、製材加工会社(県内約120社)。ちなみに、2017年3月に卒業した1期生18人全員が県内の森林組合や木材関連企業に就職している。
  • 秋田林業大学校情報(美の国あきたネット)