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焼石岳Part1  焼石岳Part2

  • 花を愛でる焼石岳登山としては、秋田県東成瀬村三合目コースが、標高差が少なく(約620m)、急登がないので、最も楽なルートである。見所は何と言っても焼石沼周辺と姥石平のお花畑である。季節的には新緑と雪渓、そして雪解けとともに次々と咲き誇る6月頃が花のベストシーズンと言われている。
  • 「焼石沼」周辺は、雪渓が残る山々と雪解け水がほとばしる一帯にリュウキンカとミズバショウの一大楽園が出現する。7月中旬頃になるとミヤマキンポウゲが見渡す限り広大な群落をつくる。焼石岳(1548m)山頂に達すると、鳥海山、岩手山、早池峰山など北東北の主要な山々が望める。
  • 山頂の南東側に広がる標高1400mにある風衝湿原「姥石平」は、焼石岳最大のお花畑で、真っ白なハクサンイチゲと赤紫色のミヤマシオガマ、黄色のミヤマキンバイなどの花の美術館は素晴らしい。だから、東成瀬村コースを歩く場合は、山頂から引き返すのではなく、泉水沼~姥石平~九合目へと一周するコースが超オススメである。
  • 秋田県東成瀬村三合目コース
     三合目(930m)四合目大森沢(1040m)五合目釈迦ざんげ(1073m)六合目与治兵衛(1025m)七合目柳瀞(1087m)八合目焼石沼(1245m)九合目焼石神社(1430m)焼石岳(1548m)泉水沼(1432m)姥石平分岐(1421m)姥石平(1482m)九合目(1430m)三合目登山口(930m)
     山頂まで約3時間、姥石平一周が約1時間程度
  • 岩手県奥州市中沼コース
     中沼登山口(720m)中沼(920m)上沼(960m)つぶ沼コース分岐点(1040m)銀明水避難小屋(水 1170m)姥石平分岐点(1421m)泉水沼(1432m)焼石岳(1548m)焼石神社(1430m)姥石平(1482m)姥石平分岐点(1421m)中沼登山口(720m)
     上りの所要時間は、約3時間20分。今回のコースは、東成瀬村三合目から焼石岳を経て中沼登山口に至る全ルートを歩いてみた。(取材日:2014年6月17日) 
  • 中沼登山口(標高720m)・・・帰り用に車一台を置く(駐車スペース約40台)
▲国道397号線「焼石岳登山道入口」から急な坂道が続く横林道を走る。 ▲東成瀬村三合目登山口(標高930m)・・・駐車スペース約20台
▲マイヅルソウ ▲ホウチャクソウ
▲クロサンショウウオの卵 ▲沼の上にモリアオガエルの卵
  • 新緑が眩しいブナの道・・・四合目大森沢を過ぎるとブナの森も深くなる。  
▲フイリミヤマスミレ ▲カタクリ ▲スダヤクシュ
  • ブナ林の登山道を快適に進むと道が二分する。左は五合目釈迦ざんげへ、右は山頂を迂回するまわり道ルート。昔、牛を放牧するために通った道が右の迂回ルートであろう。いずれ牛が歩いた道だけに、広く歩きやすい。
▲大量に落ちていたブナの実
▲濃紫色のミヤマスミレ ▲イワカガミ
  • 五合目釈迦ざんげ(1073m)・・・正面に三界山から西焼石岳を望む。釈迦ざんげは、お釈迦様が懺悔した場所との伝説があるが、地元ではかつてマタギたちの集合場所だったらしい。ここから標高差60mほど下ると胆沢川源流の沢に出る。まだ雪が深く大量の雪渓があった。
  • 雪が解けたばかりの周辺には、バッケやカタクリ、ショウジョウバカマ、キクザキイチゲ、オオバキスミレ、ミズバショウ、リュウキンカ、ムラサキヤシオツツジなどが咲いていた。
▲バッケ
▲オオバキスミレ ▲キクザキイチゲ ▲ヤマブキショウマ
▲残雪と新緑が美しい胆沢川源流 ▲雪解けで増水した渡渉は3ヵ所ある
  • 今年の山は雪解けが遅く大量の雪渓が残っている。従って滑り止めとして軽アイゼンが必携である。また連日の雨で登山道もぬかるみ、沢も雪解けで増水している。だから登山靴ではなく、スパイク付き長靴で歩いてみた。これが最終的に大正解であった。
▲六合目与治兵衛(1025m) ▲次第に雪渓も目立つようになる
  • 「与治兵衛」の名の由来・・・昔、胆沢川源流の水を、県境の峰を切り崩し、平鹿郡醍醐の水田に水を引こうとした開拓者の名にちなんで付けられたという。
▲ブナの巨樹  ▲エンレイソウ ▲ショウジョウバカマ 
  • 六合目から七合目に向かう登山道は、緩い登りが続くが、新緑のブナ林が見事である。また雪解けの斜面には至る所にミズバショウとリュウキンカの群落が見られる。
▲ツバメオモト  
  • 七合目柳瀞(1087m)・・・小沢は雪解け水がほとばしり、一帯にミズバショウが群生していた。ブナ林から草原に出ると左手に胆沢川源流に懸かる滝の轟音が聞こえてきた。リュウキンカが咲き誇る湿地帯の脇を通って、ナメ滝へと向かう。しばしマイナスイオンとナメ滝を流れ落ちる冷風シャワーを浴びる。何とも心地よい。
▲雪渓に映えるリュウキンカ ▲変わった色のシラネアオイ
  • ブナ林を過ぎると登山道沿いは、花の道に一変する。キヌガサソウ、シラネアオイ、サンカヨウ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマキンバイ、オオバキスミレ、スダヤクシュなどの草花が登山道の両サイドを彩る。のんびり花の撮影を楽しみながら登ると、ほどなく焼石沼周辺のお花畑に着く。
▲キヌガサソウ ▲サンカヨウ
▲ミヤマキンバイ ▲ミヤマキンポウゲ
▲ミヤマツボスミレ ▲コバイケイソウ
  • 焼石沼近くになると、窪地にはまた雪がかなり残っており、花の最盛期には程遠い印象を受ける。しかし、良く見ると、雪が解けた湿地には、ミズバショウの芽が出始めた大群落が至る所に見られた。登山道沿いを湧水が流れる場所に来ると、ちょうど見頃のリュウキンカとミズバショウの大群落が連なっていた。
▲湧水流沿いにリュウキンカが咲き乱れている ▲人が掘ったような水路を流れる雪解け水
  • まずは冷たい雪解け水をコップに汲み、乾いた喉を潤す。昔、7月~10月、赤ベゴ(日本短角牛)を放牧していた頃は、焼石沼手前の湧水の傍に管理小屋があったという。恐らく、この周辺であろう。
  • 清流のシンボル・リュウキンカとミズバショウの一大群生地・・・奥の丸い山はモッコ岳、その左の山は三界山、その右手方向には南本内岳、焼石岳、西焼石岳が連なっている。その山々から湧き出す雪解け水は、この平らな湿地帯に流れ込み胆沢川の水の源になっている。清冽な水に恵まれた湿地帯・・・一帯はお花畑の別天地であることは容易に推測できる。
  • 心まで温かくなるような黄金色の花「リュウキンカ」・・・漢字で「立金花」と書く。仲間のエンコウソウは這うように茎を伸ばすが、本種は茎が立ち上がり「金色」の花を咲かすことから、その名がついた。
  • ミズバショウ・・・花の由来は、水辺に生えているので「ミズ」、花後に展開する大きな葉がバショウの葉に似ることから。
  • 八合目焼石沼(1245m)から西焼石岳(1511m)を望む
     焼石沼には、胆沢川源流から遡上したイワナだけでなく、ニジマスも生息している。恐らく、牛を放牧管理するための食料として放流したものであろう。10年余り前になるが、この沼で50cmほどの大ニジマスを見たことがあった。この天上の沼には、小物のニジマスも数多く生息していた。だから今もなお自然繁殖を繰り返していることだろう。フラットな水面は、ときおり魚のライズで波紋を描いた。
  • 北側から焼石沼に流れ込む小沢沿いには、大株のリュウキンカが群生している。また、雪が解けたばかりの草原には、バッケの大群生が広がっていた。ここから焼石岳までは約1時間・・・特に9合目までは、フラワーロードが連なり、展望も開けているので楽しい。・・・(次はPart2へ)
参考文献
  • 「焼石岳の自然を訪ねて」(一関の自然刊行委員会)
  • 「花の百名山 登山ガイド上」(山と渓谷社)
  • 山渓カラー名鑑「日本の野草」(山と渓谷社)
  • 山渓名前図鑑「野草の名前 春」(高橋勝雄、山と渓谷社)
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