本文へスキップ

2018森の学校 山上の楽園・秋田駒ヶ岳トレッキング

 2018年6月7日(木)、森の学校「秋田駒ヶ岳トレッキング 春の息吹を感じよう」が花の百名山・秋田駒ヶ岳で開催された。参加者は24名。一日好天に恵まれ、春の息吹と一斉に咲き誇る山上のお花畑を満喫。今年は気温が高いせいか、雪解け後に花が咲く植物の種類が圧倒的に多く、「森の学校」というよりは「花の学校」・・・チングルマやヒナザクラ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、ヒメイチゲ、ショウジョウバカマ、イワテハタザオ、サンカヨウ、ミツバオウレン、シラネアオイ、ベニバナイチゴ、ムラサキヤシオツツジ、オオバキスミレ、キバナノコマノツメ、イワカガミ、ヒメイワカガミ、イワウメ、ミネザクラ、オオカメノキ、ミネカエデ、タカネヤナギ、ミヤマハンノキ、コヨウラクツツジ、ミネズオウ、タカネスミレなど数え切れないほどの草花を観察。春一番に咲き誇る高山植物からたくさんの元気をもらった。
  • 主催/秋田県森の案内人協議会
  • 協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会 
  • 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
  • コース・・・秋田駒ケ岳八合目(1,310m)片倉岳展望台(1,456m)阿弥陀池(1,530m)横岳(1,583m)焼森(1,551m)シャクナゲコース秋田駒ケ岳八合目(1,310m)
  • 秋田駒ケ岳八合目・・・ケガ防止のために、入念な準備体操を行ってから登山を開始。澄み切った青空のもと、周辺の森から春の訪れを告げるウグイスとホトトギスの美声が聞こえた。
  • 残雪を踏んで、山上の楽園へ(イオウ鉱山跡)・・・周辺には、まだ多くの雪渓があった。それだけに雪解け直後に咲く花から初夏までの多様な花を観察することができた。 
  • 春の息吹を五感で感じながら登る・・・萌黄色の若葉と満開に咲き誇るミネザクラ(タカネザクラ)の花が頭上から降り注ぐ登山道をゆく。長い沈黙の冬山にやっと終わりを告げ、生命踊る春がやってきたことを実感する。
  • ヒメイチゲ
  • ニワトコ
  • ミネカエデ
  • ミヤマハンノキ
  • ミヤマヤナギ
  • ムラサキヤシオツツジ
  • 大雪渓・・・イオウ鉱山跡と片倉展望台との間にある急斜面の谷には、巨大な雪渓があった。足を滑らせると、谷底まで一直線に落ちかねないので、トラロープをつかみなが慎重に進む。 
  • ショウジョウバカマの群生
  • ミネザクラ(タカネザクラ)・・・亜高山帯~高山帯の林縁や林内に生えるサクラ。花の色は白色から薄紅色。花の芯にいくほど色が濃い。
  • サンカヨウ 
  • オオバキスミレ
  • バッケ 
  • コヨウラクツツジ 
  • イワテハタザオ
  • ショウジョウバカマ 
  • オオカメノキ(ムシカリ) 
  • 片倉岳展望台(1,456m) 
  • イワウメ
  • ベニバナイチゴ
  • イワカガミ・・・全体に大きく、花の数が3から10個と多い。
  • ヒメイワカガミ・・・葉に角ばった大きい鋸歯があり、白色の花の数が少ない。
  • キバナノコマノツメ・・・スミレの名が入らない唯一のスミレ。この妙な名前は、黄色い花と葉の形を馬のヒズメに見立てて、「黄花の駒の爪」と書く。 
  • コメバツガザクラ・・・葉が針葉樹のツガに、花が白から紅白色でサクラの花色に似ていて、小さな葉を米粒に見立てて、コメバツガザクラと呼ばれている。 
  • ミツバオウレン
  • ミヤマスミレ
  • ミヤマキンバイ・・・花は鮮やかな黄金色で、大きな群落をつくる。
  • ミヤマダイコンソウ・・・高山に生え、葉がダイコンの葉に似ていることから、「深山大根草」と書く。
  • 高山に咲くムラサキヤシオツツジ・・・一般に低山の沢沿いやブナ帯に咲くものよりも、色が鮮やかで濃いように思う。
  • お花畑・・・阿弥陀池の手前・開けた草原から木道となる。一帯は、通称「お花畑」と呼ばれている。その名のとおり、秋田駒ヶ岳に自生する高山植物の8割がここで見られ、一番の見どころと言われている。今回は、チングルマやヒナザクラ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウなどが一面に咲き乱れ、まさに山上の楽園、極楽浄土に迷い込んだような別天地であった。 
  • チングルマの大群落・・・バラ科の落葉低木。花の形が梅の花に良く似ていて美しいだけでなく、一面大きな群落を形成することから、その豪奢な花園に出くわすと誰しも心奪われる。チングルマの名所・ムーミン谷を彩るお花畑は、6月下旬~7月上旬頃が見ごろ。
  • 草丈が一様に低いお花畑・・・楽園とは裏腹に、厳しい自然条件があればこそ、この山上の楽園が生まれた。多雪地帯の厳しい風雪に耐えるために、草丈はみな低く、短い夏の間に一斉に開花し実をつけなければならない宿命を負っている。さらに、いつ爆発するか分からない活火山でもある。いわば、美しい自然は「天国と地獄」がワンセットになっていることを忘れてはならない。それでも、「死んだら、この楽園に散骨してほしい」との声があちこちから聞こえた。そう呟きたくなるほど、美しい極楽浄土のような花園でもある。
  • ヒナザクラの群落・・・多雪地帯を代表する高山植物で、雪が解けた所から順に花を咲かせ、高山に遅い春の訪れを告げる。その雪解け後の草地を白く染め上げる大きな群落は、見惚れるほど美しい。
  • ミネズオウ(常緑小低木)・・・茎は細く地を這い、マット状に地面を覆い、枝先に赤みを帯びた白色の花を咲かせる。
  • 珍客・ミソサザイ(早朝の下見で撮影)・・・渓流沿いで、普通に見掛ける鳥だが、まさかこんな高山で見るとは驚いた。木道のロープに止まり、しばしお花畑を観賞しているのかと思いきや、木道の下に潜り込んでいった。当然のことながらお花畑の花が一斉に咲くと、その蜜を求めてたくさんの虫たちが集まってくる。その虫を狙っているのであろう。
  • ミネザクラの木に止まったビンズイ(早朝の下見で撮影)・・・繁殖期のようで、さかんに囀っていた。お花畑一帯には、ツガイも見られ、かなりのペアがここで繁殖しているようだ。
  • 巣材を集めるビンズイ(早朝の下見で撮影)・・・浸食された地上を忙しく歩き回るビンズイが目に止まった。観察していると、どうも巣の材料に使う植物の茎を集めているようだ。恐らく、このお花畑の浸食された地上に椀型の巣をつくるのであろう。誰もいない早朝のお花畑は、野鳥観察にも最適。野鳥用の超望遠レンズでなくとも、何とか撮れるほど接近しても警戒しなかった。ホシガラスの姿が見られなかったは残念。
  • 男岳~馬の瀬分岐点・・・このコルから、活火山・女岳とムーミン谷を望む。遠くに和賀山塊・羽後朝日岳(1376m)がくっきりと見えた。
  • 活動を続ける火山・女岳(めだけ、1,512m)・・・1970年9月~1971年1月まで38年ぶりに噴火。今年の5月14 日、男女岳山頂付近を震源とする火山性地震が一時的に増加。女岳では地熱活動が続いている。また、火山性地震の増加が時々みられ、2018年2月から4月にかけて火山性微動や低周波地震が発生したことから、今後の火山活動の推移に注意が必要。噴火警戒レベル1。
  • 男女岳(おなめだけ、1,637m)とお花畑を望む・・・かつては円錐形の成層火山であった。数十万年前、噴火で多量の溶岩を流出した結果、頂上部が陥没し、3km×1.5kmのカルデラができた。女岳や小岳は、その馬蹄形のカルデラ内に新しくできた中央火口丘である。男女岳は、カルデラの外に生じた寄生火山と言われている。
  • ミヤマダイコンソウの群落から大量の雪渓が残るムーミン谷を望む
  • ハイマツ・・・前年度にできた松ぼっくりと新芽。松ぼっくりは2年型で、今年の夏に熟すと、「森づくりの達人・ホシガラス」がこの球果をあちこちに貯食する。そのうち利用されずに残った一部の種子が、高山の岩の隙間などから十数本まとまって生えてくる。 
  • 岩場に咲くイワウメ・・・まだ開花初期だが、満開に咲けば、どんなにか美しいことだろう。丸い葉はミヤマダイコンソウ。
  • コバイケイソウ
  • 男岳ルートの岩場に咲くチングルマとミヤマダイコンソウ 
  • シラネアオイの群落
  • 阿弥陀池の木道を歩いて避難小屋に向かう
  • 阿弥陀池小屋で昼食・・・ミヤマキンバイのお花畑と、浄土平の大雪渓、遠くに岩手山の絶景を眺めながら昼食をとる。食欲倍増、心身ともにリフレッシュ!。小屋の中を覗くと、大量の防災用ヘルメットが常備されていた。
  • 浄土平の大雪渓と、満開に咲き誇るミヤマキンバイのお花畑 
  • 可憐なヒナザクラの大群落・・・雪解け水が阿弥陀ケ池に流れ込む湿地帯には、ヒナザクラの大きな群落を形成し、一面雪が降ったかのように白く染めていた。
  • 帰路は横岳~焼森~シャクナゲコース 
  • 横岳(1,583m)・・・横岳から岩手山方向を望む。残念ながら鳥海山は雲に隠れて見えなかった。
  • 焼森に向かう・・・高山植物保護柵のある火山砂礫帯は、高山植物の中でも人気ナンバーワンのコマクサ群生地帯。 
  • コマクサの花のツボミ・・・コマクサは、同じ砂礫地にタカネスミレと棲み分けをしながら生育し、少し遅れてピンクの花を付ける。見ごろは7月下旬頃。
  • タカネスミレ・・・コマクサが咲く前に、火山砂礫地を一面黄色に染めるタカネスミレ。キバナノコマノツメよりも濃い黄色で、花弁もやや広い。 
  • 焼森からシャクナゲコースを下る 
  • シラネアオイの群落・・・下る途中、満開を迎えたシラネアオイの大きな群落が二ヵ所あった。
  • 大雪渓をゆく
  • 珍百景「チシマザサ(ネマガリタケ)の花」・・・シャクナゲコース終点近くの笹藪一帯は、クマの好物・タケノコが生えるチシマザサ群落に覆われている。その花が一斉に開花していた。60年に一度一斉に花を咲かせて結実し枯死する。それだけに、この花を観察できたことは、珍事に等しい。八合目の登山起点から近いので、ぜひ足を運んで観察してほしいと思う。