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美しき森と水の四季③

  • 花崗岩の上を滑り落ちる水(太平山系)・・・美しき水の風景は、花崗岩の谷が最も美しい。小滝の流れが木漏れ日を浴びて、眩しいくらいに輝く。水は無色透明だが、光と影のお陰で、動的質感と美しい流れの軌跡を撮ることができる。落下した釜は、沸騰したように白く泡立つ。その傍らにカメラをセットすれば、聖なる冷風を浴びて清涼感を味わいながら撮ることができる。
  • 八幡平のコバイケイソウ・・・豊作になると、見渡す限り列をなして咲く群落は圧巻である。
  • 白と紅の競演・・・背後の色鮮やかなレンゲツツジと湿原を白色に染めるワタスゲの群落。(八幡平)
  • 日本百名山・鳥海山・・・鳥海山は、古くから火を噴く荒ぶる神「大物忌の神」として崇められ、山そのものがご神体であった。山への畏怖と畏敬が信仰の対象となり、鳥海山に登拝して修業する「鳥海修験道」が発達した。その鳥海修験衆徒の各登拝口や登拝道は、鳥海山の文化遺産を代表するものであり、平成21年7月23日、「鳥海山」は国の史跡に指定された。
  • 特産種「チョウカイフスマ」
  • チョウカイアザミ
  • ハクサンシャジン
  • 「ナイアガラの滝」(八幡平大深沢)・・・大深沢の源流部に「ナイアガラの滝」と呼ばれる滝がある。源流部の北ノ又沢、東ノ又沢、仮戸沢の三つの沢が合流した流れは、長大なナメのスロープを走り、ナイアガラの滝で一気に白い瀑布となって落下している。まさにナイアガラに似ている。
  • ナイアガラの滝の特徴は、水量が豊富で、滝の幅が広く長大な白い瀑布となって落下している点である。秋田の源流部に懸かる滝では、最もマイナスイオンが高く、美しき滝の代表格である。
  • 神木(太平山系)・・・ブナの巨樹の根元が、まるで女神様の顔をした珍しい奇形樹。思わず手を合わせて、「母なるブナ」に感謝を捧げたくなる神木である。
  • サワグルミ林(白神山地)・・・サワグルミは、沢沿いの湿った場所に生える。湿っぽく燃えにくいことから、マタギ小屋の骨組の材として利用された。屋根と前後の壁は、サワグルミの樹皮を主に、チシマザサの葉を束ねたものを併用して使っていた。
  • マタギ小屋(白神山地大川)・・・「小屋を掛ける場所は、地形をよく見て決める。特に、冬季に水を確保できることが大前提である。雪が積もると、水場が分からなくなるので、秋のうちに囲いをして雪が積もっても分かるようにしておく。小屋掛けは、5、6名で丸二日ほどかかる。
  • 小屋掛けをする時期の材は、水分が多いので、できあがったら小屋の中で一晩火を焚いて燻す。小屋の中の土間には、サワグルミの樹皮を敷き、その上にムシロを広げて寝た。寝袋がなかった時代は、稲の苗を乾かしたものを敷いて寝た。
  • 下山の時は、入り口をサワグルミの樹皮で完全に塞いでくる。小屋にはトチノキの実を置いておき、ネズミなどに米などを食い荒らされないようにした。最近では、食物は全て一斗缶などに入れて保存する。」(「白神山地ブナ帯地域における基層文化の生態史的研究」掛屋誠・弘前大学教授)
  • トチノキの花・・・渓流沿いに生える代表的な樹木で、5月頃、枝先に長さ15~25cmの大きな円錐状の花を直立させるが、この花から良質なハチミツがたくさんとれる。夏に果実ができる。秋に熟すると、種子をすりつぶして「トチモチ」などの材料として利用されている。
  • トチの実・・・ブナ林ではたくさん採取できるが、アクが強くすぐには食べられない。厚い皮をむき、5mmぐらいにスライスする。木灰で煮る・・・一晩水にさらす・・・これを二回ほど繰り返さないとアクは抜けない。
  • ホオノキ・・・ホオノキは、葉が30cmほどとデカク、花も直径15cmほどとデカイ。大きな葉は、芳香と殺菌作用があるため、食べ物を盛ったり包んだりして利用した。昔は、キノコ類をホオノキの葉に包んで売っていた。
トチノキ ホオノキ
  • トチノキとホオノキの見分け方・・・トチノキは、手のひらを広げたような葉の付き方をしている。もともと1枚の葉であったのが5枚の小葉に分かれたと考えることができる。だから、5枚の小葉の付け根はぴったり1カ所に集まっている。ホオノキは、複数の葉が集まって掌状複葉のように見えるが、よく見ると、それぞれの葉の付け根が微妙にずれている。下から見ると輪状に葉がついているように見える。
  • 盆キノコの代表・トンビマイタケ(白神山地)・・・キノコ採りのプロは、8月上旬頃から山に入り、ブナの老木に大量発生するトンビマイタケ採りからスタートする。トンビマイタケを採りながら、ブナの森に頻繁に入り、キノコの王様・マイタケが発生する時期を読むのである。
  • 信仰の山・森吉山(1,454m)と美しき棚田(北秋田市阿仁戸鳥内棚田)・・・「山神様は、それはそれは美しい女神様だども、気がたけだけしい。夏の間は田畑の神様で里さ降りでおじゃるが、冬になるど神聖な山さ入られる。そうすっと、けがれだ里のごどは一切お嫌いになるので、里の言葉は使わんね」・・・だから昔のマタギは山に入ると、里言葉は禁止され、仲間だけに通用するマタギ言葉を使った
  • 森吉山の冠岩(森吉大権現)・・・森吉神社のご神体は、冠岩(山神様)である。かつてこのお堂は、山伏修験が別当を勤め、冠岩で山伏の修行「胎内潜り」を行っていたという。江戸時代の紀行家・菅江真澄は、森吉山に二回登り、この冠岩について次のように記している。
  • 「中岳のくぼんだところに、高さ七ヒロばかりのの塔の形をした天然の岩があった。石塔と呼んで人々は深く尊び・・・この石塔のもとに堂があり、石の薬師像をおいて、これを森吉大権現として崇め奉っている。・・・昔は麓に寺があったが、いまはただ森吉山竜淵寺という寺の名ばかりがわずかに残って、修験者の家で守り奉っている。」
  • 日本の滝百選「法体の滝」(由利本荘市鳥海町百宅)・・・上段の一の滝は落差13m、二の滝は2.4m、三の滝は42mの3段からなり、総落差は57.4m。滝壺は深く大きい。2008年夏、実写版映画「釣りキチ三平」のクライマックスシーンは、この滝で撮影された
  • 「夜泣き谷っていうところはね、まさに秘境と呼ぶにふさわしい渓谷だそうで、美しいイワナの宝庫、イワナの楽園だって・・・夜になると静まり返って、せせらぎの音しか聞こえない・・・でも、何かの拍子に、例えばキジが夜の静寂を引き裂くように鳴き出す。
     すると、それに呼応して今度は野猿が鳴く。やがて谷全体が鳴いている様にざわめき、山々にこだまする・・・そんなとき、そいつは現れた」・・・夜泣き谷の怪物だ!
  • マイタケが生えるキノコ木「ミズナラ」・・・ミズナラは、ブナ科の落葉高木。葉がギザギザのノコギリ歯をもつ独特の形をしている。樹皮は黒褐色を帯び、縦に不規則な裂け目がある。山地に生え、大きいものは高さ35mにもなる。
  • ミズナラは、水分が多く、燃えにくいことから、その名がついた。ブナより遥かに寿命が長く、巨木になる・・・別名「オオナラ」とも言う。果実はドングリとなり、リスやクマなどの餌となる。マイタケが生える樹種は、ミズナラが圧倒的に多く、稀にブナやクリ、ヤマザクラ類にも生える。
  • 急峻な崖地、ミズナラの根元に生えた舞茸の群れ・・・ブナの森でキノコの王様と言えば、ミズナラの大木の根元に生えるマイタケである。マイタケ専門に探したとしても大株を見つけるのは難しい。だから、山人はマイタケを「見つけた」とは言わず「当たった」という。マイタケ採りのプロは、数十年にわたってマイタケを収穫できるミズナラ大木を「キノコ木」と呼んでいる。
  • 最高級品と言われる「黒マイタケ」
  • 森林軌道跡(粒沢、北秋田市森吉町)・・・奥山の山中に枕木やレールが往時のまま残っているのは珍しい。この軌道は、昭和5年から昭和32年まで工事が続き、全長10km余りもあったという。森林軌道は、トロッコとも呼ばれ、木材を積んで沢に沿って山中を走っていた。この軌道のお陰で山も谷も賑わった時代があった。
     しかし、昭和40年代中頃には全て廃線となり、やがて地図からも消えた・・・その歴史と文化を探るのも楽しいことだろう。
  • ブナの実(八幡平大深沢、仙北市田沢湖町)・・・ブナの木は、毎年実をつけるわけではなく、豊作は3年あるいは6年に1度と言われている。ブナの実は、ツキノワグマやニホンザル、ムササビ、リス、ネズミ、ヤマネなどブナの森に棲む野生動物たちにとって欠かすことのできない貴重な食料だ。
  • 山栗・・・栽培物の栗と比べれば小粒だが、甘さが凝縮されてすこぶる美味い。クマも栗が大好物・・・クマは、まず栗のイガを足の爪で押さえ、口と爪を使ってイガから取り出す。その栗を口で噛み砕き、実だけ食べて皮はきれいに吐き出すという。
  • アケビ(左:アケビの花、右:アケビの実、森吉山系)・・・紫色に熟れた皮を縦に割って、青白い果肉を丸ごと一気に口の中へ。種は吐き出すのが一般的だが、ブドウと同じで種ごと食べた方が美味しい。さしずめ日本の森のバナナといった存在。皮は独特の苦味があり、砂糖と味噌を練り合わせて皮に詰めて焼く田楽や皮をスライスして油で炒めても美味い。
ツノハシバミ(森吉山系) ツノハシバミの実とブナの実
  • 低木に3〜4個の実が角のような奇妙な形(左の写真)をした実をつける。皮を剥くと、右のミニ栗のような実が入っている。フライパンで焼き、硬い殻を割り、爪楊枝でほじくりながら、白い種子を食べる。栗の味に似て、なかなか美味い。
  • ヤマブドウ(森吉山系)・・・他の樹にからまり、よく目立つので探すのは至って簡単。ただし不作の年も多く、いつでも簡単に採取できるわけではない。栽培のブドウより酸味が強い。山では生で食べても、それなりに美味い。家では、ジャムやジュース・・・果実酒は違法なので注意。
  • ミズ(ウワバミソウ、太平山系)・・・ミズは、春から秋まで長い期間食べられるだけに、最も利用されている山菜の代表格。9月頃になると、茎と葉の付け根に小さな丸いムカゴ状の実がつく(右の写真)。秋田ではミズのコブコと呼んでいる。カモシカは、ミズのコブだけを選り分けて食べるくらいで、人間にとっても大変美味い。
  • ブナの倒木に生えたサワモダシ(ナラタケ)
  • 錦繍のノロ川渓谷(森吉山系、北秋田市森吉町)・・・桃洞の滝の上流部は、遡行するほどに艶やかな渓谷美が展開する。清冽な流れが錦秋の色彩に染まり、峰にはゴヨウマツ、岩壁の斜面には、黄色と紅に染まった低木林が燃えるような色彩を放っている。遡行者は、神秘の造形美に奥へ奥へと吸い込まれていく。
  • 苔岩床(ノロ川上流桃洞沢、北秋田市森吉町)・・・緩い流れのナメ床一面を覆う苔の群落。年間を通して大きな洪水もなく、水量が安定していなければ生育できないはずで、こうした光景は大変珍しい。
  • 錦繍の赤水渓谷兎滝(森吉山系、北秋田市森吉町)・・・赤水沢入渓点から兎滝まで約3kmも一枚岩盤のナメ床、ナメ滝、大小の甌穴が続く。ナメとは、川床一面が岩盤になっていて、その上を水の流れが滑るように走っている状態をいう。ナメ床とは、ナメを走らせている岩盤のことで、天然の舗装道路を歩いているように快適である。
     それが3kmも続く水の回廊は、まさに天国の散歩道と言える。2.5キロ地点が玉川・赤水分岐点で、左の沢は、かつて玉川温泉への湯治場街道であった。
  • 様ノ沢・九階の滝(北秋田市森吉町)・・・赤水渓谷の北側に位置する様ノ沢源流は、屹立する一枚岩の壁が連続し、マタギでさえも「神様の沢」として畏怖し、昔から近寄れなかったと伝えられる秘境であった。獣道しかない険しい山容で、これまで「九階の滝」まで到達した人は、地元の人でさえ数えるほどしかいない秘境の滝である。この滝の全体の落差は100m以上もある。
  • 比立内山神社(文化5年・1808年創立、北秋田市阿仁)・・・山神のことを打当、比立内のマタギは「ヤマノカミ」、根子のマタギは「サンジンサマ」と呼ぶ。山の神は、山の全てを支配している。だからその怒りを受けないように細心の注意を払う。山の神は、マタギに獲物を授けるだけでなく、遭難を未然に防ぎ、難儀している時は救ってくれる。だからマタギは、山の神に守られていると信じ、山の神を心の拠り所としている。12月12日は、山の神様の日である。
  • 日本の滝百選「安の滝」(中ノ又沢、北秋田市阿仁)・・・二段に落ちる滝を合わせて高さ約90m。森吉山系は、地形の悪いクラと美しい滝が多いのが特徴。奥阿仁の秘境を旅した菅江真澄は・・・「水尻滝、幸兵衛滝、中ノ又の安の滝などと見るべきところは多いが、流れが深く道も遠いので行かれなかった」と残念がるほど、昔は秘境中の秘境であった。
  • 黄葉の峰走り山粧う(森吉山系)・・・秋が深まるにつれて、ブナの森は峰から色づき次第に谷へと黄葉してゆく。これを「ブナの峰走り」と呼んでいる。森では、ツタウルシ、ムシカリが一足先に紅葉し、やがてブナの黄葉が加わると全山燃えるような黄金色となる。特にブナの黄葉の中では、カエデやツタウルシの鮮やかな紅色がひときわ目に眩しい。
  • ブナの黄葉(粒沢、北秋田市森吉町)・・・一般に紅葉は紅色が基調になっているが、ブナやミズナラ、イタヤカエデなどブナの森は黄色に色づく。従って、ブナの森では「紅葉」とは書かず、「黄葉」と書く。
  • 晩秋の黄葉(太平山系)・・・11月の季語は、落葉、枯葉、初霜、初冬、冬めく、冬紅葉、晩秋・・・それを予告するかのように時雨と木枯らしが吹き荒れてくる。ブナの森を見上げては、感嘆の声をあげ、風倒木に群がるナメコやムキタケに舞い上がる
  • キノコ文化(白神山地)・・・秋田の森では、山菜と同様、キノコの宝庫である。秋になれば、今頃はどの沢に何が生えるか、直感的に分かる。夏に顔を出すトビタケ(トンビマイタケ)がキノコのはしりで、晩秋まで続く。農作業のできない雨の日などは、大きな弁当をコダシ(背負い袋)に入れ、日に二度、三度と山に入り、キノコを蓄える。当座食べるもの、塩漬け、干しキノコなどにきちんと分けて保存する。
  • 数百年ブナの倒木に生えたナメコ(太平山系)・・・ブナの森では、「死」が新たな「生」を生むドラマが繰り返される。森を支配していた巨木が倒れると、ポッカリ穴の開いた天空から光が林床に降り注ぐ。親の枯れるのを待っていた稚樹は、一斉に勢いを増す。
  • 一方、倒れてから3年ほど経つと朽ち始めるが、美味しい「木の子」たちが群がって生えてくる。特に斜面に伏した幹から、籠に入りきれないほどのナメコの群生は、素晴らしい。やがて菌類は、長い年月をかけて倒木を分解、全て土に戻し養分を補給し続けるブナ帯の美味しいキノコは、「母なるブナ」の最後を飾る贈り物である。
  • ブナ帯の黄葉・・・ひとつない澄み切った青空、錦繍に衣替えした絶景が目の前一面に広がる。黄色、紅色、赤茶色、緑、褐色・・・ブナ林の黄葉は、樹種が豊富なだけに色彩も多様性に富んでいる。
  • イワナの恋のダンス・・・岩魚の産卵は、一般にメスが産卵適地を選ぶ。産卵床は、流れの緩い浅瀬で、小砂利が堆積した場所に作っていた。そのメスを巡って激しい争いが起きる。ケンカに勝ったオスは、メスが尾ビレで掘り返した産卵床の周りをゆっくり周遊しながら、恋のダンスを繰り返す。
  • 時折、産卵床の中央で擦り寄るものの、なかなか産卵シーンには突入しない。時折、別のオスが割り込みに入ろうとするが、ペアのオスは物凄い勢いで追い払った。面白いことに、負けたオスは退散せず、隙あらば産卵に参加しようと狙っていた。恐らく、産卵の瞬間に割り込んで放精するに違いない。
  • 晩秋のブナ林(白神山地、藤里町)・・・山里に初霜が降り、秋も深まれば、ブナの森は黄葉から褐色へと変化してゆく。林床には、ブナの実が一面に落下し、迫り来る冬に備えて、野生動物たちの貴重な餌となる。
  • 何層にも堆積した落ち葉は、ミミズ、トビムシ、ササラダニなどの土壌生物やさまざまな菌糸によって分解され腐葉土へと変化、森をつくる大切な養分となる。新緑から黄葉、そして晩秋になるとブナの森は生き生きとした色彩を一気に失い、長い冬に突入する
  • 落葉した初冬のブナ林(太平山系白子森)
  • 初冬の渓流(太平山系)・・・渓に降り積もった雪と冷たい流れ・・・イワナたちは産卵を終え、大きな淵で越冬する。クマは、雪が積もると、立ち木にできたウロ、倒木や根上りがつくる穴、土穴、岩穴などで越冬する。
  • 雪渓カワゲラ(太平山系)・・・セッケイカワゲラの成虫には、羽がない。飛ぶことはできないが、冬の寒さに強く、雪渓の上を歩く。別名「雪虫」とも呼ばれている。幼虫は、夏の間眠って下流に流されながら過ごす。落葉の季節になると起き出し、降り積もった落葉を食べて急速に成長する一番寒い冬に上陸し、ひたすら歩いて生まれた源流部めざして歩き続ける
  • 2月頃までは歩き続け、交尾した後、オスは死ぬ。3月、雪が解けて水が出てくると、メスは水流に下りて卵を産む。流下と雪面遡上・・・彼らはこれらのパターンを繰り返すことによって一定の領域で生活しているという。
  • 山里の冬(羽後町)・・・「・・・空模様が急変し、パラパラと降り出したアラレは、わずかな秋の名残の草紅葉に小さな白い粉々をとどめて、冬の到来を告げる。板やムシロでの雪囲い、立木のコモ巻き、雪吊り、添え木などの作業がせわしい。ミゾレは湿りを含んで寒さにまだ慣れぬ体には、一段と冷気を感じさせる。

     町も村も、野も山も、雪に覆われてしまうと人々は炉端に集まり、背を丸めて炬燵を囲む。綿入れやウサギの毛皮の袖なしハッピは、すきま風の寒さを和らげてくれる。冬の夜長は祖父母の昔がたりの独壇場ともなる。寒月の夜、凍てついた道を踏みしめる足音がキュッキュッと響く。」(「勝平得之作品集 版画[秋田の四季]より」)
  • 凍てつく渓流 冬・・・山眠る(上小阿仁村)
  • 厳冬の森吉山・樹氷(北秋田市)・・・樹氷は、過冷却水滴の強風雲がアオモリトドマツに吹き付け、風上に向かって凍りつき発達する。「モロビの樹氷」「雪柱のモンスター」「氷点下を彩る樹氷」などと形容されている。ゴンドラで行く森吉山の樹氷は、阿仁スキー場山頂駅から徒歩5分で鑑賞できる。
  • 深閑とした渓に暖かい陽光が降り注ぐ(上小阿仁村)・・・長く厳しい雪国の冬・・・やがて必ずやってくる「山笑う」季節の到来を信じて、深い眠りに落ちる。クマたちは大木のウロや岩穴などで眠り、植物たちは暖かい雪布団にくるまって春を待つ。そして翌年の3〜4月、雪解けとともに待ちわびた春が駆け足でやってくる。
参 考 文 献
「滅びゆく森・ブナ」(工藤父母道著、思索社)
「森林彩時記 森を知ろう、森を楽しもう」(北村昌美著、小学館ライブラリー)
「ブナの森と生きる」(北村昌美著、PHP選書)
「ブナ帯文化」(梅原 猛ほか、新思索社)
山渓カラー名鑑「日本の樹木」(山と渓谷社)
自然観察シリーズ22「日本の両生類・爬虫類」(小学館)
「勝平得之作品集 版画[秋田の四季](井上房子、勝平新一、秋田文化出版)
「菅江真澄遊覧記」(平凡社ライブラリー) 
 「白神山地ブナ帯地域における基層文化の生態史的研究」(掛屋誠・弘前大学教授)

森と水の四季Part1 森と水の四季Part2 森と水の四季Part3 白神山地