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 2014年8月10日(日)、森の学校第7回夏休みの宿題「子ども樹木博士になろう!」が秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンを会場に開催された。台風11号の影響で悪天候に見舞われ、子どもの参加者が少なかったが、木の名前30種のうち全問正解の「子ども樹木博士」が3名誕生した。

●内容/フィールド樹木観察会、樹木博士認定証授与 ▲対象/小学、中学
◆主催/秋田県森林インストラクター会
◆協賛/(一社)秋田県森と水の協会 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
▲上の写真のように、木の標本だけで30種類の名前を覚えなければならない。大人でもすこぶる難しい。

子ども樹木博士とは・・・

 子どもたちが樹木の名前を覚えて、それをきっかけにして広く森林に親しんでもらうことを目的としたボランティア活動の1つのプログラムである。このプログラムは全国共通で、「子ども樹木博士認定活動推進協議会」の認定基準によって実施している。
 本来は、樹木に詳しい森林インストラクターと森を散策しながら樹木の名前を覚えていく「樹木ツアー」を実施する。しかし、悪天候に見舞われたため、屋根つきの屋外で、あらかじめ森で採取した木の葉、枝、実、花の標本をもとに、名前の由来や特徴、木の利用などについて学んだ。
樹木ガイド30種
1.アジサイ(ユキノシタ科アジサイ属)

 アジサイは日本原産で、古くから栽培されている庭木。原種は、日本に自生するガクアジサイ。咲くにつれて色が変わる。また土の酸性度が高いと青色、アルカリ性度が高いと赤色になる。葉っぱには毒があるので食べないこと。ヨーロッパで品種改良されたものは「セイヨウアジサイ」と呼ばれている。
2.ノリウツギ(ユキノシタ科アジサイ属)

 花は白の円錐形、葉は楕円形で先が細くとがる。木の皮がネバネバするので、樹皮からノリが採れる。昔は和紙のつなぎとして利用された。
3.ブナ(ブナ科ブナ属)

 日本の冷温帯域を代表する木で、ブナ、ミズナラなどの広葉樹の森が北の縄文文化を開花させた。世界自然遺産に登録された白神山地は、世界最大級のブナの森として有名である。気軽に白神山地のブナの森を散策するには、岳岱自然観察教育林(藤里町)がオススメ。
▲ブナの実 ▲右がブナの実、左がツノハシバミの実

 ブナの実は、殻の中に三角形の茶色の実が二つ、向かい合って入っている。その実は、ツキノワグマやニホンザル、ムササビ、リス、ネズミ、ヤマネなどブナの森に棲む野生動物たちにとって欠かすことのできない貴重な食料である。
4.トチノキ(トチノキ科トチノキ属)

 風車のような大きな葉と、夏にできる大きな果実が特徴。秋に熟すとデンプン質が豊富で、それをすりつぶしてアクを抜き「トチモチ」などの材料として利用されている。また5月~6月、直立した円錐状の穂に白い花が咲き、良質なハチミツがたくさんとれる。
5.ヤマモミジ(カエデ科カエデ属)

 主に日本海側の多雪地帯にみられ、葉っぱが秋になると、黄色から赤色に変わり美しい。ヤマモミジの果実は、2枚のプロペラ状の形をしている。この形状は、種子を飛行機のように風に乗ってできるだけ遠くに飛ばすためである。
6.ユズリハ(ユズリハ科ユズリハ属)

 暖かい地方の山地に見られ、冬になっても葉は落ちない。春になって若葉がのびると古い葉は「若葉に譲る」ように散る。親が成長した子にあとを譲るのにたとえて、めでたい木とされ、古くから正月の飾りに使われている。
7.ハクモクレン(モクレン科モクレン属)

 春に早く白い大きな花がたくさん咲き、花がおわる頃に葉がでる。庭や公園によく植えられている。葉は洋ナシのような形で、先端が短くとがる。
8.サクラ(バラ科サクラ属)

 春早くどこの公園でも咲いてみんなでお花見をする。サクラの花は、野生種が10種と少ないが、栽培品種を加えると300種以上もある。右の写真の花は、オオヤマザクラ。黒いサクランボは、クマや鳥が大好きで食べて種を運んでくれる。角館の樺細工は、ヤマザクラの樹皮を使う。
9.ハクウンボク(エゴノキ科エゴノキ属)

 春に白い花がたくさん咲き、白い雲みたいに見えるので「白雲木」と名づけられた。果実は球形で9月に熟す。庭木、公園木として、特に寺院などに植栽されている。
10.モミジバフウ(マンサク科フウ属)

 原産はアメリカで、アメリカフウとも呼ばれている。葉が大きなモミジの形をしている。小さなクリのイガの形の実がたくさんついている。その実はクラフトに良く利用されている。葉は秋に赤くなり、紅葉はみごとである。  
11.ナナカマド(バラ科ナナカマド属)

 春に白い花が咲き、秋には赤い実がなる。7回燃やしても燃えないは間違い・・・よく燃える。良い炭ができるまで7日かかるので「ナナカマド」。初夏の花、秋の果実、紅葉が美しいので、庭木や公園樹に利用されている。
▲ナナカマドの白い花 ▲ナナカマドの赤い実
12.クリ(ブナ科クリ属)

 クリの実は、人も動物も食べておいしい大切な食べ物。葉はチョウやガの大切な食べ物。クマは、栗の皮をむいて器用に食べる。まず栗のイガを足の爪で押さえ、口と爪を使ってイガから取り出す。その栗を口で噛み砕き、実だけ食べて皮はきれいに吐き出す。

 クリは、縄文時代の遺跡からも多く見つかり、古くから貴重な食料として利用されてきたことが分かる。材は腐りにくく耐久性があるので、三内丸山遺跡では、クリが栽培され、直径1m、高さ14.7mに及ぶクリの巨木を使った6本柱が出土している。
13.オニグルミ(クルミ科クルミ属)

 川沿いなど湿った場所に生える。実は非常に堅い殻に守られている。食べるのは、リス、アカネズミ、人、カラス・・・クマは、オニグルミの殻がまだ柔らかく、果肉だけが完熟に近い微妙な時期を選んで食べる。
14.カツラ(カツラ科カツラ属)

 葉っぱが円く、「ハート」の形をしている。葉が枯れると「しょうゆせんべい」の香りがする。かつて山村では、その葉を粉状にしたものを抹香(まっこう)代わりに焚いていた。
15.サルスベリ(ミソハギ科サルスベリ属)

 木の肌がツルツルで、サルも滑って落ちることからその名がついた。漢字名は「百日紅」で、夏には赤い紅花が百日も咲くと言う意味である。
16.ホオノキ(モクレン科モクレン属)

 春に白い大きな花が咲く。大きな葉は、芳香と殺菌作用があるため、食べ物を盛ったり包んだりして利用している。樹皮には、精油、マグノールなどが含まれ、健胃、消化促進、腹痛、整腸、去痰、利尿薬としても広く利用されている。
17.エゴノキ(エゴノキ科エゴノキ属)

 かわいい実がえぐいので「エゴノキ」。若い実は麻酔効果があるので、これをつぶして川に流し魚をとったり、石けんの代わりにした。昔はお手玉の詰め物などに利用された。雑木林を代表する花木の一つで、初夏に白い花がたくさん咲き、美しい。
18.スギ(スギ科スギ属)

 秋田県の木は、「秋田スギ」。一般に秋田産のものを秋田スギ、天然のものを天然秋田スギと呼んでいる。秋田スギは、青森ヒバ、木曽ヒノキと並んで三大美林の一つ。家を建てるときに一番使われている。秋田のスギ人工林面積は日本一。

 秋田スギの天然林は、仁鮒水沢スギ植物群落保護林(能代市二ツ井町)、コブ杉(上小阿仁村上大内沢山村広場)、矢立峠風景林(大館市)で見ることができる。
19.マツ

 カミナリが落ちるのをマツので「マツ」。マツボックリは、リスの大切な食べ物。アカマツとクロマツがある。日本五大松原の一つに数えられている風の松原(能代市)は、全国的に有名である。
20.クロモジ(クスノキ科クロモジ属)

 木の皮に黒い文字みたいな模様があるので、その名がついた。良い香りがするので、ツマヨウジの材料として使われている。4月、葉が開くと同時に淡い黄色の花を咲かせる。果実は黒く熟し、種子から香油が採れる。マイタケ採りの人たちは、大きな株を見つけると、クロモジの枝で風呂敷のように包み、壊さないように持ち帰る。
21.ミツバアケビ(アケビ科アケビ属)

 秋に美味しい紫色の実ができる。実も美味しいが、山形では皮の中に豚ひき肉とマイタケなどを詰めたアケビの詰め物料理が有名である。春の花芽はおひたしにして食べる。ツルでカゴを編んで売ると、高い値段で売れる。
▲アケビの花 ▲熟した紫色のアケビの実
22.イタヤカエデ(カエデ科カエデ属)

 イタヤカエデの葉は切れ込みがそれほど深くないので、水かきの部分が広い「カエルの手」に似ている。これが「カエデ」の語源。雨が降ってきたら、この木の下で雨宿りができる。板が薄くはがれるのでカゴなどをつくる。秋には美しく黄葉する。
▲4~5月、イタヤカエデは、葉が出る前に淡い黄色の花を多数咲かせる。
23.ハリエンジュ(マメ科ハリエンジュ属)

 原産は北アメリカで通称「ニセアカシア」と呼ばれている。日本では明治初期に渡来し、今では増えすぎて困っている。5~6月に甘い香りのする白花を枝一杯に咲かせる。良質のハチミツがたくさんとれるので蜜源植物としての価値は高い。花は天ぷらにする。
24.コナラ

 ドングリがなる木。ドングリは、森の動物たちの大切な食べ物。雑木林を代表する樹木で、昔はマキや炭に使われた。今でもシイタケ栽培の原木などに利用されている。葉は縁に大きなノコギリ歯がある。
25.ヤマナシ(バラ科ナシ属)

 秋には、甘くて食べられるが、そんなに美味しくない。森の動物にとっては大切な食べ物。果樹として栽培されているナシは、このヤマナシから改良されたもの。
26.サルトリイバラ(ユリ科サルトリイバラ属)

 猿が引っかかり捕まるイバラであることから、サルトリイバラ。木にからんで、まばらにトゲがあるのでさわらないこと。秋には、赤い実がなり、森の動物たちの大切な食べ物。
27.サンショウ(ミカン科サンショウ属)

 山の香り高い実がつくことから「山椒(サンショウ)」の名がついた。実は粉にすると良い香りがするので、ウナギのかば焼きやミズタタキなどの香辛料として欠かせない。葉っぱもよい香りがするので食べる。雄株と雌株があり、サンショウの実が成るのは雌株のみである。
28.ガマズミ(スイカズラ科ガマズミ属)

 白い花が終わると、秋に赤い実がなる。ちょっとすっぱいが、ジャムにしてパンにぬって食べる。焼酎に漬けて果実酒にも利用する。森の動物たちも大好き。
29.ミズキ(ミズキ科ミズキ属)

 初夏、雑木林で一際目を引くのがミズキの白花の群れ。枝を切ると水がたくさん出るので「ミズキ」。冬に枝が赤くなると、餅や飴をつけて飾る。
30.アセビ(ツツジ科アセビ属)

 毒があるので、馬や牛が食べるとお酒に酔ったようにフラフラする。だから漢字名は「馬酔木」。花を密につけた花序が垂れ下がり美しいことから、庭木や盆栽に好まれる。
 主催者は、テストに出す標本をテーブルに並べる。実力テストを受ける前に、参加者は覚えたばかりの木の葉や枝の標本で木の特徴をおさらいする。
木の名前のテスト

 参加者は、木の標本をみて名前を識別し、解答用紙に木の名前を記入する。実力テストで、厳格にテストを実施する。今回は、子どもたちが少なかったので、保護者も挑戦した。
採点・・・テストの答えを全国統一の基準で採点する。
子ども樹木博士が3名誕生

 大人でも難しい難関を突破し、見事「子ども樹木博士」の認定を受けたのは、刑部耀一(ぎょうぶあきと)君、真崎 綸(りん)さん、鈴木昴星(すばる)君の3名。26問以上正解で子ども樹木博士に認定されるのだが、3名とも30問全て正解であった。
 子どもたちと一緒に保護者4人も参加。うち3人が樹木博士、1人が24問正解の4段の表彰を受けた。今回は、参加者が少なかったものの、レベルの高さに驚かされた。ぜひ学校の先生や友達に「子ども樹木博士」の認定証を見せて自慢してほしい。おめでとうございました。

 なお、今回のページは、「樹木ガイド」として利用できるように、今回出題された樹木30種全ての写真や木の名前のいわれ、特徴、利用などについてできるだけ詳しく解説した。ご利用いただければ幸いである。