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森の学校 炭焼き体験

 2018年2月3日(土)、2017年度最後の森の学校「炭焼き体験」が由利本荘市赤田地内で開催された。参加者は、37名。メインの白炭窯の窯出し体験と炭火焼の試食を行った後、好天に恵まれた里山を散策しながら自然観察・動物の足跡観察を行った。昼食はロッカ森保全の会女性部手づくりの食文化を味わいながら、白炭と黒炭の違いなど炭に関する基礎知識、来年度の森の学校の企画、各団体の里山再生等に関する情報交換を行った。
  • 主催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力/ロッカ森保全ボランティア、秋田県森の案内人協議会 
  • クマ問題の最大の原因は里地里山の荒廃(右の写真:小沼森林インストラクター)・・・少子高齢化時代を迎え、秋田県の高齢化率は日本一。それに伴い、里山の荒廃、耕作放棄地の拡大が加速度的に進んだ結果、奥山に生息していたクマは里へと生息域を拡大している。そうした里グマは、荒廃した里山で冬眠し、平均2頭の子どもを産み、いきなり私たちの生活圏に出没するようになると言われている。つまり、里山の荒廃は、景観を悪化させ、生物多様性を減少させるだけでなく、クマ等の野生動物の侵入を阻止する緩衝帯としての機能をも失うことを意味している。
  • 炭焼きと森林再生・・・樹を切って山から出す仕事の典型が「炭焼き」である。炭の利用は、里山をきれいにし、見通し、風通しをよくして、森の再生を助けると同時に、クマ等の野生動物の侵入を阻止する緩衝帯としての機能を回復させることにもつながる。さらに言えば、二次的自然に手を加えることは、危険なクマに対して人間のテリトリーを主張する行為でもある。
     一方、木炭は、再生可能なエネルギーであるから、人間が自然と共生し、持続可能な社会を実現するために、ふさわしい永遠のエネルギーともいえる。クマ問題は、これまで経験したことのない深刻な社会問題になっているだけに、こうした循環型の取り組みの重要性を再認識すべきであろう。
  • 炭とは・・・炭焼きは、無酸素状態に近いから木材そのものは燃えない。木材の成分が熱によって分解され、ガスや煙となって取り除かれ、炭素成分だけが固体となって残る。これが炭である。体積は約1/3に減るが、木材そのものの組織構造は変わらない。
  • 備長炭の名前の由来・・・備長炭の名前の由来は、江戸時代の紀州の炭問屋「備中屋長左衛門」に起源すると言われている。元は熊野炭で、これを田辺市秋津川付近の人たちが改良して今の紀州備長炭の焼き方を編み出した。この炭を一手に扱い、江戸に送り出していたのが備中屋長左衛門である。以来、ウバメガシを材料にしたかたい炭のことを備長炭と呼ぶようになった。 
  • 農林規格による備長炭の定義は「硬さ」・・・硬度15度以上とされている。紀州産に限らず、その規格をクリヤーした白炭は、秋田備長炭、豊後備長炭、土佐備長炭、日向備長炭などと呼ばれている。
  • 黒炭の特徴と利用・・・木炭には、黒炭と白炭がある。焼き上がる頃、窯を密閉したまま火が消えて冷えるのを待つのが黒炭である。文字どおり見た目が黒い。黒炭は、軟らかく、着火しやすいが、火力が弱く、長持ちしない。 その分値段が安く、一般にキャンプのバーベキューなどに使われている。
  • 白炭とは・・・焼き上がる頃、口を開けて再び火を入れて高熱で焼き、窯から出した後、素灰を掛けて消化させる(上の写真)。その消し粉をかけた時に白い粉が付くので白炭と言う。非常に硬く、叩くと高い金属音がする。
  • 白炭の特徴と利用・・・着火しにくいが、安定した温度を長時間保ち、新しい炭を途中補填しても、温度が下がらず焼きムラもできない。蒲焼きや焼き鳥など炭火焼にこだわる飲食店で使われているガスがほとんど出ないので、室内のホリゴタツや火鉢に最適である。ただし値段は高い。 
  • 窯出しのタイミング・・・窯から炭を引っ張り出すタイミングは、炎の先が黄色(金色)になった時である。そのサインを名人から教えられると、肉眼でははっきり識別できるが、写真では撮れないほど微妙な色である。
  • 窯出し体験・・・燃焼中の木炭は、1,200度前後の高温である。だから、窯出しの作業は極めて熱く、大変な作業である。窯出し体験をする場合、ナイロン製の衣類や樹脂製のメガネなどは解けてしまうので特に注意が必要である。 
  • 窯出しの道具・・・先がL字型のカギのついた出し棒で引き出す。 
  • 消し粉・・・引き出した炭は、速やかに素灰(土に窯の灰を混ぜたもの)をかぶせ、空気を遮断して火を消す。この素灰を消し粉と呼ぶ。消火した炭は、灰のついた白っぽい色をしていることから白炭と呼ばれている。
  • 炭火焼の試食・・・炭火で焼くと美味しいのは、遠赤外線が表面のタンパク質を高温で焼き固めるので、肉汁は中に閉じ込められる。さらに、その熱がほどよく中に伝わるので、外側はパリッと焼き目がついて香ばしく、中はジューシ―に焼き上がり、うまみもキープされるからである。 
  • スノーシューを履いて里山の自然観察・動物の足跡観察会・・・自然観察指導員、森の案内人の方々の指導を受けながら冬の里山を歩く。これまでカンジキを履いていたが、スノーシューの方が設置面積が広い分、雪に埋まらず快適に歩くことができる。スノーシューは、子とも用と聞いていたが、大人でも使用可能であった。
  • オフロード車「ヤマハ・コディアック」に子どもを乗せて走る・・・上写真のオフロード車は、森林や牧場等の業務に利用されているもの。ロッカ森保全ボランティア代表の高野さんは、まるで自分の孫でも乗せているかのように、満面の笑みでVサイン。どちらが子どもか分かりません!
  • 里山保全の材でつくった作品・・・竹林の除伐により発生した材料を加工し、周囲に自生しているヤブツバキ、マツ、ガマズミ(ぞうみ)の赤い実、松ぽっくりを使った作品。茶会の席に飾る茶花のように、飾らない山野の自然そのままの素朴さが素晴らしい。作者は、竹工房さら代表泉谷健一さん。 
  • ロッカ森保全の会女性部・手づくりの食文化を味わう・・・除伐された竹の器に盛られたガッコ3品、地元の食材を使ったタケノコの煮物、コーヒーで煮たゆで卵、鍋料理など。除伐した竹に草木を挿した素朴な飾りがさりげなく添えられている演出が、これまた素晴らしい。
  • 持参したおにぎりと、身も心も温まる「オ・モ・テ・ナ・シ」の逸品を味わいながら交流を深めた。ご馳走様でした。
  • 情報交換会・・・ロッカ森保全ボランティア代表の高野さん。昨年5月、森の学校「元気ムラの旅シリーズ4 郷土芸能と歴史が息づく山里探訪」でもお世話になりました。
  • 質問:ロッカ森とは・・・この上流に江戸時代に築造された農業用ため池があるが、その受益地が6つの村であったことから、「六ヶ村堤」と名付けられた。その名称からついた名前だが、一方、イタリア語のroccaは、「勢いのある様子」を意味することから、里山再生によって森が勢いを増すようにと名付けられたという。
  • 秋田県森の案内人協議会 佐藤会長・・・今、秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン周辺の森の整備が行われている。来年度から中学生を対象に将来、林業を職業選択の一つとして考えるキッカケになるよう、林業体験学習を実施する旨の報告があった。
  • 2018年度森の学校企画案・・・「元気ムラの旅シリーズ5」は、いぶりがっこ発祥の地「横手市山内三又地域」を予定しています。これまで春の山菜シーズンに開催していましたが、来年度は秋の味覚シーズンに開催したいと思います。また、1月開催の講座は、野生動物撮影の第一人者、元秋田県写真協会会長の加藤明見さんに講師をお願いしています。仮題は「写真で学ぶ ツキノワグマの生態」講座です。乞うご期待ください。